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ここはいくら似たところがあっても、俺が生きてきた世界とは別の世界だ。
だって魔力なんてものが存在していて、まだ見たことはないけどモンスターとか亜人なんてのも実在してるって言う。そしてそれに対抗するための仕組みがあって、それが誰にとっても当たり前で、疑うこともない。
元の世界でゲームとか漫画とかを見て色々知ってる俺からすると、歪な世界。
どうしたって、違う世界だ。
だからここで出会う人はよく似ていても『違う』人だ。
そのはずなのに。
今、俺を抱き締めている奴は、俺にとって元の世界のソイツだと言う。
「……え?いや、だって、…………え?」
なんで?そんなことありえる?
自分でも何がどうしてこうなったかも分からないのに、それでもありえないことだって分かるのに、コイツもって。どんな確率だよ。
七夕の願い事でこんなことになった、とは流石に思えないぞ!?
「曰く、稀に起こりうる、らしいぞ」
「は……?どういうこと、だよ」
稀に起こりうるって何???
マジで意味が分からない。
らしい、って誰かに聞いたのか?そんなこと一体誰に?
「説明はできるんだが……その前に」
「へ?うぉわっ?!」
唐突に。本っ当に、唐突に。
腰を抱き寄せられて、お互いの性器を密着させられた。
俺の方はショックやら何やらで萎えていたけど、柊夜の方は全然硬いまま、で。
そういえば柊夜って、多分一回もイッてない……?
「もうちょっとこっちに来い」
「ぅあッ!ちょ、待った?!」
「無理だ。このままだと色々辛いんだよ」
いやそれは分かるけど!!
分かるけど……、あーもー!
さっさとやれ、という意味を込めて背中に腕を回す。
そうでもしないと自分が逃げを打つと分かっているから。
なんか笑ってる気配感じるけど無視だ無視!
「ん、んっ、ふ、ぁッ!」
「っ、は、さっきと声、全然違うぞ」
「あ、う、なに、んぅっ!」
柊夜の手が、互いの性器を揉んだり摺り上げたりして刺激してくる。
さっきと違うなんて言われても自分じゃよく分からないし、むしろレイプされてる状況で自分の声なんて気にしてられるか。
ていうかそんなの今はどうでもいいから早くイッてほしい。
聞きたいことも、言いたいことも沢山あるんだよこっちは!
「ん、っふー……、」
「ぅ、あ、」
手で覆われた中に、熱いモノが流れてくる。
どうやらイッたっぽい。
俺はまだだけど少しやればイけそうだし、さっさとやって話を――――――、って、ん?
…………えぇと。
「なん、で」
まだそんな、元気なままなわけ??
理由が理由だから顔を上げられず、俯いたまま言葉を濁す。
でも、何が言いたいかは本人が一番分かってるはずだ。
それに対する柊夜の返答は、俺の腰を抱いている腕に力を込めて、
「悪いがまだ付き合ってもらうぞ?俺はまだ満足してない」
という、無情にも等しいものだった。
「――――で、こっちの事情をまず話したいんだが」
「おぅ……」
後ろから抱き締める柊夜の腕の中でぐったりしつつ、答える。
柊夜が満足するまで付き合わされた後、シャワーを浴びたり着替えたりして、ようやく話を、ってなったんだけど。
気まずくてちょっと距離を取ってたら捕まって、至る現在。
抵抗に意味はなかった。なんでだ。
「僕にも詳しいことは分からないんだが、あっちの世界とこっちの世界はとても近いらしい。運が良ければ行き来できる程度には」
「…………は!?」
行き来できる!?あっちとこっちが!?
「まあそうは言っても何百年に一回とか特殊条件が揃った日に数時間とか、そんな感じらしい。で、僕は元々こちらの生まれで1歳か2歳くらいの時にあっちに落ちたらしい。施設育ちはそのためだ。事情を知ったのは中3の夏の終わりくらいだったな」
あ、そういう……。
流石にほいほい行き来できるわけじゃないんだな。
しかし、柊夜は生まれからこっちだったのか……とはいえ、1~2歳くらいにあっちに行ったならこっちのことは殆ど何も分からないよな。
小、中学校に通っていないってのもあっちでは通っていてもこっちでは通った記録が残ってないから、だろう。
「あの時は驚いたよ。水面に僕にそっくりな男が映って、ようやく見つけた!とか言われて。早口で事情を捲し立てられるわ、勝手に連れ戻されるのが決まってるわ、残された時間が少ないわ、時間がないとかで言うだけ言って消えるわで何にどんな感情をぶつければいいのか本当に迷った」
「お、おう」
そりゃ困るし迷うわ。
あの時柊夜の方がそんなことになっていたとはなぁ。
…………本当にあの時点で、別れは決まってたのか。
こんな事態にならなければ、マジで二度とコイツには会えなかったんだ。コイツは俺と違って身体ごとこっちに来てるっぽいから。連れ戻す、だし。
「でも、良かったとも思った。物理的に離れてしまえばお前を忘れられると思って」
「……え」
「お前は一切気付いてなかったけど僕は中1の中頃にはお前が好きだったよ。でもそれはあの世界では普通じゃなかったから。だからあの件で突き放して遠ざけた」
「は、え?」
待った。待って?
中1の中頃には好きだった?
柊夜が、俺を?
あの件で俺を遠ざけたのは、俺を好きだったから……?
「それなのにお前はいちいち僕を意識した反応をするから。何度か適当に連れ込んで犯してやろうかと思った」
あ゙?
今なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが????
というかやっぱりあれだ。
コイツ、素は語調が荒い方だな?
「卒業式まで耐えたんだがな。あんな顔されたら耐えられるわけがない」
「……………………場所が場所だったし最初からそのつもりだったんじゃねーの」
「何もなければ何もせず別れるつもりだったぞ」
何もなければって時点でそのつもりあったってことじゃねーか。
大体あんな顔ってなんだよ?どんな顔してたっつーんだ。
あの時は、ただ、寂しくて……
「嫌われたって無理がないくらい突き放して無視してたのに、僕に二度と会えなくなるのが寂しい、悲しいって顔をされたら手を出さない方が無理だろ。僕にとっては最後のチャンスだったんだから。…………例え傷にしかならなかろうとお前に僕を残していきたかった」
ぎゅうっと強く抱き締められる。痛いくらい。
逃がさない、というより逃がす気はない、て感じ?
「好きだ。好きなんだ、瑞月。あっちに居た頃から、どうしようもなく」
真剣な声。…………告白。
正直に言えばあの時に聞きたかったけど、あの時に言われてたらきっと受け入れられなかっただろう。
当時の俺にとって柊夜は微妙な関係の相手で、そんな柊夜にどんな感情を抱いているのか一切自覚していなかったから。
俺には丸2年、離れて考える時間があって。そのもやもやした時間があったからこそ、今、ようやく認められたんだと思う。
ただそこまでの流れが最低過ぎるけどな!二度目!!
でも多分それがなければ自覚しなかったんだよなー……。
もう本当酷いわ。
…………俺も、ちゃんと言わなきゃ駄目だよな。
2年の開きがあるとか、柊夜みたいに身体ごとじゃないとか。だからこそ面倒な状態にあるとか。
告白の、答えとか。
ちゃんと言わないと。
「お、れ。その……、……………俺も、お前が好きだ」
羞恥心とか、色んな感情を抑え込みながら口にする。
思う所は本当に色々あるけど、まず先にこれを伝えなければと。
やっと。
やっと聞けたし、伝えられた。
それに安堵して抵抗する力を緩めた途端。
肩を掴まれて振り向かされて、キスをされた。
いちいち強引なのマジでなんなの。
だって魔力なんてものが存在していて、まだ見たことはないけどモンスターとか亜人なんてのも実在してるって言う。そしてそれに対抗するための仕組みがあって、それが誰にとっても当たり前で、疑うこともない。
元の世界でゲームとか漫画とかを見て色々知ってる俺からすると、歪な世界。
どうしたって、違う世界だ。
だからここで出会う人はよく似ていても『違う』人だ。
そのはずなのに。
今、俺を抱き締めている奴は、俺にとって元の世界のソイツだと言う。
「……え?いや、だって、…………え?」
なんで?そんなことありえる?
自分でも何がどうしてこうなったかも分からないのに、それでもありえないことだって分かるのに、コイツもって。どんな確率だよ。
七夕の願い事でこんなことになった、とは流石に思えないぞ!?
「曰く、稀に起こりうる、らしいぞ」
「は……?どういうこと、だよ」
稀に起こりうるって何???
マジで意味が分からない。
らしい、って誰かに聞いたのか?そんなこと一体誰に?
「説明はできるんだが……その前に」
「へ?うぉわっ?!」
唐突に。本っ当に、唐突に。
腰を抱き寄せられて、お互いの性器を密着させられた。
俺の方はショックやら何やらで萎えていたけど、柊夜の方は全然硬いまま、で。
そういえば柊夜って、多分一回もイッてない……?
「もうちょっとこっちに来い」
「ぅあッ!ちょ、待った?!」
「無理だ。このままだと色々辛いんだよ」
いやそれは分かるけど!!
分かるけど……、あーもー!
さっさとやれ、という意味を込めて背中に腕を回す。
そうでもしないと自分が逃げを打つと分かっているから。
なんか笑ってる気配感じるけど無視だ無視!
「ん、んっ、ふ、ぁッ!」
「っ、は、さっきと声、全然違うぞ」
「あ、う、なに、んぅっ!」
柊夜の手が、互いの性器を揉んだり摺り上げたりして刺激してくる。
さっきと違うなんて言われても自分じゃよく分からないし、むしろレイプされてる状況で自分の声なんて気にしてられるか。
ていうかそんなの今はどうでもいいから早くイッてほしい。
聞きたいことも、言いたいことも沢山あるんだよこっちは!
「ん、っふー……、」
「ぅ、あ、」
手で覆われた中に、熱いモノが流れてくる。
どうやらイッたっぽい。
俺はまだだけど少しやればイけそうだし、さっさとやって話を――――――、って、ん?
…………えぇと。
「なん、で」
まだそんな、元気なままなわけ??
理由が理由だから顔を上げられず、俯いたまま言葉を濁す。
でも、何が言いたいかは本人が一番分かってるはずだ。
それに対する柊夜の返答は、俺の腰を抱いている腕に力を込めて、
「悪いがまだ付き合ってもらうぞ?俺はまだ満足してない」
という、無情にも等しいものだった。
「――――で、こっちの事情をまず話したいんだが」
「おぅ……」
後ろから抱き締める柊夜の腕の中でぐったりしつつ、答える。
柊夜が満足するまで付き合わされた後、シャワーを浴びたり着替えたりして、ようやく話を、ってなったんだけど。
気まずくてちょっと距離を取ってたら捕まって、至る現在。
抵抗に意味はなかった。なんでだ。
「僕にも詳しいことは分からないんだが、あっちの世界とこっちの世界はとても近いらしい。運が良ければ行き来できる程度には」
「…………は!?」
行き来できる!?あっちとこっちが!?
「まあそうは言っても何百年に一回とか特殊条件が揃った日に数時間とか、そんな感じらしい。で、僕は元々こちらの生まれで1歳か2歳くらいの時にあっちに落ちたらしい。施設育ちはそのためだ。事情を知ったのは中3の夏の終わりくらいだったな」
あ、そういう……。
流石にほいほい行き来できるわけじゃないんだな。
しかし、柊夜は生まれからこっちだったのか……とはいえ、1~2歳くらいにあっちに行ったならこっちのことは殆ど何も分からないよな。
小、中学校に通っていないってのもあっちでは通っていてもこっちでは通った記録が残ってないから、だろう。
「あの時は驚いたよ。水面に僕にそっくりな男が映って、ようやく見つけた!とか言われて。早口で事情を捲し立てられるわ、勝手に連れ戻されるのが決まってるわ、残された時間が少ないわ、時間がないとかで言うだけ言って消えるわで何にどんな感情をぶつければいいのか本当に迷った」
「お、おう」
そりゃ困るし迷うわ。
あの時柊夜の方がそんなことになっていたとはなぁ。
…………本当にあの時点で、別れは決まってたのか。
こんな事態にならなければ、マジで二度とコイツには会えなかったんだ。コイツは俺と違って身体ごとこっちに来てるっぽいから。連れ戻す、だし。
「でも、良かったとも思った。物理的に離れてしまえばお前を忘れられると思って」
「……え」
「お前は一切気付いてなかったけど僕は中1の中頃にはお前が好きだったよ。でもそれはあの世界では普通じゃなかったから。だからあの件で突き放して遠ざけた」
「は、え?」
待った。待って?
中1の中頃には好きだった?
柊夜が、俺を?
あの件で俺を遠ざけたのは、俺を好きだったから……?
「それなのにお前はいちいち僕を意識した反応をするから。何度か適当に連れ込んで犯してやろうかと思った」
あ゙?
今なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが????
というかやっぱりあれだ。
コイツ、素は語調が荒い方だな?
「卒業式まで耐えたんだがな。あんな顔されたら耐えられるわけがない」
「……………………場所が場所だったし最初からそのつもりだったんじゃねーの」
「何もなければ何もせず別れるつもりだったぞ」
何もなければって時点でそのつもりあったってことじゃねーか。
大体あんな顔ってなんだよ?どんな顔してたっつーんだ。
あの時は、ただ、寂しくて……
「嫌われたって無理がないくらい突き放して無視してたのに、僕に二度と会えなくなるのが寂しい、悲しいって顔をされたら手を出さない方が無理だろ。僕にとっては最後のチャンスだったんだから。…………例え傷にしかならなかろうとお前に僕を残していきたかった」
ぎゅうっと強く抱き締められる。痛いくらい。
逃がさない、というより逃がす気はない、て感じ?
「好きだ。好きなんだ、瑞月。あっちに居た頃から、どうしようもなく」
真剣な声。…………告白。
正直に言えばあの時に聞きたかったけど、あの時に言われてたらきっと受け入れられなかっただろう。
当時の俺にとって柊夜は微妙な関係の相手で、そんな柊夜にどんな感情を抱いているのか一切自覚していなかったから。
俺には丸2年、離れて考える時間があって。そのもやもやした時間があったからこそ、今、ようやく認められたんだと思う。
ただそこまでの流れが最低過ぎるけどな!二度目!!
でも多分それがなければ自覚しなかったんだよなー……。
もう本当酷いわ。
…………俺も、ちゃんと言わなきゃ駄目だよな。
2年の開きがあるとか、柊夜みたいに身体ごとじゃないとか。だからこそ面倒な状態にあるとか。
告白の、答えとか。
ちゃんと言わないと。
「お、れ。その……、……………俺も、お前が好きだ」
羞恥心とか、色んな感情を抑え込みながら口にする。
思う所は本当に色々あるけど、まず先にこれを伝えなければと。
やっと。
やっと聞けたし、伝えられた。
それに安堵して抵抗する力を緩めた途端。
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