星屑の砂時計

一色ほのか

文字の大きさ
上 下
14 / 35

13 危機感と武器適性

しおりを挟む
「番い、という関係については、教科書に載っている。各自内容を確認するように。さてそれが何故Cクラスで重要かというと、番い関係の者達には手を出してはならないという不文律・・・が存在するからだ」
「と言う割に教科書には『基本的に』と記載されていますが」
「しでかした場合、身分関係なく役目行き・・・・になる。要は、罠だ」
「…………察しはしましたが、気に入りません」
「そこは互いでフォローし合え。他の者達もそうしてきた」
 
 ぐちゃぐちゃになった思考を払うように頭を振っている間にも、内容を理解している神門先生と柊夜が話を進めている。
 教科書にはちょっかい出されそうなこと書かれてたけど、実際はそうなってたわけね。
 しかも、不文律ときた。思った以上に番いって関係は強いらしい。
 となるとやっぱりちょっと偽装について考えた方がいいな。
 そこまで影響力があるなら、偽装に関して絶対なんかある。
 
 そこまで考えて、柊夜に隠れながら、視線だけ教室内を見回す。
 この話を聞いてどういう反応をしているのか気になったからだ。
 
 他のクラスメイト達はと言うと、ほとんどが真剣に教科書を捲り、一部はどうでも良さげにしている。
 外部生と内部生分かりやすいな。
 
「全員内容は理解したとして話を進める。つまりそういった方面の面倒事・・・・・・・・・・・に巻き込まれる前に番いになっておけば回避できる可能性が上がる、ということだ。ただまあ、この方法も万能ではないと覚えておけ」
 
 だよね。
 多分、知れば考えることはみんな同じだってことだ。
 番いになってそれを周知しておけば、そういう絡まれ方が減るかもしれない、ってね。
 昨日の神門先生の説明を正しく理解してりゃ分かる。
 
「…………だって」
「どんなことにも絶対はないだろ。僕達はいつも通りいればいい」
 
 それはそうだけど。
 堂々としてれば、バレる確率は下がる。
 それでも万能じゃないって神門先生が言うくらいだから、やっぱりさぁ。偽装しててもなんらかの方法でバレる、ってことじゃないの?
 番いの前提条件は『性交渉をしている』ことだ。
 その真偽をハッキリさせる方法があるとしたら?
 最悪の事態は考えておかないと駄目だ。
 …………。
 回避するには、真実にする。しかないんだよ、な。はは。
 流石に。あっちでのアレは、カウントされないだろうし。されても困る。マジでどう説明すんの。
 俺は中身が別世界の人間で、その世界のお前にヤられたことがあります、ってか?
 死にたくなるわ。
 ああでも、この身体はこの世界の俺のもの、だし。
 それはないよな。うん。きっと。絶対。
 
「この情報を活用するかどうかは各自決めろ。では次、武器適性について調べる。調べるアイテムは属性を調べる水晶玉とは違い貴重品なため一人ずつ前に出てきてこれに触れてもらう」
 
 そう教卓の下から出してきたのは台座付きの直径20センチくらいの水晶玉。
 よく出てくんな水晶玉。
 まさか重要アイテム、全部水晶玉で統一してるとかないよな?
 いやどうでもいいけど。
 
「これに関しては他者も結果が見えるようになっている。よって虚偽申告は不可能だ。内部生については見る必要はないが好きにしろ。では出席番号順に前に出てこい」
 
 その神門先生の言葉に、一番前の席の奴が慌てた様子で立ち上がり、教卓の方へ向かっていく。
 そんな急ぐことか?
 てか、武器特性ってそもそも何?
 
「あ、こら」
「いーじゃん別に。自分の出すのめんどい」
「なら取らないで一緒に見ればいいだろ?」
「あっ」
 
 奪った教科書を奪い返される。
 で、パラパラと教科書を捲って目的のページを見つけ、そこを開いて机に広げた。
 ちゃんと、武器適性に関するページ。
 考えが似てるのか、俺が読まれやすいのか。
 いやでも状況的に考えが被る確率は高いよな。俺らは外部生で知らないことの方が多いんだから。
 うん。
 とりあえず読もう。
 
 
 武器適性とは。
 血筋や魔力属性、魔力量に依存する、最も扱いやすい武器に対する適性のこと。
 ストレートに武器の名前が表示される場合と、斬撃・打撃・刺突・射撃や刃・長柄・暗器・鈍器などの武器を特定しない広範囲を示すものが表示される場合があるらしい。
 ちなみに最も求められてるのは前者。後者よりも成長率がいいから、だと。
 そりゃ一点特化は強いだろうよ。それだけ伸ばせばいいんだし。
 逆に言えばそれ以外に適性がないってことでもあるけど。
 あっちのゲーム的に言えば、装備はできても成長しないって感じかな?
 流石に扱うことすらできないってことはないだろ。ゲームじゃないんだし。
 
「瑞月、次」
「ん?ああ、行ってくる」
 
 大体読み終えたところで俺の番が来た。
 出席番号順なら早いのは当然。
 
 こっちは変なの出ないといいんだけど。
 
「刃、長柄か。まあよくある適性だな。扱いやすい方を選べ」
「複数の時って自分で選ぶんだ」
「そうだ。これも一度申請すると取り消しができない」
「ええ、扱った事も無いのに決めるとか無理じゃん。申請っていつまでやんの?」
「Cクラスは今日だ。ふむ、それも一理あるとして特殊武器以外は持ってきてやろう」
「マジ?ありがとセンセー♪」

 用意してくれるらしい。
 よっし、言ってみるもんだな。
 
 でも普通に考えてそうだろ?触ったこともないもんを勘と勢いで選べるかよ。
 これ魔力属性と同じで、絶対間違ってる奴いる。
 刃を例にして言えば、刃の付いた武器がどんだけある?って話だ。言っちゃえばハサミだって刃だし。
 武器じゃない?ハサミも種類によっちゃ簡単に人殺せるぞ。
 
「瑞月?」
「あった方が助かるだろ?」
「そうだけど、…………はぁ」
 
 でっけー溜め息だなオイ。
 言いたいことは、分かるけどね。これ以上目立つ真似はしないでほしい、って。
 でも今回のは神門先生がこっち寄り、ってのをはっきりと見せるためでもあった。
 我儘をあっさり聞いてもらえる程度のお気に入りとでも誤解してくれりゃ楽。特に内部生。
 神門先生ってそれなりの地位っぽいし?
 ま、それを理由にしかけてくるのもいそうだから、多用はできないけどね。
 使えるものは使っておかないと。
 こっちも確実に、利用されるだろうし。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真面目な部下に開発されました

佐久間たけのこ
BL
社会人BL、年下攻め。甘め。完結までは毎日更新。 ※お仕事の描写など、厳密には正しくない箇所もございます。フィクションとしてお楽しみいただける方のみ読まれることをお勧めします。 救急隊で働く高槻隼人は、真面目だが人と打ち解けない部下、長尾旭を気にかけていた。 日頃の努力の甲斐あって、隼人には心を開きかけている様子の長尾。 ある日の飲み会帰り、隼人を部屋まで送った長尾は、いきなり隼人に「好きです」と告白してくる。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく
BL
ファンタジーな世界で第二王子が総受けな話。 ボーイズラブ BL 趣味詰め込みました。 苦手な方はブラウザバックでお願いします。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

悪役Ωは高嶺に咲く

菫城 珪
BL
溺愛α×悪役Ωの創作BL短編です。1話読切。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

処理中です...