星屑の砂時計

一色ほのか

文字の大きさ
上 下
24 / 35

23 増えた

しおりを挟む
 大野おおの雅之まさゆき渡部わたなべ芹佳せりか
 同じ中学校の出身で、片やサッカー部、片や文芸部で魔力の発現までは何の関わりもなかったそうだ。
 2人共、数代遡っても魔力持ちはおらず、中学2年の健康診断で発覚したという。
 
「そこからはなんていうかこう、腫物扱い?みたいな。サッカー部も辞めさせられたし、友達もなんか親とかに言われたっぽくて離れてった。俺の家族もギクシャクしてるし」
「学校はまあ、同じ。遠巻きにされてる感じ。あと大野君、それ絶対両親どっちかが魔力持ちの家系だと思う。前から言ってるけど……ぼくの家族はすっご~いって感じだもの」
「だからそれはないって。むしろお前ん家が軽過ぎるんだよ」
「それは本当にそう。多分ただの思考停止だけど」
 
 口々に言う二人。
 仲良いな。
 同じ時期に同じ学校で出た同い年の魔力持ちだからか?
 ああでも、聞いた感じ他の生徒からは距離を置かれてたみたいだし、お互いがマトモに話せる唯一の相手だっただけかも。
 
「同じ学校に他に魔力持ちは居なかったのか?」
「居たは居たけど一般家庭じゃなくてそういう家の奴だったっぽい。しかもめちゃくちゃ態度悪いし嫌な目で見てくるから避けてた」
「アレは見下すというか、人として見てない目。関わったら終わりだと思ったよ」
 
 柊夜の問いに2人が答える。
 態度が悪い、嫌な目、見下す、人として見てない。
 全面的にクソだわ。
 そんなやつがこのクラスに居るってことだよな?
 
「どいつ?」
「津川ってやつ」
「見た目はいいよ。見た目だけはね」
「見た目はなー。俺らが避けられてた状況でもあいつの周りには人がいてさ。なんか、庇われてた?感じで。大半は男だったぜ」
「そうだね、分かりやすいくらいでれっでれな男共に囲まれてたよ。というかぼく的にはぼく達が腫物扱いされて遠巻きにされていたのは彼女の所為だと思うんだよね絶対あることないこと吹き込んでたよ彼女。大野君も引き込もうとしていたもの」
「してたかぁ?」
「してたよ」
 
 むすっとした様子で、渡部。
 聞けば聞くほどやばい女だな。極力関わんない方が良さそう。
 …………津川って名字、そもそも嫌な印象しかないし。
 なんせ、葛西に冤罪を仕掛けた女と同じ苗字なんで。
 まさか、はないと思いたい。
 世界は違うとはいえ同じ人間とか……な?
 流石に違うだろ?
 
「で……、どうだろ、俺達」
「正直に言うと津川さんが誘惑できないだろう人達を味方にしたくて。2人は番いで2人は内部生だからグループに入れてもらえるととっても助かるだけど」
「お前な……」
 
 不安そうな大野と、ぶっちゃけた渡部。

 俺としては良い情報を得られたし、今のところ害がなさそうだから別に構わないけど。
 どうする?の意を込めて3人に目配せする。
 
「僕は瑞月と僕の害にならないならひとまずは構わない」
「見極める時間は欲しいけど、いいんじゃないかしら」
「みんながいいならいいよぉ。背後関係は調べるけど」
 
 とのこと。
 つまりは現状反対する気はないってことか。
 じゃあ、いいかな。恩を売る意味でも。
 グループに入れるからと言って深く関わるかは別だし?
 
「おっけ、じゃあ2人も加えるってことで。俺は甘竹瑞月。よろしくー」
「葛西柊夜だ」
「そうなるわよね。佐々叶依よ」
「メリットがないわけじゃないもんねぇ。伊坂・A・陽太だよ。よろ」
「おう!よろしく!」
「よろしく……」
 
 というわけで、人数が6人になった。
 元々15人しかいないクラスで6人も固まれば周りへの牽制になるはず。
 しかもこの全員が今日中に魔力の具象化が出来れば。
 他の9人が出来なければ尚。
 残りの時間でやるのはこの2人への指導だな。
 
 と、なると。
 まず確認すべきは、
 
「2人とも水晶玉見せて。色見るから」
「お、マジで?多分大丈夫だと思うけど頼む!」
「ぼくも間違いはないと思うけど、お願いします」
 
 水晶玉を出してもらい、属性の確認。
 おお、これは……すっげぇ分かりやすい。
 
「大野は赤。火だな。近い色は唐紅?渡部は緑。風だ。これが分かりやすく風!って色なんだな。近い色は鮮緑」
「だよなー」
「甘竹君って和色詳しいんだね。あと分かりにくいよね色。そもそも青+黄で緑なのにそこ3色が属性の判定職ってやばいよ絶対間違ってる人いるっていうかいたしどうにかしようと思わないのかな」
「完全に同意」
「俺みたいな特殊例もあったしねぇ」
 
 本当それ。
 どうにかしようと思わないのか、どうにもできなくて放置なのか諦めたのかとかは分からないけど。
 
「なあ、いい加減に食べてしまわないか?時間、なくなるぞ?」

 あっ。
 
 うん、時間、結構経ってるわ。そこまで不味くはないんだけど。
 後の話は昼休み終わってから。ってことで、昼食となった。
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。 そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!? あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが… 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊 喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者 ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』 ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 Rシーンは※をつけときます。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

父の男

上野たすく
BL
*エブリスタ様にて『重なる』というタイトルで投稿させていただいているお話です。ところどころ、書き直しています。 ~主な登場人物~渋谷蛍(しぶや けい)高校二年生・桜井昭弘(さくらい あきひろ)警察官・三十五歳 【あらすじ】実父だと信じていた男、桜井が父の恋人だと知ってから、蛍はずっと、捨てられる恐怖と戦っていた。ある日、桜井と見知らぬ男の情事を目にし、苛立ちから、自分が桜井を好きだと自覚するのだが、桜井は蛍から離れていく。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...