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10 属性
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どんなに憂鬱だろうが、朝は来る。
そんなの3年前から分かってはいたけど、やっぱり、こう、胃に来るものがある。
悩みが多すぎるし大き過ぎるんだよ。
この世界のことも柊夜のこともなあなあですませられることじゃねーし!
しかも……
「物凄く見られていたな」
「おう。多分上級生だよな……寄ってくるのがいなくて良かった」
朝食を取りに、食堂に行った時の話だ。
人の多い時間を避けるため食堂が開いたとほぼ同時に行ったんだけど既に何人かの生徒がいて、なんかめちゃくちゃ見られてたんだよ。コソコソこっち見ながら話してるのも居たし。
そのせいで柊夜に始終ぴったりくっつかれてて、もうね。
気力的なものがガリガリ削られた感じ。
朝っぱらからマジで疲れた……。
でも、授業はこれからなんだよな。柊夜以外の人間と接するのもこれから。
あー、もう、不安しかない。
「今日の日程だが、他のクラスは通常授業が行われるが、Cクラスは外部生が多い都合上、最低限の基礎を学ぶこととした。自らの属性や適性の確認もだ。今後はそれを指針とし生活していくことになるのだが、故にそれを間違えると悲惨なことになる。自分の思う通りにならなかったからと浅慮せず受け入れるように」
うーん、シビア。現実を叩き付けていくスタイル。
マジでそういう方針で行くのな。
まあ、やらないって言ってた基礎に一日使ってくれるだけ優しい?
その分通常教科の時間潰れたけど。
本来予定されてた授業、どうやって潰したのやら。
「先生」
「なんだ。……佐々」
一人の生徒が声を上げ、神門先生が反応する。
立ち上がったのは、色素の薄い金茶系の髪色の女子生徒。
「受け入れた結果が悲惨な場合はどうすれば?」
「今回で変更が可能だ、と言っておく」
淡々と答える神門先生。
女子生徒の反応はない。
あ、黙って座った。
……今の子、内部生っぽいな。
つまり昨日落ちこぼれと言われていた一人だ。
属性と適性が合っていても問題は起きるってこと?
くっそ面倒くさい。
「まず属性を調べるためのアイテムを配る。これは一人一つ、所持が認められている物だ。無くさず保管するように」
配られたのは、直系5㎝くらいの水晶玉。
割とがっしりとした木製の小箱に収められている。
無くすなって言ってるし、大事なものなんだろう。
「魔力を流すことで水晶玉はその魔力属性に染まる。火なら赤、水なら青、地なら黄、風なら緑。この4つが基本属性だ。大半の者はこの内1つを属性として持っている。稀に複数属性持ちや特殊属性持ちも居るが、この中には居ないだろう」
「なんで?」
「複数属性は血筋が物を言い、特殊属性は特殊状況下でしか成り得ないからだ」
ほーん。
ま、セオリー通りだな。
基本は4大属性かぁ。
となると、精霊とかも居るのかな?
4大属性って言えばあれだよな、サラマンダー、ウンディーネ、ノーム、シルフ。
こっちでもそうなのかな?
―――――――― ソウ ダヨ
「!?」
驚いて耳を押さえる。
何、今の。
耳のすぐ近くて……何か、喋った、のか?
いや、でも。俺以外は誰も反応していない。皆水晶玉に夢中っぽい。俺の様子にすら反応しないし。
ええ……、なんなんだよ一体……。
「瑞月?どうかしたのか?」
「……、……魔力の流し方わかんね」
「あ。そうだな、教えられてもいないんだし。教わった僕でも苦戦してるんだから難しいよな。そっちに行ってもいいか?」
「ん」
ふっつーに誤魔化せたな。
もし気付いていたなら、柊夜なら誤魔化されてくれても後で聞く、くらいは言ってきそうだから。
いやしかし、あの一瞬は本当になんだったんだろう。
ところで言われて気付いたんだけど神門先生地味に無茶振りしてんのな???
外部生、多分全員魔力の扱いとか知らねーだろ。
「今までに自分の意思で魔力を動かしたことは?」
「多分ない」
「なら……瑞月、手を」
椅子だけ動かして寄ってきた柊夜の問いに答える。
そしたら手を差し出してきたから、その手を取った。
特に何も考えず。
「い゙っ!?」
「ははっ」
いや笑ってんじゃねーよ?!
何、今の!めっちゃぞわってきた!!
こう、他人の指が腕をざわざわーってしてったみたいな!鳥肌出そうな感じ!
「教えるにしても普通やらんぞ、そんな方法」
「相手が瑞月なので。魔力の感覚は掴めたか?」
いやだから笑ってんじゃねぇ。
神門先生もいつの間に来たし。
普通やらない方法って何???
突っ込みどころしかねーけど。とりあえず。
「っ!」
「これでいいわけ?」
同じことをやり返しておいた。
なんとなくこうかなーってやってみたら普通にできちゃったわ。
そもそも俺、声?に気を取られてやってなかっただけでできないとは言ってない。いややったことないけど。やり方とか知らんけど。
心臓を起点に血管の流れで魔力を流すっていう向こうのラノベとかゲームでよくある魔力の動かし方?イメージ?でできちゃったから、時間かければ普通にできたと思う。
柊夜のアレのお陰で少しは魔力ってやつの感覚掴みやすくはなったけど。
普通じゃないらしいけど。アレな予感するけど。
「瑞月?」
「先に仕掛けてきたのはそっちだし、知りもしないこと言われても分かりませんー」
ぺいっと手を払いのけてからそっぽを向く。
今に限り、分からないっていい防御手札だよな。
問題の先送りだけどさ。
「分かった。あとで話そう。……流し方が分かったなら水晶玉に流してみようか」
「ん」
そういやそうだったわ。そもそもの目的そっち。
とりあえず箱から取り出してー、っと。
で、神門先生はいつまでそこに居るつもりなの?属性分かるまで?
そんなの3年前から分かってはいたけど、やっぱり、こう、胃に来るものがある。
悩みが多すぎるし大き過ぎるんだよ。
この世界のことも柊夜のこともなあなあですませられることじゃねーし!
しかも……
「物凄く見られていたな」
「おう。多分上級生だよな……寄ってくるのがいなくて良かった」
朝食を取りに、食堂に行った時の話だ。
人の多い時間を避けるため食堂が開いたとほぼ同時に行ったんだけど既に何人かの生徒がいて、なんかめちゃくちゃ見られてたんだよ。コソコソこっち見ながら話してるのも居たし。
そのせいで柊夜に始終ぴったりくっつかれてて、もうね。
気力的なものがガリガリ削られた感じ。
朝っぱらからマジで疲れた……。
でも、授業はこれからなんだよな。柊夜以外の人間と接するのもこれから。
あー、もう、不安しかない。
「今日の日程だが、他のクラスは通常授業が行われるが、Cクラスは外部生が多い都合上、最低限の基礎を学ぶこととした。自らの属性や適性の確認もだ。今後はそれを指針とし生活していくことになるのだが、故にそれを間違えると悲惨なことになる。自分の思う通りにならなかったからと浅慮せず受け入れるように」
うーん、シビア。現実を叩き付けていくスタイル。
マジでそういう方針で行くのな。
まあ、やらないって言ってた基礎に一日使ってくれるだけ優しい?
その分通常教科の時間潰れたけど。
本来予定されてた授業、どうやって潰したのやら。
「先生」
「なんだ。……佐々」
一人の生徒が声を上げ、神門先生が反応する。
立ち上がったのは、色素の薄い金茶系の髪色の女子生徒。
「受け入れた結果が悲惨な場合はどうすれば?」
「今回で変更が可能だ、と言っておく」
淡々と答える神門先生。
女子生徒の反応はない。
あ、黙って座った。
……今の子、内部生っぽいな。
つまり昨日落ちこぼれと言われていた一人だ。
属性と適性が合っていても問題は起きるってこと?
くっそ面倒くさい。
「まず属性を調べるためのアイテムを配る。これは一人一つ、所持が認められている物だ。無くさず保管するように」
配られたのは、直系5㎝くらいの水晶玉。
割とがっしりとした木製の小箱に収められている。
無くすなって言ってるし、大事なものなんだろう。
「魔力を流すことで水晶玉はその魔力属性に染まる。火なら赤、水なら青、地なら黄、風なら緑。この4つが基本属性だ。大半の者はこの内1つを属性として持っている。稀に複数属性持ちや特殊属性持ちも居るが、この中には居ないだろう」
「なんで?」
「複数属性は血筋が物を言い、特殊属性は特殊状況下でしか成り得ないからだ」
ほーん。
ま、セオリー通りだな。
基本は4大属性かぁ。
となると、精霊とかも居るのかな?
4大属性って言えばあれだよな、サラマンダー、ウンディーネ、ノーム、シルフ。
こっちでもそうなのかな?
―――――――― ソウ ダヨ
「!?」
驚いて耳を押さえる。
何、今の。
耳のすぐ近くて……何か、喋った、のか?
いや、でも。俺以外は誰も反応していない。皆水晶玉に夢中っぽい。俺の様子にすら反応しないし。
ええ……、なんなんだよ一体……。
「瑞月?どうかしたのか?」
「……、……魔力の流し方わかんね」
「あ。そうだな、教えられてもいないんだし。教わった僕でも苦戦してるんだから難しいよな。そっちに行ってもいいか?」
「ん」
ふっつーに誤魔化せたな。
もし気付いていたなら、柊夜なら誤魔化されてくれても後で聞く、くらいは言ってきそうだから。
いやしかし、あの一瞬は本当になんだったんだろう。
ところで言われて気付いたんだけど神門先生地味に無茶振りしてんのな???
外部生、多分全員魔力の扱いとか知らねーだろ。
「今までに自分の意思で魔力を動かしたことは?」
「多分ない」
「なら……瑞月、手を」
椅子だけ動かして寄ってきた柊夜の問いに答える。
そしたら手を差し出してきたから、その手を取った。
特に何も考えず。
「い゙っ!?」
「ははっ」
いや笑ってんじゃねーよ?!
何、今の!めっちゃぞわってきた!!
こう、他人の指が腕をざわざわーってしてったみたいな!鳥肌出そうな感じ!
「教えるにしても普通やらんぞ、そんな方法」
「相手が瑞月なので。魔力の感覚は掴めたか?」
いやだから笑ってんじゃねぇ。
神門先生もいつの間に来たし。
普通やらない方法って何???
突っ込みどころしかねーけど。とりあえず。
「っ!」
「これでいいわけ?」
同じことをやり返しておいた。
なんとなくこうかなーってやってみたら普通にできちゃったわ。
そもそも俺、声?に気を取られてやってなかっただけでできないとは言ってない。いややったことないけど。やり方とか知らんけど。
心臓を起点に血管の流れで魔力を流すっていう向こうのラノベとかゲームでよくある魔力の動かし方?イメージ?でできちゃったから、時間かければ普通にできたと思う。
柊夜のアレのお陰で少しは魔力ってやつの感覚掴みやすくはなったけど。
普通じゃないらしいけど。アレな予感するけど。
「瑞月?」
「先に仕掛けてきたのはそっちだし、知りもしないこと言われても分かりませんー」
ぺいっと手を払いのけてからそっぽを向く。
今に限り、分からないっていい防御手札だよな。
問題の先送りだけどさ。
「分かった。あとで話そう。……流し方が分かったなら水晶玉に流してみようか」
「ん」
そういやそうだったわ。そもそもの目的そっち。
とりあえず箱から取り出してー、っと。
で、神門先生はいつまでそこに居るつもりなの?属性分かるまで?
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