星屑の砂時計

一色ほのか

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19 属性の具象化

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「それぞれ、自分の属性は理解したな。では次だが、どんなやり方でもいい。魔力を属性由来のものに変換し具象化させる。これができれば一人前として扱われる」
「さらっと言ってるけどこれ、中等部の3年間研鑽してやっとできる・・・・・・・・・・・・・・・・・ってレベルの難易度だからねぇ?まあ、魔力の扱い方としては基礎っていうか、スタートラインなんだけど」
 
 神門先生の言葉に付け足すように言う伊坂。
 まぁた、無茶振りのようだ。
 本来3年費やすことを、授業が終わるまで――――大体3時間でやれって言ってるんだから。
 
「そうだな。それが出来なければ今後は話にならない、ということだ。そして今このクラスに居る者は全員これができない。分かりやすく言ってそれができなかったから内部生という立場でCクラスになった、とも言う」
 
 で、これが足切りのラインなわけか。
 佐々も、伊坂もこれができないからここCクラスに居る。
 佐々に関しては属性自体間違ってたから分かるけど。
 
「ただ、逆に言えば今日が終わるまでにこれが出来れば外部生達は優秀と言えなくもない。期待はしていないが今後の学園生活を平穏に過ごしたければ成し遂げろ」

 うーん?
 確かにそれが出来たなら優秀、になるんだろうけど。
 平穏ってか、悪目立ちするんじゃ?だって外部生と足切りされた内部生のクラスだろ?
 俺としては俺の特異性が目立たなくなりそうで助かるけど。
 少なくとも1/3くらい達成できないかな?
 まあその前に自分か……。柊夜と佐々も。ついでに伊坂。
 
 

「とりあえず。佐々と伊坂は今までどんな感じでやってきたんだ?」
 
 残り時間は教室内では自由にしていいってことで、佐々を呼んでまず内部生2人に話を聞く。
 これが足切りラインって分かってたはずだし、色々やってきているはず。
 
「私は武器に属性を纏わせるやり方をしようとしていたわ。一般的な手の平の上で風を起こす、っていうやり方は出来なかったから。だから私は致命的に魔力が少ないと思ってた」
「基本的に皆、集中しやすい手の平の上に属性を現すもの――――火なら火、水なら水、風なら風、地なら石とか土って感じで出してたんだよ。周りからもそうしろって教えられるし。そもそも武器に魔力を纏わせるって高等技術だから、カナエちゃんってバカだな~って思ってた」
「アンタには言われたくないわよっ!アンタだってできなかったんだから!」
「だろうねぇ、ほんと」
 
 飄々とのたまう伊坂に、佐々はちょっとキレかけ。
 佐々は平静を保とうとしてるけど伊坂が煽ってるからなー。
 しかもこれ、わざとだろ。
 何したいんだこいつ。
 というかこの2人、中等部同じクラスだったのか?
 だよな、じゃないとお互いの様子なんて分からないよな。
 
「四属性はそれでいいだろうけど、僕と瑞月は何を具象化したらいいんだろうか」
「それな。闇と無って何?一応、柊夜は火と水もあるっぽいけど」
「うーん。瑞月はそういうけど。本当にその2つが僕にあるのかも疑問なんだが……、とりあえず試してみよう」
 
 そう言って柊夜が取り出してきたのは、カッターナイフ。
 刃を出した、カッターナイフ。
 それを、止める間もなく人差し指の先に滑らせる。躊躇は一切なし。

 は???
 
「おまっ?!」
「しー。声が大きい」
 
 静かに、と人差し指を口元に持っていく。
 その指先から血が流れてるんだけど!?
 
「血液から連想しているんだから、実際に流した方がイメージしやすいと思ったんだ。ええと、血液を魔力として。或いは――対価として。属性を具現させるんだよな?」
 
 指先から、血が零れる。
 それはそのまま落ちて、机を汚す。はずが。
 落ちる寸前で黒い火が、まるで線香花火のように燃え尽きて消えた。
 …………。
 えっ。
 
「うそ……」
「あっさり成功されて俺ガチ目に腹立ってるんだけど」
 
 佐々と伊坂内部生2人が言う。

 今の、成功?なの?
 血が火になったんだから、成功?
 2人の反応からしてそうなんだろうけど……。
 よく分からなくて困惑気味に柊夜を見ていると、徐に血の流れる人差し指を立てたと思ったら、その指先に黒い火を灯してみせた。

「…………案外簡単だな」 
 
 なんでもないように、柊夜。
 その声に達成感や成功に対する喜びみたいな感情はなく、酷く平坦だ。
 本当に、どうでもいいみたいに。
 
「うん。瑞月が言った通り、僕には火の属性もあるみたいだ」
 
 反転、俺を見て嬉しそうに笑う柊夜。

 え、ええ……。何その変わり身の早さ。
 魔力の具象化はどうでもよくて、俺の言ったことが正しかったことの方が重要なの?
 本当に、俺が第一、って行動ばっかり……。
 佐々と伊坂なんて完全無視だし。
 
「こいつマジで腹立つんだけど」
「お前が腹を立てていようと僕には関係ない」
「うぇ、最悪。ミズキくん、こんなんが番いでいいのぉ?」
「悪かったらなってないんだよなー」
 
 偽装だし時間がなくてそれ以外に選択肢がなかっただけだけどな!

 正直に早まったと思ってるし後悔してないとは言えない。
 でも、相手が柊夜じゃなければ多分恐らくきっと偽装だろうが受け入れてない。
 まあ騙し討ち感あったけど。了承してからのアレだからな!
 自覚してやってたかは分かんねーけど!
 今は寮に帰ってからが怖い。


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