星屑の砂時計

一色ほのか

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24 利用し、利用され

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 昼休みが終わり、5限目に入った。
 今現在、俺らの周りには更に3人・・増えている。

 昼休みの間に色が不安だから見てほしい、と来たのが1人。具象化のヒントが欲しい、と来たのが2人。
 誰なのか分かりやすく言うと水晶玉に魔力を流せなかった4人の内の3人だ。
 
 聞いたところ全員魔力持ちの家系で、中学の途中で発現or発覚。
 大野達とほぼ同じパターンだけど、違いは家で碌な目に遭っていないところ。
 なんていうか……ネグレクトはいい方、って感じの虐待を受けてたのもいて、家族や内部生に対して悪感情しかないらしい。
 こっち2人は内部生だけど?って聞いたら、自分達と似たような状態みたいだし、とのこと。
 ただ、『クラスメイト』としては利用し利用されるのはOKだけどそれ以外は積極的に関わる気はないそうだ。自身もそこまで信用できないし、俺らも信用できないだろうから。
 
 よく分かってるじゃん。少なくとも、大野と渡部よりは。
 まあこの2人は内情をほぼほぼ理解してないっぽいからなー。
 
 まあ、というわけで。
 校内では協力しよう、ってなったってわけ。
 
 色を聞いてきたのは女子で鈴木すずき杏樹あんじゅ、具象化を聞いてきたのは両方男子で小崎おざきれい宮藤くどう晃彦あきひこ
 これで15人中9人になった。半数以上だ。
 全部が味方、とは思ってないけどね。
 俺が味方だと思っているのは柊夜だけだし。
 


「とりあえずー、それぞれの主属性を挙げる。俺が無属性。柊夜が闇属性。佐々が地属性。伊坂が火属性。大野が火属性。渡部が風属性。鈴木が水属性。小崎が地属性。宮藤が水属性。で、おっけ?」
 
 ぐるりと周囲を見回す。
 それぞれが肯定の反応をしたのを確認してから、話を進める。
 
「俺ら4人は具象化に成功してるから置いておいて。5人は手応えすらない感じ?」
「あ、ぼくできるよ」
 
 片手を上げて、渡部が言う。
 え。と零したのは誰だったか。
 そんなこと気にも留めず、渡部はなんてことないように手の平の上で風を起こして見せた。
 お、おう。こいつ、んなあっさりと。
 大野と柊夜以外ガチ目に引いてないか。
 
「想像力が大事って言ってたけど本当にその通りだったよ、というか科学的に風が起きる条件を知っていてあと自然の風を感じたことがあるならこうじゃないかって大体想像がつくからできると思うしむしろできない場合は属性が違うことを疑った方がいい」
「じゃあ火は?」
「一度でも火で火傷したことがあれば簡単だと思うその代わり火傷する可能性が高いけど。ぼくなら何か火種になる物を実際に用意してそれを燃やそうとするかなだって何もないところに火を出すって想像ができないでしょう?何もなくできる人はそれができる人をずっと身近で見ていてそれができることだって分かっている人だと思うよ」
「お前どこで息継ぎしてんの?」
「肺活量には自信がある」
 
 聞いてきた大野に胸を張って言う渡部。
 こいつ、予想以上にはっきり言う奴だな。面倒事にならなきゃいいけど。
 いや別に大野に丸投げでいいと思うからいいけど。
 あと言ってること自体は間違ってないし。
 
「火種、火種……ティッシュでいいか。キャンプでやった感じに火をつけるイメージが一番近いような」
 
 ぶつぶつ言いながらティッシュを千切る大野。
 ここはもう放っておいていいか……なんかできそうだし。
 
「大野と渡部はそのままやってて。鈴木と宮藤が水属性で小崎が地属性だけど、手応えとかある?」
「私はまだ……」
「無いから聞きに来てんだけど」
「ない」
 
 これが普通だよな。
 
「あっ」
「あ、大野君もできたね」
 
 あっちがおかしいんだよなぁ……。

 大野もあっさりできてんじゃん中学3年間でやっとできる、とはなんだったのか。
 大野と渡部は言ってることが本当なら魔力を扱うってこと自体が今日が初めてのはず。
 それで誰にも何も教わらずここまでできたって、さぁ。
 こうなるとやっぱり教え方が悪いとしか思えないんだけど?
 
「とりあえず小崎の地属性は佐々に頼んでいい?」
「ええ、いいわよ」
「柊夜に水属性あるはずだし、鈴木と宮藤と一緒にやろう」
「ああ」
「伊坂は大野と渡部と色々やってみ、同じ属性だし」
「おっけー、発展系やってみよっかなぁ」
 
 属性ごとにそれぞれ別れる。
 被ってたし同じ属性同士の方が分かることもあるだろ。
 
「水は全員、日常的に触れ合ってるはずだからどういうものかは分かってるよな。無色透明、流れる、掴めない……あとは温度変化とかで特徴は色々」
「多分水蒸気や氷となると別属性が絡むだろうから、単一属性では無理だと思う」
「そうか?そうやって限界を決めてしまうから駄目なんじゃない?想像力が大事なんだろ?」
「それは……、それもそうか」
「とりあえずは魔力を水に変化させるのが優先だから、発展系は後回しとして。んー、3人とも目ぇ閉じて。蛇口を想像してみ?ハンドルは固く閉じられていて動かない。そこに魔力を流して、ハンドルを動かすイメージ。ハンドルが動けば水は出る。だろ?」

 実際によくやるだろう水の出し方を手本として例に出す。
 それが一番確実に全員がイメージしやすいと思ったからだ。
 
 結果。
 
「ぎゃーッ!!!?」
「わ、きゃ……っ」
「瑞月……」
「え、これ俺が悪いやつ?」
 
 一発で成功した。成功は、した。
 ただ水の勢いを蛇口全開レベルで想像したらしい宮藤が大参事を起こして、見事びしょぬれになっている。
 鈴木と柊夜はちょろちょろ流れるってレベルだったんだけどなー。
 
 その後フツーに主犯扱いされた俺が神門先生に怒られ、宮藤は着替えのために寮に戻った。
 理不尽だ。
 
 
 
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