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「この水晶玉は」
神門先生が重々しく口を開く。
「あくまでも、個人が属性を確認するためのアイテムだ。元は他者からも確認できるように作ろうとしていたようだが、そも人間に魔力を視る能力はなく、作成する人間にもそこまでの能力がなかった。当人が見えるようにするのが限界だったわけだ。お前の水晶玉の色が全員に見えていたのなら成功作が紛れ込んでいた可能性も無くはないが、それはなさそうだな。つまりおかしいのはお前だ」
んなこと言われても困るんだが???
つまり。
普通、魔力の色は本人であれ見えない。
水晶玉を使ってようやく本人だけが確認できる。
そのはずなのに、俺は他人の水晶玉の色が見える。
うん、どう考えてもおかしい。
それは分かる。分かるけどさ。
既に目立ってるとはいえ異常性を多人数の前で断言するとかどうなんだ?あ?
「それは先生が対処できるレベルの問題ですか」
「上の連中は納得はしないだろうが黙らせる。問題があるとすれば下位の屑どもだな」
「…………分かっていて何故」
「問題が大き過ぎる。人の口に戸は立てられん。よってこの情報がこちら側から伝えらえる前に出回ればこのクラスの者が情報を漏洩したとして処分できる。伝えられた側も程度によっては処分できるだろう」
「瑞月を囮にする気か」
俺を無視して何話してんだよ……と思いながらも口を挟めず眺めていたら。
神門先生の俺がなんらかの被害に遭うこと前提の発言に、柊夜がキレた。
キレてるよなこれ。声ひっっくかったし。なんか重圧を感じるし。
魔力、か?これ?
「囮ではなく本人の自己申告による誘蛾灯化だろう」
「全員に配るアイテムなら先に説明しておけばよかっただろう」
「掃き溜めにこんな規格外が居ると思うか」
なんかもう投げやりっぽくなってるぞ神門先生。
今の柊夜の相手が面倒なのは分かる。
俺の前では始終ニコニコしてんのに、今は無表情で目付きもめっちゃ悪い。
あんま、見たくない部類の顔。
だってあの時、偽善者、って俺を突き放した時と似てる。
「柊夜ー?もうどうしようもないこと言っても仕方ないだろ。自衛のために話進めた方がいい」
「…………瑞月がそれでいいなら。ただ絶対に単独行動はしないでくれ」
「はいはい」
不機嫌そうではあるものの、止めるとすぐに引いてくれた。
これは友人として怒っているのか、偽装の番いとしてのパフォーマンスなのか。
それとも。
気にはなるけどやっぱり藪蛇が怖いから含まれる感情は後回しとして。
後回しが自分の首を絞めるかもしれないことは置いておいて。
俺もこういう風にやっていかないといけないんだよな~~~~。
「まさか貴方達、番いなの?」
ちょっと憂鬱になっていたら、そう声をかけられた。
「お前まだ居たの」
「悪かったわねまだ居て。仕方ないでしょ。で、どうなのよ」
少し顔色の悪い佐々が真顔で聞いてくる。
その表情に嫌悪の色はなく、本当にこの世界では同性の番い――恋人同士はおかしなことじゃないんだ、と理解した。
普通、なんだな。少なくとも魔力持ちからしたら。
というかそうか、今気付いた。番いってつまり恋人関係じゃん。そうじゃん。
あ゙あ゙~~~~。
ドギツイ……あらゆる意味で……。
「うん。とりあえずこれ以上機嫌悪くさせると面倒だから戻れ」
シッシッと手で払う仕草をする。
佐々が声かけてきた時、機嫌悪くなったの気付いてるからな?
「そう。残念。いい男は大体売約済みよね」
「頭に都合のってつくやつ?」
「当然」
あっさりとした様子で去っていく佐々。
それを見送ってから、わざとらしく深い溜め息を吐く神門先生。
「まさかとは思っていたが」
「何か?」
「何も。丁度いい、軽く説明しよう。Cクラスにとっては割と重要な情報だ」
言って、教卓へと戻っていく。
流れ的に番いについて説明するつもりなんだよな?
…………偽装を疑われる可能性、考えた方がいいかな?
ちら、と柊夜を横目で見る。
ぱちっと目が合った。そして――――、
「っっっ!」
バッと顔を背けて机に突っ伏す。
だからっ、なんで、コイツは!!
さっきまでめちゃくちゃ不機嫌だったくせに、俺を見て――――目が合って、嬉しそうに笑うのマジでもう、本当に、コイツ、なに!?
前は目が合ったって表情ぴくりとも動かなかったし最後らへんなんてこっちを見もしなかった癖に、
――――――――甘竹。
「っ、……、…………」
不意に。
懐かしい姿が、脳裏を過った。
学ラン姿で滅多に表情の動かなかったアイツ。
それは。…………柊夜じゃなくて、アイツだ。
あっちの世界の――――葛西。
名前も、多少の差異があっても姿もほぼ同じ存在なんだから重なってしまうことは仕方ないと思う。
今までだってそうだったし、普通に考えてたけど。
なんか、教室で隣に居る、って状況だからだろうか。柊夜よりもどうしても、葛西が思い出されてしまう。重なってしまう。
それは。
いくらなんでも、流石に柊夜に失礼すぎんだろ。
葛西と柊夜は同じでも違うんだから。
メンタル死にそう。
この世界で目覚めてから、ガリガリ削れっぱなしなんだけど。
神門先生が重々しく口を開く。
「あくまでも、個人が属性を確認するためのアイテムだ。元は他者からも確認できるように作ろうとしていたようだが、そも人間に魔力を視る能力はなく、作成する人間にもそこまでの能力がなかった。当人が見えるようにするのが限界だったわけだ。お前の水晶玉の色が全員に見えていたのなら成功作が紛れ込んでいた可能性も無くはないが、それはなさそうだな。つまりおかしいのはお前だ」
んなこと言われても困るんだが???
つまり。
普通、魔力の色は本人であれ見えない。
水晶玉を使ってようやく本人だけが確認できる。
そのはずなのに、俺は他人の水晶玉の色が見える。
うん、どう考えてもおかしい。
それは分かる。分かるけどさ。
既に目立ってるとはいえ異常性を多人数の前で断言するとかどうなんだ?あ?
「それは先生が対処できるレベルの問題ですか」
「上の連中は納得はしないだろうが黙らせる。問題があるとすれば下位の屑どもだな」
「…………分かっていて何故」
「問題が大き過ぎる。人の口に戸は立てられん。よってこの情報がこちら側から伝えらえる前に出回ればこのクラスの者が情報を漏洩したとして処分できる。伝えられた側も程度によっては処分できるだろう」
「瑞月を囮にする気か」
俺を無視して何話してんだよ……と思いながらも口を挟めず眺めていたら。
神門先生の俺がなんらかの被害に遭うこと前提の発言に、柊夜がキレた。
キレてるよなこれ。声ひっっくかったし。なんか重圧を感じるし。
魔力、か?これ?
「囮ではなく本人の自己申告による誘蛾灯化だろう」
「全員に配るアイテムなら先に説明しておけばよかっただろう」
「掃き溜めにこんな規格外が居ると思うか」
なんかもう投げやりっぽくなってるぞ神門先生。
今の柊夜の相手が面倒なのは分かる。
俺の前では始終ニコニコしてんのに、今は無表情で目付きもめっちゃ悪い。
あんま、見たくない部類の顔。
だってあの時、偽善者、って俺を突き放した時と似てる。
「柊夜ー?もうどうしようもないこと言っても仕方ないだろ。自衛のために話進めた方がいい」
「…………瑞月がそれでいいなら。ただ絶対に単独行動はしないでくれ」
「はいはい」
不機嫌そうではあるものの、止めるとすぐに引いてくれた。
これは友人として怒っているのか、偽装の番いとしてのパフォーマンスなのか。
それとも。
気にはなるけどやっぱり藪蛇が怖いから含まれる感情は後回しとして。
後回しが自分の首を絞めるかもしれないことは置いておいて。
俺もこういう風にやっていかないといけないんだよな~~~~。
「まさか貴方達、番いなの?」
ちょっと憂鬱になっていたら、そう声をかけられた。
「お前まだ居たの」
「悪かったわねまだ居て。仕方ないでしょ。で、どうなのよ」
少し顔色の悪い佐々が真顔で聞いてくる。
その表情に嫌悪の色はなく、本当にこの世界では同性の番い――恋人同士はおかしなことじゃないんだ、と理解した。
普通、なんだな。少なくとも魔力持ちからしたら。
というかそうか、今気付いた。番いってつまり恋人関係じゃん。そうじゃん。
あ゙あ゙~~~~。
ドギツイ……あらゆる意味で……。
「うん。とりあえずこれ以上機嫌悪くさせると面倒だから戻れ」
シッシッと手で払う仕草をする。
佐々が声かけてきた時、機嫌悪くなったの気付いてるからな?
「そう。残念。いい男は大体売約済みよね」
「頭に都合のってつくやつ?」
「当然」
あっさりとした様子で去っていく佐々。
それを見送ってから、わざとらしく深い溜め息を吐く神門先生。
「まさかとは思っていたが」
「何か?」
「何も。丁度いい、軽く説明しよう。Cクラスにとっては割と重要な情報だ」
言って、教卓へと戻っていく。
流れ的に番いについて説明するつもりなんだよな?
…………偽装を疑われる可能性、考えた方がいいかな?
ちら、と柊夜を横目で見る。
ぱちっと目が合った。そして――――、
「っっっ!」
バッと顔を背けて机に突っ伏す。
だからっ、なんで、コイツは!!
さっきまでめちゃくちゃ不機嫌だったくせに、俺を見て――――目が合って、嬉しそうに笑うのマジでもう、本当に、コイツ、なに!?
前は目が合ったって表情ぴくりとも動かなかったし最後らへんなんてこっちを見もしなかった癖に、
――――――――甘竹。
「っ、……、…………」
不意に。
懐かしい姿が、脳裏を過った。
学ラン姿で滅多に表情の動かなかったアイツ。
それは。…………柊夜じゃなくて、アイツだ。
あっちの世界の――――葛西。
名前も、多少の差異があっても姿もほぼ同じ存在なんだから重なってしまうことは仕方ないと思う。
今までだってそうだったし、普通に考えてたけど。
なんか、教室で隣に居る、って状況だからだろうか。柊夜よりもどうしても、葛西が思い出されてしまう。重なってしまう。
それは。
いくらなんでも、流石に柊夜に失礼すぎんだろ。
葛西と柊夜は同じでも違うんだから。
メンタル死にそう。
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