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27 例のアレの意味
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「属性に付いては分からないことが分かった、ってことで。分からないのは俺の眼のこともだけどこればっかりはなぁ」
「具象化したものはみんなに見えていたようだし、それとは違うんだよな?」
「だと思う。俺が見えてたのは魔力そのものの色じゃないか?」
「そうか……。なんで瑞月だけにそれが視えたんだろう」
む、と眉間に皺を寄せて言う。
俺が目立った一番の理由ってこれだもんな。
でも俺にも分かんねーわ流石に。なんでだろ。
「それって水晶玉を通した場合だけなのか?」
「多分?だってお前が寄ってくる連中に魔力で威嚇してたの、色は見えなかったし」
「えっ」
「えっ?」
いや何その反応。まさかの無自覚か?
マジで言ってるのかの意を込めてジッと凝視してみたら、そっと視線を外された。
どうやら、マジらしい。
「僕、そんなことをしていたのか……?」
「してたぞ。神門センセとの言い合いの時もしてた」
「そう……なのか。無自覚にやらかしてたんだな、僕」
どことなく気まずそうに口元を隠し、柊夜。
無自覚だったんならそうなるのも仕方ない、か?仕方ないのか?
…………どういう環境で過ごしてたら威嚇に魔力が乗るなんて状態になるんだろう。
魔力持ちの家族がいる状況なら無自覚なんてありえないし、そこに小・中学校に通っていない理由があるなら後天発現とは言わないし、そもそもこの学園に入れられてそう。
つまり……、まるで、そう。
小・中学校の間自分が魔力持ちと知らず、魔力というものを知らないまま家族と離れて暮らしていた、みたいな。
「…………うん。もう何度もやらかしているようだし、このままでいいよな」
「…………。いーんじゃね?今更止めるのもなんだろうし」
「そうだよな」
苦笑い。
その表情に悲壮感はない――――今までもそうだ。
仮に俺が思い付いてしまったような酷い過去が柊夜にあったとして。
いつ家族に会えたのかは分からないにしろ、そんなに時間は経っていない気がする。中学にも通っていないというのだから。
そんな短期間で普通に見えるくらいに持ち直すなんて無理、だよな?
だからきっと、俺の考え過ぎた。
考え過ぎであってほしい。
…………本人、闇属性だけど。
俺的にはもう答えって感じだけど。
こうして考えると、柊夜も結構謎なとこあるんだよな……。
「次はクラスメイトに対する対応だけど」
「佐々と伊坂、大野と渡部は『友人』として対応するつもり。対比に丁度いいし。その他はあくまでもクラスメイトで、例の連中は情報は収集するけど基本スルー」
「それが無難か」
「というか現状じゃこれしかなくね?」
「そうだな。今後どう変わっていくかは要注意、だな」
入学してまだ2日目だからな。
現実的に考えてこの短期間で見極めができるわけがない。
となると恩を売った相手で周囲を固めるのが無難。クラス内に面倒なのが居ることだし。
「で、武器かぁ。刃のある武器、なんて腐るほどあるぞ」
「あるなぁ。打撃武器はそこそこか?」
「極論打撃になるなら本も打撃武器だぜ?…………あ」
教科書と資料をぱらぱら捲りながら見ていると。
資料の方に、日本刀が載っていた。
少なくとも存在はしているようだ。作り手は途絶えているようだけど。
「何か気になる武器でもあったのか?」
「ん?ああ、これ。日本刀ってどうなんだろうな~って」
「日本刀、かぁ。この書き方だとなんとなくロマン武器っぽいな」
「分かるー、見た目の割に両手で持たないと重いとか切れ味はいいけど刃毀れしやすいとか固い敵には向かないとか。それでも技量さえあれば標的を一刀両断にすらできる、とか完全に扱いずらい玄人向け武器って感じ」
存在は確認できても、そう簡単に手に入る物じゃない、か。
作り手がもう居ないならどっかで独占とかしてそう。
しっかし武器の作り手が途絶えるって、この世界的にやばいやつでは?
「あ。瑞月ほら、これ」
「んー?――――魔物は低確率で武具や防具、特殊アイテムを落とすことがあり、一定の法則があるとされる。どの魔物が何を落とすかは基本的に公開されているが秘匿されている物も多数存在する――――へえ、便利なことで。それで作り手が途絶えたのかも。…………って、ありがたいけど、なんで?」
「欲しいんだろ?公開されているようだし早い内に調べてみよう」
なんてことないように、言う。
いやうん欲しかったって言うかできるなら使ってみたいな、とは思っていたけど。他よりは惹かれてたけど。
それに気付いて、わざわざ調べたわけ?
…………。
今の、タイミングなら。
聞いてみても不自然ではない?
そう思って口を開こうとし――――、
「初期の武器は与えられるにしろ次を考えないといけないはずだ。ただみんな武器はアバウトに申請しているし、次はどうしたらいいのか分からないだろうから、敵から得られるなら無駄も無いよな」
「あー、そーね」
誰のためってわけではなくちゃんと考えただけだったようだ。
これは完全に自意識過剰。めちゃくちゃ恥ずかしいやつ。
言わなくて良かったー……。
そう、柊夜に気付かれないようこっそりと、小さく息を吐く。
「ん?」
目敏く気付くのやめろし。
つかよく気付いたな。
「いや……、最後は神門先生だけどさ。これも現状どうしようもなくね?本人の立ち位置もまだ謎だし。……伊坂はなんか知ってそうな感じするけど、あれじゃ話してはくれないだろ」
「伊坂が机を焼いた時の反応か。何か変だったもんな。すぐに取り繕ってたけど」
その前の反応の所為で何かありますってバレバレだけどな。
多分本人も誤魔化せてるとは思ってない。触れるなってことだろう。
「現状は油断し過ぎず行き当たりばったりでいくしかないよ。まだ序の口だろうし。くそ濃かったし疲れたけど」
「はは。うん。じゃあ今日はもう話しておくことはないってことでいいか?」
「そうかも?…………あ、いや一個あったわ。水晶玉に魔力を流す時のアレ、後で話すって言ってたよな?」
「あ~……、忘れてくれてても、良かったんだけど」
どこか歯切れ悪そうに言う。
やっぱりなんか問題あるやつだったのかアレ。
「後で話すって言ったのお前じゃん。なんで?」
「あの場ではそう言うしかなかったんだ。先生も居たし。…………あのやり方は、親が幼い子供に魔力の感覚を教える方法なんだけど、それ以外だと別の意味になるというか、その……番いくらいしかしないらしい。番い以外の他者の魔力を受け入れるっていうのは反発が酷いんだ。あの時は本当に水の一滴レベルの量しか流していないから大丈夫だと……大丈夫、だったよな?」
心配したような、気まずそうな顔。
うん。
「そういうことは先に言え?」
そりゃ佐々も聞いてくるわ。
神門先生もまさかとは、とか言ってくるわ!
「具象化したものはみんなに見えていたようだし、それとは違うんだよな?」
「だと思う。俺が見えてたのは魔力そのものの色じゃないか?」
「そうか……。なんで瑞月だけにそれが視えたんだろう」
む、と眉間に皺を寄せて言う。
俺が目立った一番の理由ってこれだもんな。
でも俺にも分かんねーわ流石に。なんでだろ。
「それって水晶玉を通した場合だけなのか?」
「多分?だってお前が寄ってくる連中に魔力で威嚇してたの、色は見えなかったし」
「えっ」
「えっ?」
いや何その反応。まさかの無自覚か?
マジで言ってるのかの意を込めてジッと凝視してみたら、そっと視線を外された。
どうやら、マジらしい。
「僕、そんなことをしていたのか……?」
「してたぞ。神門センセとの言い合いの時もしてた」
「そう……なのか。無自覚にやらかしてたんだな、僕」
どことなく気まずそうに口元を隠し、柊夜。
無自覚だったんならそうなるのも仕方ない、か?仕方ないのか?
…………どういう環境で過ごしてたら威嚇に魔力が乗るなんて状態になるんだろう。
魔力持ちの家族がいる状況なら無自覚なんてありえないし、そこに小・中学校に通っていない理由があるなら後天発現とは言わないし、そもそもこの学園に入れられてそう。
つまり……、まるで、そう。
小・中学校の間自分が魔力持ちと知らず、魔力というものを知らないまま家族と離れて暮らしていた、みたいな。
「…………うん。もう何度もやらかしているようだし、このままでいいよな」
「…………。いーんじゃね?今更止めるのもなんだろうし」
「そうだよな」
苦笑い。
その表情に悲壮感はない――――今までもそうだ。
仮に俺が思い付いてしまったような酷い過去が柊夜にあったとして。
いつ家族に会えたのかは分からないにしろ、そんなに時間は経っていない気がする。中学にも通っていないというのだから。
そんな短期間で普通に見えるくらいに持ち直すなんて無理、だよな?
だからきっと、俺の考え過ぎた。
考え過ぎであってほしい。
…………本人、闇属性だけど。
俺的にはもう答えって感じだけど。
こうして考えると、柊夜も結構謎なとこあるんだよな……。
「次はクラスメイトに対する対応だけど」
「佐々と伊坂、大野と渡部は『友人』として対応するつもり。対比に丁度いいし。その他はあくまでもクラスメイトで、例の連中は情報は収集するけど基本スルー」
「それが無難か」
「というか現状じゃこれしかなくね?」
「そうだな。今後どう変わっていくかは要注意、だな」
入学してまだ2日目だからな。
現実的に考えてこの短期間で見極めができるわけがない。
となると恩を売った相手で周囲を固めるのが無難。クラス内に面倒なのが居ることだし。
「で、武器かぁ。刃のある武器、なんて腐るほどあるぞ」
「あるなぁ。打撃武器はそこそこか?」
「極論打撃になるなら本も打撃武器だぜ?…………あ」
教科書と資料をぱらぱら捲りながら見ていると。
資料の方に、日本刀が載っていた。
少なくとも存在はしているようだ。作り手は途絶えているようだけど。
「何か気になる武器でもあったのか?」
「ん?ああ、これ。日本刀ってどうなんだろうな~って」
「日本刀、かぁ。この書き方だとなんとなくロマン武器っぽいな」
「分かるー、見た目の割に両手で持たないと重いとか切れ味はいいけど刃毀れしやすいとか固い敵には向かないとか。それでも技量さえあれば標的を一刀両断にすらできる、とか完全に扱いずらい玄人向け武器って感じ」
存在は確認できても、そう簡単に手に入る物じゃない、か。
作り手がもう居ないならどっかで独占とかしてそう。
しっかし武器の作り手が途絶えるって、この世界的にやばいやつでは?
「あ。瑞月ほら、これ」
「んー?――――魔物は低確率で武具や防具、特殊アイテムを落とすことがあり、一定の法則があるとされる。どの魔物が何を落とすかは基本的に公開されているが秘匿されている物も多数存在する――――へえ、便利なことで。それで作り手が途絶えたのかも。…………って、ありがたいけど、なんで?」
「欲しいんだろ?公開されているようだし早い内に調べてみよう」
なんてことないように、言う。
いやうん欲しかったって言うかできるなら使ってみたいな、とは思っていたけど。他よりは惹かれてたけど。
それに気付いて、わざわざ調べたわけ?
…………。
今の、タイミングなら。
聞いてみても不自然ではない?
そう思って口を開こうとし――――、
「初期の武器は与えられるにしろ次を考えないといけないはずだ。ただみんな武器はアバウトに申請しているし、次はどうしたらいいのか分からないだろうから、敵から得られるなら無駄も無いよな」
「あー、そーね」
誰のためってわけではなくちゃんと考えただけだったようだ。
これは完全に自意識過剰。めちゃくちゃ恥ずかしいやつ。
言わなくて良かったー……。
そう、柊夜に気付かれないようこっそりと、小さく息を吐く。
「ん?」
目敏く気付くのやめろし。
つかよく気付いたな。
「いや……、最後は神門先生だけどさ。これも現状どうしようもなくね?本人の立ち位置もまだ謎だし。……伊坂はなんか知ってそうな感じするけど、あれじゃ話してはくれないだろ」
「伊坂が机を焼いた時の反応か。何か変だったもんな。すぐに取り繕ってたけど」
その前の反応の所為で何かありますってバレバレだけどな。
多分本人も誤魔化せてるとは思ってない。触れるなってことだろう。
「現状は油断し過ぎず行き当たりばったりでいくしかないよ。まだ序の口だろうし。くそ濃かったし疲れたけど」
「はは。うん。じゃあ今日はもう話しておくことはないってことでいいか?」
「そうかも?…………あ、いや一個あったわ。水晶玉に魔力を流す時のアレ、後で話すって言ってたよな?」
「あ~……、忘れてくれてても、良かったんだけど」
どこか歯切れ悪そうに言う。
やっぱりなんか問題あるやつだったのかアレ。
「後で話すって言ったのお前じゃん。なんで?」
「あの場ではそう言うしかなかったんだ。先生も居たし。…………あのやり方は、親が幼い子供に魔力の感覚を教える方法なんだけど、それ以外だと別の意味になるというか、その……番いくらいしかしないらしい。番い以外の他者の魔力を受け入れるっていうのは反発が酷いんだ。あの時は本当に水の一滴レベルの量しか流していないから大丈夫だと……大丈夫、だったよな?」
心配したような、気まずそうな顔。
うん。
「そういうことは先に言え?」
そりゃ佐々も聞いてくるわ。
神門先生もまさかとは、とか言ってくるわ!
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