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プロローグ
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――――――違和感は、ずっとあった。
慣れ親しんだ家。家族。
だけど祖父が既に亡くなっていたり苗字が違っていたりと、『記憶』と違う。
幼心に気付いた違いといえばそれぐらいのものだったけれど、それ以外にも、どこかが決定的に違う気がして。
それの正体を探そうとしたけれど、肉体年齢に引き摺られているのか見つけることはできず。
結局、自分自身の特殊性の所為だろうと結論付けた。
家族ではなく、自分が原因だと。
自分が持つ『記憶』がおかしなものだということは、幼いながらに気付いていたから。
…………だけどそうじゃないと気付き始めたのは、5歳の半ば。
『学園に入学する際このままでは寮に入ることになるだろう』と、『この半年間が最後の期限だ』と、険しい表情の父に言われた時。
正直に言って、その時は何のことかさっぱり分からなかった。
期限という言葉が何を指すのかも。
重要な、自分の今後に関わる何かだということは分かったけれど。
そして分からないまま、何も変わらないままに半年が経ち、入学式の前日になり。
母に手を引かれ、学園の寮に連れて行かれた。
『 この手が離れた瞬間から貴方は日出家の人間ではありません。もう二度と、家に戻って来てはいけませんよ 』
泣きながら、母が、そう言って。
それに呆気に取られている間に手は離れ、母は小走りに去って行った。
呆然と立ち尽くしていた僕はその後通り掛かった生徒に発見され、寮の管理人の元へ連れて行かれた。そして大体の事情を知っているらしい管理人に部屋に案内されて、淡々と説明を受けた。
何が起きたのか。これからどうすればいいのか。
あまりにも突然すぎて混乱していて、その時は全てを飲み込み切れなかったけれど。
一つだけは、しっかりと理解した。
僕は、捨てられたのだと。
慣れ親しんだ家。家族。
だけど祖父が既に亡くなっていたり苗字が違っていたりと、『記憶』と違う。
幼心に気付いた違いといえばそれぐらいのものだったけれど、それ以外にも、どこかが決定的に違う気がして。
それの正体を探そうとしたけれど、肉体年齢に引き摺られているのか見つけることはできず。
結局、自分自身の特殊性の所為だろうと結論付けた。
家族ではなく、自分が原因だと。
自分が持つ『記憶』がおかしなものだということは、幼いながらに気付いていたから。
…………だけどそうじゃないと気付き始めたのは、5歳の半ば。
『学園に入学する際このままでは寮に入ることになるだろう』と、『この半年間が最後の期限だ』と、険しい表情の父に言われた時。
正直に言って、その時は何のことかさっぱり分からなかった。
期限という言葉が何を指すのかも。
重要な、自分の今後に関わる何かだということは分かったけれど。
そして分からないまま、何も変わらないままに半年が経ち、入学式の前日になり。
母に手を引かれ、学園の寮に連れて行かれた。
『 この手が離れた瞬間から貴方は日出家の人間ではありません。もう二度と、家に戻って来てはいけませんよ 』
泣きながら、母が、そう言って。
それに呆気に取られている間に手は離れ、母は小走りに去って行った。
呆然と立ち尽くしていた僕はその後通り掛かった生徒に発見され、寮の管理人の元へ連れて行かれた。そして大体の事情を知っているらしい管理人に部屋に案内されて、淡々と説明を受けた。
何が起きたのか。これからどうすればいいのか。
あまりにも突然すぎて混乱していて、その時は全てを飲み込み切れなかったけれど。
一つだけは、しっかりと理解した。
僕は、捨てられたのだと。
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