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20 色の見分けは難しい
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「で、お前ら今の柊夜のやり方理解できた?」
話を属性の具象化へ戻す。
露骨に話を逸らしたけど、今重要なのはこっちだ。時間もないし。
もうちょっとで昼休みに入るんだよ。昼食挟むと緊張の糸が切れそう。
ちなみに昼食の選択肢は学食か購買の2択。
今日はこの状況じゃ購買だな。時間勿体ないし。
「そう、ね。考え方としては。魔力を直接変化させるというより対価として扱う。それなら、上手く繋げられる」
言って、握り締めた状態の右手を突き出してきた。
その手を開くと、黄緑色の石が一つ。
水晶玉が示した、佐々の魔力の色だ。
「今作った?」
「ええ。どうせだから私の色を見せてやろうかと思って。齟齬はないわよね?」
「ん、俺が視たのと同じ色」
魔力と同じ色の石か。佐々は地属性が強いもんな。
これが全員出来れば、色の事で間違いは起きないだろうに。
「えええ……カナエちゃんもあっさりできちゃってんじゃん。今まではなんだったの」
「風属性なんて無いも等しいのに風属性を具象化しようとしてたからでしょ」
「確かにその色じゃ、ねぇ。むしろなんでそれで風属性だなんて思っちゃったのやら?」
「周囲からの圧力」
「あ~……」
内部生は本当に生きにくそうだな。
内部生っていうか魔力持ちの家系だろうけど。
とりあえず俺もやってみよっと。
しかし無属性。無属性、ねぇ?
属性を色で表すこの世界だと、白、色なしとなればやっぱり属性がないってのが正しい解釈だよな?
元の世界だと『無という事象を司る』みたいな解釈もあったけど。属性では判断しきれないもの全般とか。属性を含まない物理=無属性ってのもあったっけ。
流石に単純に属性が決まってないだけ、ってことはないだろ。流石に。
…………属性ってどう決まるんだろうな?
血筋が物を言う、とは言うけど。
そういやウチってなんの属性の家系だったんだろう。
いや、正直に言うとどうでもいいんだけど。家族仲悪そうだったし。俺の家族でもないんだし。
だからって放置もできないんだよな、家族であることは変わりないから。
後回しで、いっかな。
ズレた思考を戻そう。
無。属性がないこと。何もないこと。
それでも存在を肯定されている。確かにそこにある何か。
…………それってつまり、魔力そのもののことじゃ?
それを具象化する。
うーん、最初に戻ったな?
魔力。染まってないもの。白、か、透明。…………ん?
ならアレじゃね?
ぱちん、と指を鳴らす。
広がった指の上にとん、と落ちたのは、サイズこそ小さいものの、属性を見るあの水晶玉と同じ見た目の物。
「瑞月もできたんだな。でも……どうしてこれなんだ?」
不思議そうに、柊夜が聞いてくる。
「無属性ってなんだろうなーって考えててさぁ。要は、属性がない?透明?って連想して、そういやこれって属性を見る物であとから属性を入れるんだから、無属性だよなーって」
「ああ、確かに。そう言われてみれば。……僕も似たようなものを作れるかな」
「魔力を固める……んー、柊夜なら血を凝固させるイメージでいけそう」
「ん。…………難しいな。砂みたいにしかならない」
「黒い砂で溢れるから止めとけ」
俺みたいに魔力を物質化した物を作ろうとして砂を量産している柊夜をとりあえず止める。
魔力の無駄遣いになりそうだし。
「まだできてない俺に少しは気を遣う気ないの???」
おっと。
「俺らの見ててなんかこう、って分かんない?」
「分かるわけないじゃん。ミズキくんとシュウヤくんは特殊過ぎ。カナエちゃんは正しい属性が判明したから簡単だったろうけどさぁ」
「そうね、こっちも割と簡単にできたわ」
「む……、先を越された」
むすっとする柊夜。
佐々が話に割り込むと同時に見せてきたのは、佐々の魔力と同じ色の小さな水晶玉。
うわぁ。どうなってんのか分かんないけど中で黄と青の魔力が混ざったり分離したりしてる……綺麗だ。
そしてやっぱり緑は糸レベルしかない。
「ちなみにどういうイメージ?」
「貴方と同じであの水晶よ。属性を反映するもの、って分かりやすいでしょ」
ちらり、と伊坂に視線を一度投げながら言う。
伊坂は気付いていない。
今の多分佐々なりのヒントだったと思うんだけど。
「無理~!!なんでキミらそう簡単にできるの?!色は間違ってないんでしょ?青緑!水と風!なのに、なんで!?」
「ん~、ちょっと水晶玉もう一回視せて」
「ゔ~……」
唸りながら水晶玉を俺に差し出す。
最初に見せられた時と同じ、透明感のある青緑。
受け取ったそれを、色んな角度から視てみる。
色が変わる、なんてことはない。
佐々が今作った水晶玉みたいな感じに視えれば、分かりやすいのにな。
「とりあえずさぁ、柊夜と佐々、これ見て。この色ってどう見ても青緑だよな?」
教科書の中で、伊坂の水晶玉に近い色のものを探し出して示す。
「そうね」
「青が強い青緑、だな」
「うん。だから水は確定として、緑単体か青に黄色を混ぜた色か、だと思う。ぶっちゃけ本人が水と風って言ってるから、風じゃなくて地かも」
「ええええ?!」
「そもそも緑って青と黄を混ぜた色じゃん。分かりにくいにも程があるっての」
「そんなの知らないし、今更地属性とか言われても困るよ!大体うちの家系、火と風で、小さい頃は絶対火だって言われてたのに実際は水と風だったせいで肩身狭いのに両方違う属性なんてッ!」
「知らんわンなこと」
ここにも家系に縛られたヤツが居たわ……。
可哀想だとは思うけど外野にはどうしようもできないやつ。
話を属性の具象化へ戻す。
露骨に話を逸らしたけど、今重要なのはこっちだ。時間もないし。
もうちょっとで昼休みに入るんだよ。昼食挟むと緊張の糸が切れそう。
ちなみに昼食の選択肢は学食か購買の2択。
今日はこの状況じゃ購買だな。時間勿体ないし。
「そう、ね。考え方としては。魔力を直接変化させるというより対価として扱う。それなら、上手く繋げられる」
言って、握り締めた状態の右手を突き出してきた。
その手を開くと、黄緑色の石が一つ。
水晶玉が示した、佐々の魔力の色だ。
「今作った?」
「ええ。どうせだから私の色を見せてやろうかと思って。齟齬はないわよね?」
「ん、俺が視たのと同じ色」
魔力と同じ色の石か。佐々は地属性が強いもんな。
これが全員出来れば、色の事で間違いは起きないだろうに。
「えええ……カナエちゃんもあっさりできちゃってんじゃん。今まではなんだったの」
「風属性なんて無いも等しいのに風属性を具象化しようとしてたからでしょ」
「確かにその色じゃ、ねぇ。むしろなんでそれで風属性だなんて思っちゃったのやら?」
「周囲からの圧力」
「あ~……」
内部生は本当に生きにくそうだな。
内部生っていうか魔力持ちの家系だろうけど。
とりあえず俺もやってみよっと。
しかし無属性。無属性、ねぇ?
属性を色で表すこの世界だと、白、色なしとなればやっぱり属性がないってのが正しい解釈だよな?
元の世界だと『無という事象を司る』みたいな解釈もあったけど。属性では判断しきれないもの全般とか。属性を含まない物理=無属性ってのもあったっけ。
流石に単純に属性が決まってないだけ、ってことはないだろ。流石に。
…………属性ってどう決まるんだろうな?
血筋が物を言う、とは言うけど。
そういやウチってなんの属性の家系だったんだろう。
いや、正直に言うとどうでもいいんだけど。家族仲悪そうだったし。俺の家族でもないんだし。
だからって放置もできないんだよな、家族であることは変わりないから。
後回しで、いっかな。
ズレた思考を戻そう。
無。属性がないこと。何もないこと。
それでも存在を肯定されている。確かにそこにある何か。
…………それってつまり、魔力そのもののことじゃ?
それを具象化する。
うーん、最初に戻ったな?
魔力。染まってないもの。白、か、透明。…………ん?
ならアレじゃね?
ぱちん、と指を鳴らす。
広がった指の上にとん、と落ちたのは、サイズこそ小さいものの、属性を見るあの水晶玉と同じ見た目の物。
「瑞月もできたんだな。でも……どうしてこれなんだ?」
不思議そうに、柊夜が聞いてくる。
「無属性ってなんだろうなーって考えててさぁ。要は、属性がない?透明?って連想して、そういやこれって属性を見る物であとから属性を入れるんだから、無属性だよなーって」
「ああ、確かに。そう言われてみれば。……僕も似たようなものを作れるかな」
「魔力を固める……んー、柊夜なら血を凝固させるイメージでいけそう」
「ん。…………難しいな。砂みたいにしかならない」
「黒い砂で溢れるから止めとけ」
俺みたいに魔力を物質化した物を作ろうとして砂を量産している柊夜をとりあえず止める。
魔力の無駄遣いになりそうだし。
「まだできてない俺に少しは気を遣う気ないの???」
おっと。
「俺らの見ててなんかこう、って分かんない?」
「分かるわけないじゃん。ミズキくんとシュウヤくんは特殊過ぎ。カナエちゃんは正しい属性が判明したから簡単だったろうけどさぁ」
「そうね、こっちも割と簡単にできたわ」
「む……、先を越された」
むすっとする柊夜。
佐々が話に割り込むと同時に見せてきたのは、佐々の魔力と同じ色の小さな水晶玉。
うわぁ。どうなってんのか分かんないけど中で黄と青の魔力が混ざったり分離したりしてる……綺麗だ。
そしてやっぱり緑は糸レベルしかない。
「ちなみにどういうイメージ?」
「貴方と同じであの水晶よ。属性を反映するもの、って分かりやすいでしょ」
ちらり、と伊坂に視線を一度投げながら言う。
伊坂は気付いていない。
今の多分佐々なりのヒントだったと思うんだけど。
「無理~!!なんでキミらそう簡単にできるの?!色は間違ってないんでしょ?青緑!水と風!なのに、なんで!?」
「ん~、ちょっと水晶玉もう一回視せて」
「ゔ~……」
唸りながら水晶玉を俺に差し出す。
最初に見せられた時と同じ、透明感のある青緑。
受け取ったそれを、色んな角度から視てみる。
色が変わる、なんてことはない。
佐々が今作った水晶玉みたいな感じに視えれば、分かりやすいのにな。
「とりあえずさぁ、柊夜と佐々、これ見て。この色ってどう見ても青緑だよな?」
教科書の中で、伊坂の水晶玉に近い色のものを探し出して示す。
「そうね」
「青が強い青緑、だな」
「うん。だから水は確定として、緑単体か青に黄色を混ぜた色か、だと思う。ぶっちゃけ本人が水と風って言ってるから、風じゃなくて地かも」
「ええええ?!」
「そもそも緑って青と黄を混ぜた色じゃん。分かりにくいにも程があるっての」
「そんなの知らないし、今更地属性とか言われても困るよ!大体うちの家系、火と風で、小さい頃は絶対火だって言われてたのに実際は水と風だったせいで肩身狭いのに両方違う属性なんてッ!」
「知らんわンなこと」
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