星屑の砂時計

一色ほのか

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 思考が止まる。
 間違いなく自分の思考なのに、飲み込めなくて。
 

 ――――――今、俺は何を考えた?

 
 葛西が、俺の番い?
 なんで、そんなこと。

 あっちの世界には番いなんていう関係性は存在しない。同性同士の恋愛だって少数だ。
 だから例えレイプじゃなくても、俺と葛西が番いになんてなりえないのに。そんな認識、どこから湧いて出た?この世界に来てそれを知ってしまったから?
 なんで?どうして?

 俺達の間にはこの世界の番い達のような感情はなくて、最後だからってレイプされて、何も聞けないまま別れて。
 アイツが俺をどう思っていたかなんて、分からないまま。
 知りたかった事実は、知れないまま。
 

「…………瑞月?」
 

 流石に突然抵抗が消えたことを不審に思ったらしく、柊夜が顔を覗き込んできた。
 
 同じ顔。同じ声。
 どんな出来の悪い間違い探しだよってくらい、違いなんて目の色くらいしかない。
 それぐらいそっくりなのに、コイツは葛西じゃない。
 世界が、違うから。
 
「…………ッ」
 
 何か言わなければ、と思う。
 でも自覚してしまったことがあまりにも苦しくて悲しくて、溢れる涙に喉が詰まって上手く話せない。
 
 嫌わない理由を探してるなんて、嘘だった。

 本当は、ずっと分かってた。
 ただそれを認めたくなかったんだ。
 だってもう全部が終わっていた。次なんてなかった。
 だから。

 葛西が好きだったんだ・・・・・・・・・・と、認めてしまうのが嫌だった。

 気付かないで、誤魔化して、すり替えて。
 今までそうやってやり過ごしてきたのに。今更。

 
「――――――そいつが、好きなのか」
 

 不意に、柊夜が口を開く。
 涙で歪んだ視界では、その表情はよく見えない。
 
「自分をレイプした相手なのに。だから上書きなんて必要ない。そういうことか」
 
 静かな声で。言う。
 
 そう、なんだろうか。
 あの記憶自体は、傷として今も残っている。
 痛かったのも、怖かったのも覚えている。
 でも……はっきりと自覚した今、あれは最初で最後の葛西との記憶で。
 上書きなんてしたくない、と、思い始めている。
 
「…………なら容赦は要らないな」
 
 不穏な言葉。
 嫌な感じがして、なんとか抵抗しようとした、けど。
 いつの間にか服の中に入り込んでいた手が出ていて、下着ごとズボンをずり下げられ、そのまま完全に下だけ衣服を脱がされてしまった。
 そして、両膝を掴まれて脚を大きく広げさせられ、恥部を晒すような体勢にされてしまう。

「――――ッやだ、しゅ、んっっ」
 
 またキス。
 やばい、これ、絶対キスに弱いの気付かれてる。
 手首の拘束は取れそうにないし、脚は間に割り言ってきた柊夜の身体の所為で閉じれないし!
 こうなる前なら蹴り上げるくらいはできたかもしんないのにっ!
 
「っ?!ふぁ、っ…………や、んんっ!!」
 
 柊夜の手が、なんの躊躇もなく俺の性器に触れる。
 思わず足を閉じようと力を籠めるも、柊夜の身体に当たるだけ。
 一瞬動きは止まったけど、手はまたすぐに動き出した。
 
 嫌だ。
 
 そう思ったって柊夜を止める術はなく、その手から与えられる刺激に耐える以外にどうしようもなくて。
 拒絶の声を上げたくても、口を塞がれていてそれもできない。
 足は動くから暴れるって手もあるけど、それで部屋の外に中の状況がバレる方が多分やばい。

 このままじゃ不味いのは分かってるのに。
 考えようにもキスと自分でするよりもずっと強い刺激が、思考する気力を奪っていく。
 
「っは、ァ、ぁああッッ!」
 
 唇が離れると同時に、一際強く擦り上げられる。
 たったそれだけで、散々刺激を与えらえた俺のモノは達してしまった。
 服にかかった感じがないあたり、出たものは柊夜が手で受け止めたようだ。
 
「まあ十分か」
 
 ぽつりと零すような小さな声。
 その意味は、すぐに分かった。

「っ!」

 指が、後孔に触れる。
 そしてそれを伝って、何か液体の様なものが流れてきた。
 何かって言うか確実に、
 
「い゙ッ――――!」

 前触れもなく後孔に指を突き入れられ、あまりの痛みに呻き声を上げる。
 本来出す役割しか持たないそこは、女のように濡れている、なんてことはなく。
 代わりに俺が出したものを使ったようだけど、あまり意味がないと思う。
 あの時も――――そうだったから。
 
「んあッ!ぁ、や゙ッ、だ、ぃ、ああッ!」
 
 現実逃避のようにぐるぐる考えている間にも柊夜の手は動いている。
 後孔を解すように動く指と、性器を弄る手。
 無言なのがひたすらに怖い。
 
 怒ってる、のは最初から変わらない。ただ、最初は恐らく俺をレイプした相手に、だけど、今は俺に怒ってる。
 俺を好きだと、レイプの記憶を上書きさせてくれと言った柊夜に、レイプしてきた相手が好きなのかと問われて否定できなかったから。

 嘘でも否定したくなかった。
 それを否定してしまったら、辛うじて残された葛西との繋がりが切れてしまう気がして――――、
 
「――――ッあぁああッッ!?」
 
 不意に、柊夜の指がそこに触れた。
 
「ここか」
「あ゙っ!んっや、だッ!や、あ、あぁああッ!」
 
 ぐりぐりと荒っぽく、そこを刺激される。
 その間も、性器を扱く手は止めない。

「や、あァ――ぁんんんッッ!!」

 強く感じる場所を同時に責められ耐えられるはずもなく、イッてしまった。
 それと同時にキスをされて、悲鳴は咥内に消える。

 つらい、くるしい。

 それでも柊夜の手は止まらず、ナカとイッたばかりの性器を弄っている。
 もう、それに抵抗する気力はなかった。
 


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