星屑の砂時計

一色ほのか

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25 1日の反省

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 長い長い1日が終わり、寮の部屋に戻ってきた。
 め……っちゃくちゃ、疲れた。
 
 朝は寮の時点で人目を避けたのにジロジロ見られ、教室に着いてからは神門先生からの無茶振り。
 水晶玉に魔力を流すのから始まって、変な声が聞こえること、特殊属性の判明、普通なら見えないものが見えるって判明、佐々の介入、番いの話、ちょっとした自覚、武器適性について、伊坂の介入、魔力の具象化について、大野を始め5人の介入、全員の具象化の成功。それに伴う残り6人のクラスメイトの擦り寄り。
 最後のに関しては態度の悪くない2人はアドバイスしたけど、残り4人は態度があんまりにも酷くてまず先に小崎と宮藤がキレて追い払い、それでも寄ってくるのを全員で拒絶して完全な冷戦状態になった。
 最終的に神門先生が間に入り両成敗となったけど溝が大きいと判断し、席替えまで行われることに。俺ら出入り口側、あっち窓際って感じで。席は適当に調整しろって言われて、連中と隣でも我慢できるって奴がなってくれた。 
 佐々と伊坂が言うに連中の態度は内部生並みらしい。そういう環境で育ったんだろう、と。
 例の津川がそっち側だから、大野と渡部の主張が正しそう。クソ面倒な予感がする。
 距離を取れれば一番いいけど同じクラスだからな~~~~。
 


「観月。準備はできたけどもう食べるか?まだ早い時間だけど」
「ん?って、言えば手伝ったのに」
 
 呼ばれて、ベッドから起き上がる。
 見れば床に設置してあるローテーブルの上に、ペットボトルと買ってきていた弁当が準備されていた。
 
「勝手にしただけだから気にしないでくれ」
「そーは言っても……、次はちゃんと言えよ、あと食べる」
「ああ、分かった」
 
 笑う。
 ……なんでこいつこう、俺にだけめちゃくちゃ甘いんだろうな。
 温度差が本当に激しい。例の4人に対してとか本当に冷たいとかいうレベルじゃなかったし。あいつらも柊夜には一回しか話し掛けなかった。あと柊夜に阻まれて俺にも。自分で追い払う前に追い払われてた。
 突っ込みどころしかない。
 
「夕飯、弁当で済ませられそうで良かったな」
「それはなー。学食で作ってるやつだから栄養とか気にしなくて良さそうだし。ま、ずっとそうしてたら周りにどう見られるか分かんねーけど」
「変な絡まれ方をしないと確信出来たら学食に行ってもいいんだけど、現段階では不安しかない。今日に限ってはCクラスだけ1日特別授業でそれをネタに寄ってきそうだったし」
「ほんとそれ」
 
 実際、学食に行ったら声を掛けてきた奴いたし。
 と言っても、話し掛けられたのは伊坂だけど。
 最初は学食で食べるか―、って女子2人除いた7人で行動してたんだよ。数が居れば少しはマシだろって。
 それでも話し掛けてくる奴はいたし、めちゃくちゃ嫌味臭いし、伊坂も刺々しいしとどう処理したものか悩んでたところ大野が弁当買えるぞー、と。空気読まずに。
 それに伊坂がすかさず反応、弁当買って学食をさっさと後にすることになったわけだ。
 声を掛けてきた奴はガン無視。
 ちなみに俺と柊夜と伊坂は翌朝分も買った。部屋に備え付けの電子レンジと冷蔵庫あるし。朝から絡まれたくないもんな。
 しっかし、部屋にトイレと小さいとはいえバスルームもあるし、ここの学生寮、2人部屋とはいえ凄いよな。それともこんなもんなんだろうか。分からん。
 
「明日の3クラス合同の授業で実力を示せれば、なんて神門先生は言っていたが……どう思う?」
「様子見になるか引き込もうと寄ってくるかの二択」
「その可能性の方が高いよな。特に後者。Cクラスに期待されているものがアレじゃあ」
「あ~……」
 
 例のアレ、ね。
 魔力持ちとして魔力持ちを~、っていう……。
 結局どうやってもCクラスが浮いてるし注目されるのは変わりないって感じか。
 
「もうなるようになれ、だろ。周りの反応なんてその時じゃないと分かんないんだしさ。俺らは他の連中と違って一人じゃないんだし」
「そうだな。僕達にはお互いがいるんだから、他はどうでもいい」
 
 そう、目を細めて笑う柊夜。
 いやそれはそれでどうかと思う。
 というかまたか。またなのか。
 その、俺を優先して他は躊躇なく切り捨てるの。
 今日一日考えてたけど、それってどうなんだ?
 なんていうか。友達に対する態度としては行き過ぎてる……よな?いくら偽装のことがあっても。
 
 それを聞こうと口を開こうとして、
 
「食べ終わったみたいだから、片付けて今日の反省でもしようか」
 
 その言葉に口を閉ざす。
 教室で言ってたあれかー……。

 これは避けて通れないと分かっている。
 分かってるけど何言われるか分からなくて怖い。

 思いながら、空の弁当容器を片付けてローテーブルに戻る。
 
「とりあえず、瑞月は目立ち過ぎた」
「半分は俺の所為じゃねーし」
「半分は自分の所為って自覚あるんじゃないか」
「それはまあ……うん」
 
 わざと神門先生に無茶振りを言ったりしたし。最後らへんは開き直ってたし。
 例の4人はこっちの中心は俺って思ってそう。
 明日どんな風に話が広がってるだろうな~~~~。
 
「でもさ、これ、そもそも目立つなって無理じゃね?」
「開き直りたくなる気持ちは分かるし目立たないのは不可能だと僕も分かったけど、せめて分散させるようにできないか?現状一番悪目立ちしているのは瑞月だと思うぞ」
「うっ……、やっぱりそう思う?」
「思う。先生からありえないって言われた無属性のことも、他人の魔力の色が視えることも。佐々と伊坂以上に目立ってるだろ」
 
 うぐ。言われた。
 やっぱり2人より目立つか。分かってはいたけど。
 その2つはあまりにも大きい。けどさぁ。
 
「そこは俺別に悪くない」
「まあ、そうだろうけど。変なのに目を付けられないように抑えてほしい」
「…………ん、分かった」
 
 これは、純粋な心配。だと思う。

 となると教室での分かりやすくキレてみせたりした態度はパフォーマンス、だったのかな。
 さっきのは、どうだろ。割と本気っぽく聞こえたけど。

 …………本当の番いなら分かる、けどさ。
 俺達はあくまでも、偽装でただの友達だ。
 
「あのさ……、俺ちょっと、話したいことあるんだけど」
「うん?ああ、僕の方は大体言いたいことは言ったし。どうかしたのか?」
 
 だから、そこらへんのスタンスを一致させておいた方がいい。
 じゃないと絶対にどこかで齟齬が生まれる。
 この偽装は、絶対じゃない。神門先生も言っていた。
 いい加減、藪蛇が怖い、で避けてちゃ駄目だよなぁ。


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