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30 無自覚の自覚 ☆
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何を言われたのか。すぐには理解できなかった。
したくなかった、とも言う。
だって。上書きって。
今この状況でそれが指すのは、一つしかないじゃん。
「嫌か……?」
ぎゅうと抱き締める腕に力を籠められる。
逃がさない、とでも言うように。
声音は心配げなのに行動が真逆なんだが。
というか俺からしたら上書きも何も、って感じなんだけど。
つーか。
「聞かなかったことにしろよ……っ」
普通知り合って一週間しない相手にそんな踏み込んで聞いてこないだろ。
その上そういうこと言う?
レイプされたって分かってる相手に上書きしたい、ってつまり、抱かせろってことだろ。
そういう関係ならまだしも。俺達はただの友達で、番いというのだって偽装に過ぎなくて、
「それは無理だ。だって僕は瑞月が好きだから」
「……………………は?」
思わず顔を上げた。
超至近距離で、柊夜と目が合う。
その表情は嘘を吐いているようにも、冗談で言っているようにも見えない。
ただ真剣で、射貫くような目。
逸らしたいのに、逸らすことができない。
――――――好き?
柊夜が、俺を?
「一番近いのは一目惚れ、だと思う。あの日瑞月が部屋に入ってきた時、見つけたって思ったんだ。変だよな、初めて会ったはずなのに」
「ぇ、あ、」
「本来なら僕はこんなにパーソナルスペースは狭くないし、初対面の相手に触ろうなんてしない。むしろ他人に必要以上に関わることが苦痛でしかないからどうやって同室者に不干渉を約束させようか悩んでいたぐらいなのに」
「しゅう、」
「番いの偽装も。普通いくら都合のいい条件だからって、あんな内容で自分の一生を縛りかねない関係を持ち出したりするなんて下心がないわけないだろう?もちろん周りからの干渉を防ぐ意味もあったけど、あわよくばを狙ってた。こうやって、」
「っひ!?」
身体を抱き締めていた腕が離れて、背や脇腹、腰を撫でていく。
明らかに、そういうことを意識した触り方。
「少しずつ触れて慣らして、僕の物にするつもりだったのに」
「待っ、んっ!」
噛み付くようにキスをされる。
頭をがっちり押さえられていることと、凭れるような体勢になっているせいで踏ん張りが効かず、振り払うことも、逃れることもできない。
なんで。どうして?
あまりの展開の早さに思考が追いつかない。
キス、も、なんとか抵抗しようとしたけど、途中からしつこいくらいに舌を絡めとられて、苦しくて。
ようやっと解放された時には、息も絶え絶えの状態で床に押さえ付けられていた。
「上書き、しような」
そう、笑顔、だけど。
目の奥は、笑っていない。怒ってる。
その怒りが俺に向けられているわけじゃないのは分かるんだけど、いつもと全く違う表情、というか、葛西にそっくりな目に身が竦んでしまう。
抵抗しなきゃ不味いって、分かってるのに。
「悪いけど手は拘束させてもらう」
「え、っ!ちょっ!?」
両手首を掴まれ、頭上で一纏めに括られる。
慌てて拘束を外そうと手を動かしても外れず、それどころか何かが引っかかっていて頭上から動かすこともできない。
これ、多分、位置的にベッドのフレームを巻き込んでる。だっていくら引っ張ってもピクリともしない。
どうしよう、どうしたら、こんなの……ッ!
「無駄だと思うぞ?」
「ぅあッ?!やっ、だ、触んな!」
「上書きするんだから触らないわけにはいかないだろ。出来るだけ優しく――――いや、瑞月が気持ちいいようにするから」
「や、ッ!」
服の裾から手が入り込んできて、指が素肌を滑るように撫でていく。
怖い。
身を捩って抵抗を試みても、手が動かせない以上高が知れていて。
怖い。
だけどそんな俺などお構いなしに、柊夜は動いている。
本当に、本気で、俺を犯そうとしている。
上書きなんて言ったって、結局こんなのただのレイプじゃないか!
「離せよッ!俺はいいなんて言ってない!!」
拒絶の言葉と一緒に、ぼろりと涙が零れ落ちる。
恐怖とか、色々、頭がごちゃごちゃして上手く考えがまとまらない。
でも、ただ、こんなのは嫌だった。
好きだという柊夜の言葉も。信じられなかった。…………信じたくなかった。受け入れられなった。
だって俺が、…………俺が好き、なのは――――、
「そうだな。でも止める気はない」
「ッん、ぅ、……はッ、…………ッ!」
無理矢理にキスをされる。
これ、駄目だ、なんでか身体の自由が利かなくなる感じがする、あの時も、違う、コイツは柊夜で、アイツじゃなくて、違う、でも、拒まないと、抵抗しないと。
重ねちゃいけない。流されちゃ駄目だ。
コイツは、俺の番いじゃないのに。
したくなかった、とも言う。
だって。上書きって。
今この状況でそれが指すのは、一つしかないじゃん。
「嫌か……?」
ぎゅうと抱き締める腕に力を籠められる。
逃がさない、とでも言うように。
声音は心配げなのに行動が真逆なんだが。
というか俺からしたら上書きも何も、って感じなんだけど。
つーか。
「聞かなかったことにしろよ……っ」
普通知り合って一週間しない相手にそんな踏み込んで聞いてこないだろ。
その上そういうこと言う?
レイプされたって分かってる相手に上書きしたい、ってつまり、抱かせろってことだろ。
そういう関係ならまだしも。俺達はただの友達で、番いというのだって偽装に過ぎなくて、
「それは無理だ。だって僕は瑞月が好きだから」
「……………………は?」
思わず顔を上げた。
超至近距離で、柊夜と目が合う。
その表情は嘘を吐いているようにも、冗談で言っているようにも見えない。
ただ真剣で、射貫くような目。
逸らしたいのに、逸らすことができない。
――――――好き?
柊夜が、俺を?
「一番近いのは一目惚れ、だと思う。あの日瑞月が部屋に入ってきた時、見つけたって思ったんだ。変だよな、初めて会ったはずなのに」
「ぇ、あ、」
「本来なら僕はこんなにパーソナルスペースは狭くないし、初対面の相手に触ろうなんてしない。むしろ他人に必要以上に関わることが苦痛でしかないからどうやって同室者に不干渉を約束させようか悩んでいたぐらいなのに」
「しゅう、」
「番いの偽装も。普通いくら都合のいい条件だからって、あんな内容で自分の一生を縛りかねない関係を持ち出したりするなんて下心がないわけないだろう?もちろん周りからの干渉を防ぐ意味もあったけど、あわよくばを狙ってた。こうやって、」
「っひ!?」
身体を抱き締めていた腕が離れて、背や脇腹、腰を撫でていく。
明らかに、そういうことを意識した触り方。
「少しずつ触れて慣らして、僕の物にするつもりだったのに」
「待っ、んっ!」
噛み付くようにキスをされる。
頭をがっちり押さえられていることと、凭れるような体勢になっているせいで踏ん張りが効かず、振り払うことも、逃れることもできない。
なんで。どうして?
あまりの展開の早さに思考が追いつかない。
キス、も、なんとか抵抗しようとしたけど、途中からしつこいくらいに舌を絡めとられて、苦しくて。
ようやっと解放された時には、息も絶え絶えの状態で床に押さえ付けられていた。
「上書き、しような」
そう、笑顔、だけど。
目の奥は、笑っていない。怒ってる。
その怒りが俺に向けられているわけじゃないのは分かるんだけど、いつもと全く違う表情、というか、葛西にそっくりな目に身が竦んでしまう。
抵抗しなきゃ不味いって、分かってるのに。
「悪いけど手は拘束させてもらう」
「え、っ!ちょっ!?」
両手首を掴まれ、頭上で一纏めに括られる。
慌てて拘束を外そうと手を動かしても外れず、それどころか何かが引っかかっていて頭上から動かすこともできない。
これ、多分、位置的にベッドのフレームを巻き込んでる。だっていくら引っ張ってもピクリともしない。
どうしよう、どうしたら、こんなの……ッ!
「無駄だと思うぞ?」
「ぅあッ?!やっ、だ、触んな!」
「上書きするんだから触らないわけにはいかないだろ。出来るだけ優しく――――いや、瑞月が気持ちいいようにするから」
「や、ッ!」
服の裾から手が入り込んできて、指が素肌を滑るように撫でていく。
怖い。
身を捩って抵抗を試みても、手が動かせない以上高が知れていて。
怖い。
だけどそんな俺などお構いなしに、柊夜は動いている。
本当に、本気で、俺を犯そうとしている。
上書きなんて言ったって、結局こんなのただのレイプじゃないか!
「離せよッ!俺はいいなんて言ってない!!」
拒絶の言葉と一緒に、ぼろりと涙が零れ落ちる。
恐怖とか、色々、頭がごちゃごちゃして上手く考えがまとまらない。
でも、ただ、こんなのは嫌だった。
好きだという柊夜の言葉も。信じられなかった。…………信じたくなかった。受け入れられなった。
だって俺が、…………俺が好き、なのは――――、
「そうだな。でも止める気はない」
「ッん、ぅ、……はッ、…………ッ!」
無理矢理にキスをされる。
これ、駄目だ、なんでか身体の自由が利かなくなる感じがする、あの時も、違う、コイツは柊夜で、アイツじゃなくて、違う、でも、拒まないと、抵抗しないと。
重ねちゃいけない。流されちゃ駄目だ。
コイツは、俺の番いじゃないのに。
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