星屑の砂時計

一色ほのか

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21 青が示す属性

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 喚くだけ喚いた後、伊坂は机に突っ伏して黙り込んでしまった。
 突っ伏す前にハッとしたような顔してたし、取り乱したことが恥ずかしいんだろう。

 属性が家系と違うせいで肩身が狭い思いをしてきた、って言ってるけど……
 
「血筋とか家系で属性ってそんなに大事?」
「大抵は。婚姻に関しても魔力持ち同士なら誰でも、って感じではあるけれど、属性を強化するために同一属性を選ぶ家は多いわ」
「それって強化になってんの?」
「同じ属性が生まれやすい、と言う意味ではなっていると言えるんでしょうね」

 うへぇ。
 やっぱりそういうの、あるんだ。
 となるとやっぱり属性って血筋優先遺伝なのかねぇ?
 


 
 ―――――――― クスクス。
 


 
 ………………………………違うかもしんね。
 
 また声聞こえたんだけど、今のめっちゃ馬鹿にしたよーな笑い声だったんだけど???
 なんか訳知りみたいだしマジでこの声なんなんだ。
 イライラするんだが???
 
「瑞月?どうかしたのか?」
「ん、いや、なんもない……」
 
 様子の変化に気付かれたようで柊夜に声をかけられたが、やっぱりどう答えていいか分からず。誤魔化すように、なんとなく手の中の水晶玉を蛍光灯の光に翳してみる。
 例えばこれがカラーチェンジストーンと言われるアレキサンドライトとかガーネットとかと同じような性質をしていれば、こうすると色が変わったりするんだけど。
 …………うん、そんなことはないな。青緑のまま。

 神門先生の説明ではどう足掻いても青は水属性。緑は風属性。
 可能性があるとしたら、緑が青と黄を足した色だった場合。つまり黄=地属性。
 でも。
 さっきちらっと、子供の頃は絶対に火属性だと言われてた・・・・・・・・・・・・・・・・・・って言ってたな。
 
「伊坂お前さ、なんで小さい頃に絶対火属性って言われてたか分かる?」
「………………同一属性同士って、一緒に居ると威力を上乗せできるんだよ。俺が小さい頃、すっごく懐いてた人が居るんだけど、俺と一緒に居ると普通より火属性の威力が上がってるって、そう……言ってたんだ……」
 
 伊坂が言う。
 最後の方なんてもう、掠れて聞こえないような声で。
 その人が今、伊坂の傍に居ないだろうことが、察せた。

 伊坂の様子から相当懐いてたんだろうな、その人に。
 傍に居られなくなったのは……属性のせいなんだろうか。
 俺には知る由もないことだけども。

 …………とりあえず、そういう理由があって伊坂は火属性だって言われてたんだな。

 つまり、だ。
 威力が上がってる、っていうのがどの程度が分からないからその人の勘違いだったって可能性も十分にあると思うけど……、だとしても、そう勘違いする程度に、何か思う所があったんじゃないか?
 だとしたら、伊坂の正しい属性って……火、じゃね?
 青なら、可能性はゼロじゃない。

 となると次に聞くべきなのはこれか。
 
「お前、どの属性を具象化しようとしてた?」
「風……だってうち、火と風の家系だもん。せめてそっちを使えるようにしなきゃ」
「ほうほう。ならやっぱり……お前、ちょっと火で具象化を試してみろよ」
「はぁ?俺の色見たじゃん。青緑。火の属性なんてないんだよ俺。さっきだって地属性かもって言ったじゃん」
「まあ、そうなんだけど。今まで聞いたことでもしかしたらって思うことがあってさぁ。火はさ、めちゃくちゃ高温になると青くなるんだ」
「えっ」
 
 がばっと顔を上げて、心底驚いた顔で俺を見る伊坂。
 どうやら知らなかったらしい。

 これくらい普通に知ってることじゃないの?理科でガスバーナーとか使ったことない感じ?
 ここ、一体どういう教育してるんだ?高等部の教科書、普通に高等部で使うようなのだったと思うんだけど。
 
「火って酸素を取り込んで燃えるはずだから……とりあえず赤い火が手の平にあるイメージをして、そこに風で空気を送り込むイメージかな。見せれれば一番いいけどないから想像しろ」
「え、え、火があって?風で空気を送り込む?青い、火? わっ!!」

「ぅえっ!?」
「ッ!」
「は!?」
 

 視界が青い、熱い。

 やば、と思った時には、腕を掴まれて横側に引っ張られていた。
 
 椅子と机がガタンと大きく音を立てる。

 
「何事だ!ッ、な……!」

 
 怒鳴り声と共に神門先生が駆け付けてきて、それ・・を見て、呆然としている。
 
 あんぐりと大口を開けている伊坂。
 と、その、目の前の机。
 黒く円状に焼け焦げている。
 
 俺はと言えば柊夜の腕の中で、机に穴開かなくて良かったなぁ、とちょっとズレたことを考えていた。

 現実逃避である。
 




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