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34 増えていく問題
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「お前、容赦ってモンねーわけ……っ?」
貪るようなキスに、荒く息をしながら文句を言う。
一応逃げようと抵抗はしたけど、全っ然逃げられねーの。
なんでこんなキスに弱いんだろ?
「やっと僕の物になったんだ、我慢する理由がない」
それに対し、しれっと言い切る柊夜。
その様はここ数日見ていた柊後ではなく、よく見知った葛西そのもので。
本当に同一人物なんだな、って改めて思った。
今まで『似てる』で済んでたのは、やっぱり雰囲気とか話し方とか、様子が全然違っていたからで……うん。
「お前こっちでどんだけ猫被ってんだよ」
「うん?少し愛想良くしてる程度だぞ」
「あれで?」
ニコニコ笑ってて好青年って感じのが?
葛西の要素が見た目だけしか残ってないような状態が?
あれで少し??
「ん?ああ、もしかして瑞月に対する態度か?あれは瑞月限定だ」
「あ?俺限定?」
「ああ。あれは瑞月を懐柔するために特別甘くしてただけ」
「か、」
懐柔っつったぞコイツ悪びれも無く。
つまり、だ。
一連の流れから考えて最初から俺を自分のモノにするつもりで動いてたってことだよな?
俺が俺だって分かったのは真っ最中だったわけだから、こっちの俺が何も知らないって分かった上で。
「お前それ、こっちの何も知らない俺を身代わりにでもするつもりだったのかよ」
そういうことだよな?
普通に最低じゃねーか。
「あー……、まあ、そういうことになるんだが、最初からそのつもりだったわけじゃない。瑞月が瑞月だったからだ」
「何それ。どういうことだよ」
「言っただろ?『見つけた』って思ったって。あれは揶揄でもわざとらしい口説き文句でもなく本当にそう感じたんだ。瑞月が部屋に入ってきて、目が合った時。…………ここがあっちと近い世界で、同じ名、同じ姿の人間が存在すると両親から言われていた。でもそれは似ているだけの別人であっちに居た時のように接しては駄目だと」
「…………それは、分かる」
うちの家族がまさにそれだもんな。
姿形は同じだけど、中身は違う。知らない相手だ。
接した時間が数時間にも満たないからどう違うかまでは分からないままだけど。
「そうか。で、まず、同室者の名字を確認した時にまさかなと思った。珍しい苗字だろ?その時点ではだったら最悪だと思っていた」
「最悪」
「ああ。何せレイプなんてするくらいに恋しい相手と瓜二つの別人だぞ?忌々しいだけだろ。僕にとって瑞月はあっちで出会った瑞月だけだ。似てるだけの別人なんて嫌悪しかない。と、思っていたのに、いざ顔を合わせたら変な感覚に襲われるわ雰囲気とか仕草がどう見ても瑞月そのものだわ僕に怯える様子があるわ、これが本当に別人なのかってかなり困惑した」
いくら状況が状況だったとしてもレイプすんなとしか言いようがないが。
…………こっちの俺を身代わりにしようって思ってたわけじゃないのは、まあ、分かった。
でもって初日のあれの時点で変だと思われてたわけね。全然誤魔化せてねー。
「その上早くモノにしろだの手遅れになるぞだの同じ後悔はしたくないだろうだの煩くて」
ん?
…………うん??
「えっと。それ、誰の発言?」
発言内容からしてここに来てからだよな?
でもそんな突っ込んだ発言できるような相手はいないはず。
なら誰が?って話なんだけど。
「…………これは瑞月の目のことがあるから言うんだが。実は僕、幼い頃から変な声が聞こえたんだ。声曰く、『精霊』らしい。声だけで姿は見たことはない」
「精霊?精霊ってあの……」
「よくファンタジー作品で出てくるあれだな。自称だが。そいつが物心着く頃にはもう僕の傍に居て、助けられたことは多いが何かと煩いんだ。まあ、そのことがあったからこっちの世界の事を割とあっさり受け入れられたんだが」
どことなくしかめっ面で言う柊夜。
助かってるけど迷惑してるって感じか。
しかし……姿はなくて声だけが聞こえる、って、なんか俺の、ここに来て何度か聞こえてるあの声と同じじゃ?
ええとこれは、言っておいた方がいいやつだよな。
「ええと、その……俺も聞こえる。なんか変な声。こっち来てから」
「…………精霊の声は素質がないと聞こえないらしいぞ」
「…………なんか俺に変な属性大量についてんだけどなんで?」
「僕が聞きたい。結果的にだがさっさと番っておいてよかった」
「つっ、…………最後、までしてねーけど」
「今日はな」
お前の認識ではそうだろうけど。
俺からしたら丸2年は前だし、そもそも身体が違う。
……………………これも言っておかないと不味い、よな。
「えー、っと。物凄い言いづらいんだけど。俺さ、お前みたいに身体ごとこっちに来たわけじゃないんだよ、ね」
「…………は?」
「なんつーか、中身だけ入れ替わった感じなんだわ。その上、あっちではあれから丸2年は経ってる」
「は?どういうことだ?!」
「いやそんなん俺にも分かんねーよ。むしろ俺が聞きてーわこんな訳の分かんねー事態!」
―――――― まあ、そうだろうな
「!」
割り込んできた声に、2人顔を見合わせる。
…………てことは、どっちにも聞こえてる、ってこと。
で、あの声じゃなくて知らない男の声の方。
多分だけど……この男の声は、柊夜の言っている声の方じゃないだろうか?
俺に最初から聞こえたのはあの、性別の判断できないような幼い声だから。
―――――― 吾が分かる限りではその人の子は取替え子だ。精霊の力によって中身を入れ替えられた者。今回宿主を連れ戻すため門が大きく開かれたことにより正しく在ろうとする力が働き正しい器に戻されたのだろう
「2年のズレは」
―――――― そんなもの世界間では誤差だ
ばっさりと言い切る声。
人間からすれば誤差なんてもんじゃねーけど。2年は普通に長い。
「…………何かのきっかけで、また入れ替わるなんてことは」
―――――― ない。正しい器に戻り番いも成った。もう揺らぐことはないだろう
「なら、いい」
はっきりと声が断言する。
それに、安心したように息を吐く柊夜。
ああ、まあ、確かにそういう可能性もあったのか。
…………っていうか。
取替え子とか。正しい器とか。
「それってつまり、俺も元々こっちの世界の産まれ、ってこと?」
―――――― そうだ。アレの話では産まれて間もない時に至近距離で馬鹿な低位精霊共の争いが起き、その余波で中身だけあちらに飛ばされたという。当時まだタマゴの状態だったアレでは争う低位精霊共の余波からお前を庇うだけで精一杯だったようだ
何その傍迷惑な話。
俺が生まれて間もない時に近くで精霊達が争って?その余波で入れ替わった?ってマジでどういう事態??
ついでに多分アレってあの声の事だよな?
俺ってそいつに相当守られてるじゃん。当時タマゴ?だったらしいけど。
「色々深掘りしたい所はあるが、瑞月が僕のものでもう離れることがないならひとまず後回しでいい。それより、明日は最後までやるからそのつもりでいろよ」
「え、あ、…………今日、はしないの」
「一気に色々あって疲れただろ。それにそもそも今日は最後までやる気はなかったしな」
「……………………あ゙?」
言われた言葉を正しく理解して、つい声を荒げてしまう。
あれだけやっといてどの口でそんなこと言ってんだコイツ。
「食事の後だっただろ。瑞月の身体に負担が掛かる。挿れなくてもどうとでもできるし実際なっただろう?」
「いや、おま、」
「まず想定外だったんだ。一応、少しずつ進めていくつもりでいたんだから。少しずつ囲って外堀を埋めてモノにするつもりだったのに……結果的に自分自身に嫉妬してたとかいう訳の分からない状態だったが」
「それは……」
「まあ都合のいい状況だったから、最後までヤらないことを条件に主導権を取ろうとは思っていた。そうしてしまえばあとは時間をかけてオトせばいい」
「オイコラ」
またクソみたいなこと言ってんだけど!?
要は脅して言うこと聞かせるってことじゃん!
嫌でも理解してきたんだけど!コイツがガチでヤバイって!
…………俺の自覚がレイプありきだから、分かってたことだけど!
貪るようなキスに、荒く息をしながら文句を言う。
一応逃げようと抵抗はしたけど、全っ然逃げられねーの。
なんでこんなキスに弱いんだろ?
「やっと僕の物になったんだ、我慢する理由がない」
それに対し、しれっと言い切る柊夜。
その様はここ数日見ていた柊後ではなく、よく見知った葛西そのもので。
本当に同一人物なんだな、って改めて思った。
今まで『似てる』で済んでたのは、やっぱり雰囲気とか話し方とか、様子が全然違っていたからで……うん。
「お前こっちでどんだけ猫被ってんだよ」
「うん?少し愛想良くしてる程度だぞ」
「あれで?」
ニコニコ笑ってて好青年って感じのが?
葛西の要素が見た目だけしか残ってないような状態が?
あれで少し??
「ん?ああ、もしかして瑞月に対する態度か?あれは瑞月限定だ」
「あ?俺限定?」
「ああ。あれは瑞月を懐柔するために特別甘くしてただけ」
「か、」
懐柔っつったぞコイツ悪びれも無く。
つまり、だ。
一連の流れから考えて最初から俺を自分のモノにするつもりで動いてたってことだよな?
俺が俺だって分かったのは真っ最中だったわけだから、こっちの俺が何も知らないって分かった上で。
「お前それ、こっちの何も知らない俺を身代わりにでもするつもりだったのかよ」
そういうことだよな?
普通に最低じゃねーか。
「あー……、まあ、そういうことになるんだが、最初からそのつもりだったわけじゃない。瑞月が瑞月だったからだ」
「何それ。どういうことだよ」
「言っただろ?『見つけた』って思ったって。あれは揶揄でもわざとらしい口説き文句でもなく本当にそう感じたんだ。瑞月が部屋に入ってきて、目が合った時。…………ここがあっちと近い世界で、同じ名、同じ姿の人間が存在すると両親から言われていた。でもそれは似ているだけの別人であっちに居た時のように接しては駄目だと」
「…………それは、分かる」
うちの家族がまさにそれだもんな。
姿形は同じだけど、中身は違う。知らない相手だ。
接した時間が数時間にも満たないからどう違うかまでは分からないままだけど。
「そうか。で、まず、同室者の名字を確認した時にまさかなと思った。珍しい苗字だろ?その時点ではだったら最悪だと思っていた」
「最悪」
「ああ。何せレイプなんてするくらいに恋しい相手と瓜二つの別人だぞ?忌々しいだけだろ。僕にとって瑞月はあっちで出会った瑞月だけだ。似てるだけの別人なんて嫌悪しかない。と、思っていたのに、いざ顔を合わせたら変な感覚に襲われるわ雰囲気とか仕草がどう見ても瑞月そのものだわ僕に怯える様子があるわ、これが本当に別人なのかってかなり困惑した」
いくら状況が状況だったとしてもレイプすんなとしか言いようがないが。
…………こっちの俺を身代わりにしようって思ってたわけじゃないのは、まあ、分かった。
でもって初日のあれの時点で変だと思われてたわけね。全然誤魔化せてねー。
「その上早くモノにしろだの手遅れになるぞだの同じ後悔はしたくないだろうだの煩くて」
ん?
…………うん??
「えっと。それ、誰の発言?」
発言内容からしてここに来てからだよな?
でもそんな突っ込んだ発言できるような相手はいないはず。
なら誰が?って話なんだけど。
「…………これは瑞月の目のことがあるから言うんだが。実は僕、幼い頃から変な声が聞こえたんだ。声曰く、『精霊』らしい。声だけで姿は見たことはない」
「精霊?精霊ってあの……」
「よくファンタジー作品で出てくるあれだな。自称だが。そいつが物心着く頃にはもう僕の傍に居て、助けられたことは多いが何かと煩いんだ。まあ、そのことがあったからこっちの世界の事を割とあっさり受け入れられたんだが」
どことなくしかめっ面で言う柊夜。
助かってるけど迷惑してるって感じか。
しかし……姿はなくて声だけが聞こえる、って、なんか俺の、ここに来て何度か聞こえてるあの声と同じじゃ?
ええとこれは、言っておいた方がいいやつだよな。
「ええと、その……俺も聞こえる。なんか変な声。こっち来てから」
「…………精霊の声は素質がないと聞こえないらしいぞ」
「…………なんか俺に変な属性大量についてんだけどなんで?」
「僕が聞きたい。結果的にだがさっさと番っておいてよかった」
「つっ、…………最後、までしてねーけど」
「今日はな」
お前の認識ではそうだろうけど。
俺からしたら丸2年は前だし、そもそも身体が違う。
……………………これも言っておかないと不味い、よな。
「えー、っと。物凄い言いづらいんだけど。俺さ、お前みたいに身体ごとこっちに来たわけじゃないんだよ、ね」
「…………は?」
「なんつーか、中身だけ入れ替わった感じなんだわ。その上、あっちではあれから丸2年は経ってる」
「は?どういうことだ?!」
「いやそんなん俺にも分かんねーよ。むしろ俺が聞きてーわこんな訳の分かんねー事態!」
―――――― まあ、そうだろうな
「!」
割り込んできた声に、2人顔を見合わせる。
…………てことは、どっちにも聞こえてる、ってこと。
で、あの声じゃなくて知らない男の声の方。
多分だけど……この男の声は、柊夜の言っている声の方じゃないだろうか?
俺に最初から聞こえたのはあの、性別の判断できないような幼い声だから。
―――――― 吾が分かる限りではその人の子は取替え子だ。精霊の力によって中身を入れ替えられた者。今回宿主を連れ戻すため門が大きく開かれたことにより正しく在ろうとする力が働き正しい器に戻されたのだろう
「2年のズレは」
―――――― そんなもの世界間では誤差だ
ばっさりと言い切る声。
人間からすれば誤差なんてもんじゃねーけど。2年は普通に長い。
「…………何かのきっかけで、また入れ替わるなんてことは」
―――――― ない。正しい器に戻り番いも成った。もう揺らぐことはないだろう
「なら、いい」
はっきりと声が断言する。
それに、安心したように息を吐く柊夜。
ああ、まあ、確かにそういう可能性もあったのか。
…………っていうか。
取替え子とか。正しい器とか。
「それってつまり、俺も元々こっちの世界の産まれ、ってこと?」
―――――― そうだ。アレの話では産まれて間もない時に至近距離で馬鹿な低位精霊共の争いが起き、その余波で中身だけあちらに飛ばされたという。当時まだタマゴの状態だったアレでは争う低位精霊共の余波からお前を庇うだけで精一杯だったようだ
何その傍迷惑な話。
俺が生まれて間もない時に近くで精霊達が争って?その余波で入れ替わった?ってマジでどういう事態??
ついでに多分アレってあの声の事だよな?
俺ってそいつに相当守られてるじゃん。当時タマゴ?だったらしいけど。
「色々深掘りしたい所はあるが、瑞月が僕のものでもう離れることがないならひとまず後回しでいい。それより、明日は最後までやるからそのつもりでいろよ」
「え、あ、…………今日、はしないの」
「一気に色々あって疲れただろ。それにそもそも今日は最後までやる気はなかったしな」
「……………………あ゙?」
言われた言葉を正しく理解して、つい声を荒げてしまう。
あれだけやっといてどの口でそんなこと言ってんだコイツ。
「食事の後だっただろ。瑞月の身体に負担が掛かる。挿れなくてもどうとでもできるし実際なっただろう?」
「いや、おま、」
「まず想定外だったんだ。一応、少しずつ進めていくつもりでいたんだから。少しずつ囲って外堀を埋めてモノにするつもりだったのに……結果的に自分自身に嫉妬してたとかいう訳の分からない状態だったが」
「それは……」
「まあ都合のいい状況だったから、最後までヤらないことを条件に主導権を取ろうとは思っていた。そうしてしまえばあとは時間をかけてオトせばいい」
「オイコラ」
またクソみたいなこと言ってんだけど!?
要は脅して言うこと聞かせるってことじゃん!
嫌でも理解してきたんだけど!コイツがガチでヤバイって!
…………俺の自覚がレイプありきだから、分かってたことだけど!
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