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他者に魔力を流すという行為は、普通なら親が幼い子供に魔力の感覚を教えるための行為。
それ以外の場合、他者に魔力を流すと反発が起きる。意識を失うレベルの痛みとかもあるらしい。
だけど、番い同士なら違う意味になる。
…………俺らの間では、俺の方ははっきりしないけど、柊夜の方は催淫の効果があったっぽい。
本当の番い同士だったらどういう反応になるのか。
柊夜は番いに限定している時点で自分と同じ反応になるんじゃないかって言うけど。…………俺もそうなんじゃないか、って思う。
思うんだけど、なんで俺らの間でそれが起きているのかが分からない。
相性がいい、と言ってしまえばそこまでなんだろうけど、本当にそうなのか?そんなことがあるのか?
この世界に来て、柊夜と会って。
そこからの流れがあまりにも――――、
「とりあえずあの時と同じで手を繋いでやってみよう」
「…………マジでやんの?」
「必要そうだと思ったから。というか、一番知りたいのは魔力をどの程度流せばあの状態になるのか、だな。それがお互いに分かっていれば調整できるし……あと、僕だけだと不公平だから瑞月も体験しておけばいいと思う」
「うっ」
にっこりと、笑う。
お前それ、絶対最後のが理由だろ。
本当は根に持ってたやつだろこれ!
「言いたいことは分かった、けど流石に顔見ては無理!」
俺も気になるっちゃ気になるし理由が理由だから諦めるけど!
顔見ながらは色んな意味で無理!
絶対、確実に、思い出す。下手すると発狂する。
今の不自然さは理解してるけど、それを踏み抜く予感がする。
変な事口走りでもしたら不味すぎ。
「じゃあ、背中合わせにでもなるか」
「それで頼む……」
やるの確定ならそれしかないわな……。
それでも抵抗はあるものの、手を繋いだまま背中合わせになる。
さっさと終わらせる、で、処理して寝る!気まずかろうと!
「いいか?」
「ん、おっけ」
「じゃあ、いくぞ」
その言葉を合図に、柊夜の魔力が流れ込んでくる。
返すように、俺も少しずつ魔力を流していく。
今のところ、痛みのようなものは感じない。教室でされた時と同じように、肌を指が這うようなぞわぞわする感覚がある。
魔力を流されている腕から、ゆっくりと全身に広がっていく感覚。
性感のようなものは感じない。が、とにかくざわざわぞわぞわして仕方ない。でもそれだけ。
あの時俺、どれくらい柊夜に流してたんだろう?
「ン、」
どれくらい、だろう。そんなに、ではない。
時間計っといたほうが良かったかな。なんて、ただの誤魔化しで。
手が、身体中をくすぐっているような。弄っている、みたいな。ぞわぞわする感触。
柊夜が言うのは、こういう感覚のことなんだろうか。
性感って言うには少し足りない、かも?
ていうか、なんだろ……、こんな感覚を、知っている気がする。
どこだっけ。なんだっけ……。
―――――――― ダメ、
―――――――― 揃って面倒な
「っえ、ひっ?!」
あの声。
を、掻き消すように、知らない男の声。
それを理解した瞬間、一気にそれが襲い掛かってきた。
身体を弄る手指の感触、首筋を這う生温い舌の感触。
拘束された手首の痛みと、自分じゃない誰かの手に無理矢理触られる恐怖。
それでも反応してしまう身体、そして。
痛みと、暴力的なまでの快感。
チカチカとする視界に映るのは――――黒い学ラン。
――――――――――気持ちいいか?
あの時のフラッシュバック。
なんで。今、こんなに鮮明に。
駄目だ、口、塞がないと、何口走るか分からない――――、
「瑞月!」
「っあ、」
ぱちん、とスイッチが切り替わるように。
その声が聞こえた途端、意識がクリアになった。
今までの状態が嘘みたいに、頭の中が一気に冷静になる。
今の、は。なんだ。
あんな酷いフラッシュバック、初めてな、気がする。
まるで、本当に、あの時みたいな……。
「大丈夫、なのか?」
「っ、え、あ、」
近付いてきた手を、大袈裟に避ける。
それに柊夜は心配そうな顔をして、大丈夫だから、と言い聞かせるように言ってから、その指で俺の目元に触れた。
…………ああ、泣いていた、のか。
気付いて、俯く。
今、柊夜の顔を見れそうになかった。色んな意味で。
めちゃくちゃ気まずい。
こんなんで下半身がちょっと反応しちゃってるのも合わせてきつい。
というか俺、何も言ってない、よな……?
「ちょっとごめんな、多分嫌だと思うけど」
「ぇ、わ……っ!?」
不意に伸びてきた腕に引き寄せられて、抱き締められる。
俯いていたせいで接近に気付けなかった。
身長、柊夜の方が少し高いけど、体格はそんなに変わんないと思ってたのに。
すっぽりと腕の中に抱き込まれて、抜け出せそうにない。
「…………物凄く、言い辛いだろうことを聞く、けど」
「……ん」
「さっき、ちょっと……口走ってたんだけど。もしかして瑞月、……レイプされたことがあるのか」
「……。…………」
クソ直球なんだが?そしてやっぱなんか口走ってたぞ!???
何言った俺、何口走った!?
「黙るのは肯定と同じだぞ……」
そんなこと、言われたって。
素直に肯定するなんてできるかよ。どう言えって言うんだ。
別に、誰に、なんて聞かれてない。言う必要もない。
だからって。自分がそういう目に遭ったってことを、そう簡単に口に出せるわけないじゃないか。
大体そんなこと聞いてどうすんだよ……。
「…………簡単に口にできることじゃ、ないよな。ごめん」
「…………ん」
「うん。それは、謝る。その上で言いたいことがあるんだが」
「……………………なに」
「それ、僕に上書きさせてくれないか」
…………。
…………。
…………。
…………。
………………はっ?
それ以外の場合、他者に魔力を流すと反発が起きる。意識を失うレベルの痛みとかもあるらしい。
だけど、番い同士なら違う意味になる。
…………俺らの間では、俺の方ははっきりしないけど、柊夜の方は催淫の効果があったっぽい。
本当の番い同士だったらどういう反応になるのか。
柊夜は番いに限定している時点で自分と同じ反応になるんじゃないかって言うけど。…………俺もそうなんじゃないか、って思う。
思うんだけど、なんで俺らの間でそれが起きているのかが分からない。
相性がいい、と言ってしまえばそこまでなんだろうけど、本当にそうなのか?そんなことがあるのか?
この世界に来て、柊夜と会って。
そこからの流れがあまりにも――――、
「とりあえずあの時と同じで手を繋いでやってみよう」
「…………マジでやんの?」
「必要そうだと思ったから。というか、一番知りたいのは魔力をどの程度流せばあの状態になるのか、だな。それがお互いに分かっていれば調整できるし……あと、僕だけだと不公平だから瑞月も体験しておけばいいと思う」
「うっ」
にっこりと、笑う。
お前それ、絶対最後のが理由だろ。
本当は根に持ってたやつだろこれ!
「言いたいことは分かった、けど流石に顔見ては無理!」
俺も気になるっちゃ気になるし理由が理由だから諦めるけど!
顔見ながらは色んな意味で無理!
絶対、確実に、思い出す。下手すると発狂する。
今の不自然さは理解してるけど、それを踏み抜く予感がする。
変な事口走りでもしたら不味すぎ。
「じゃあ、背中合わせにでもなるか」
「それで頼む……」
やるの確定ならそれしかないわな……。
それでも抵抗はあるものの、手を繋いだまま背中合わせになる。
さっさと終わらせる、で、処理して寝る!気まずかろうと!
「いいか?」
「ん、おっけ」
「じゃあ、いくぞ」
その言葉を合図に、柊夜の魔力が流れ込んでくる。
返すように、俺も少しずつ魔力を流していく。
今のところ、痛みのようなものは感じない。教室でされた時と同じように、肌を指が這うようなぞわぞわする感覚がある。
魔力を流されている腕から、ゆっくりと全身に広がっていく感覚。
性感のようなものは感じない。が、とにかくざわざわぞわぞわして仕方ない。でもそれだけ。
あの時俺、どれくらい柊夜に流してたんだろう?
「ン、」
どれくらい、だろう。そんなに、ではない。
時間計っといたほうが良かったかな。なんて、ただの誤魔化しで。
手が、身体中をくすぐっているような。弄っている、みたいな。ぞわぞわする感触。
柊夜が言うのは、こういう感覚のことなんだろうか。
性感って言うには少し足りない、かも?
ていうか、なんだろ……、こんな感覚を、知っている気がする。
どこだっけ。なんだっけ……。
―――――――― ダメ、
―――――――― 揃って面倒な
「っえ、ひっ?!」
あの声。
を、掻き消すように、知らない男の声。
それを理解した瞬間、一気にそれが襲い掛かってきた。
身体を弄る手指の感触、首筋を這う生温い舌の感触。
拘束された手首の痛みと、自分じゃない誰かの手に無理矢理触られる恐怖。
それでも反応してしまう身体、そして。
痛みと、暴力的なまでの快感。
チカチカとする視界に映るのは――――黒い学ラン。
――――――――――気持ちいいか?
あの時のフラッシュバック。
なんで。今、こんなに鮮明に。
駄目だ、口、塞がないと、何口走るか分からない――――、
「瑞月!」
「っあ、」
ぱちん、とスイッチが切り替わるように。
その声が聞こえた途端、意識がクリアになった。
今までの状態が嘘みたいに、頭の中が一気に冷静になる。
今の、は。なんだ。
あんな酷いフラッシュバック、初めてな、気がする。
まるで、本当に、あの時みたいな……。
「大丈夫、なのか?」
「っ、え、あ、」
近付いてきた手を、大袈裟に避ける。
それに柊夜は心配そうな顔をして、大丈夫だから、と言い聞かせるように言ってから、その指で俺の目元に触れた。
…………ああ、泣いていた、のか。
気付いて、俯く。
今、柊夜の顔を見れそうになかった。色んな意味で。
めちゃくちゃ気まずい。
こんなんで下半身がちょっと反応しちゃってるのも合わせてきつい。
というか俺、何も言ってない、よな……?
「ちょっとごめんな、多分嫌だと思うけど」
「ぇ、わ……っ!?」
不意に伸びてきた腕に引き寄せられて、抱き締められる。
俯いていたせいで接近に気付けなかった。
身長、柊夜の方が少し高いけど、体格はそんなに変わんないと思ってたのに。
すっぽりと腕の中に抱き込まれて、抜け出せそうにない。
「…………物凄く、言い辛いだろうことを聞く、けど」
「……ん」
「さっき、ちょっと……口走ってたんだけど。もしかして瑞月、……レイプされたことがあるのか」
「……。…………」
クソ直球なんだが?そしてやっぱなんか口走ってたぞ!???
何言った俺、何口走った!?
「黙るのは肯定と同じだぞ……」
そんなこと、言われたって。
素直に肯定するなんてできるかよ。どう言えって言うんだ。
別に、誰に、なんて聞かれてない。言う必要もない。
だからって。自分がそういう目に遭ったってことを、そう簡単に口に出せるわけないじゃないか。
大体そんなこと聞いてどうすんだよ……。
「…………簡単に口にできることじゃ、ないよな。ごめん」
「…………ん」
「うん。それは、謝る。その上で言いたいことがあるんだが」
「……………………なに」
「それ、僕に上書きさせてくれないか」
…………。
…………。
…………。
…………。
………………はっ?
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