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8 偽物の番い?
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つがい【番い】
・異性、あるいは同性の性的関係にある者達のこと。婚姻している場合は夫婦、或いは夫夫、婦婦と呼ぶ。
※魔力を持つ者の出生は年々減少しており、既に番っている者達は基本的に引き剥がしてはならない。
(過去に番い持ちに横槍を入れた結果どちらも自死を選ぶ悲劇が起きたため)
おわぁ……(絶句)
ええと、うん。
色々言いたいことはあるんだけど。ちょっと置いておこう。
つまり、言われた時に考えたことは間違いでもなかったってことだな。
先輩らの確認はその後の忠告も考えると、番いなら必要ないか、それを踏まえた忠告になったんだろう。
ていうか俺ら、マジでそう見えたの?番いって勘違いされる程度に?
言ってきたんだからそうなんだよな。マジか。
…………で。
柊夜はこれを俺に見せて、何が言いたいんだ?
「さっきの先輩の……外部生は自分以外信用するな、っていう話、なんだが」
「……ああ」
「一応、両親から話を聞いていたから、先輩達の言っていることは凡そ正しいことは分かるんだ。だけど……その、少し込み入った話なんだが。実は僕、家の事情で小、中学校に通っていないんだ」
「はっ?!マジで?」
唐突なカミングアウトに驚きの声を上げる。
いやだって、小、中学校って義務教育だぞ。行ってないって相当じゃん。
病気、とか?でもそういう風には見えないけど……。
「ああ。だから学校に通うのはここが初めてで、瑞月が初めての友達、になるんだ。だから、正直に言うと先輩達の言うようにはしたくない。そもそも僕達はお互いに外部生でこの学園には染まっていないし、先輩達の言う所には恐らく当て嵌まっていないと思う。だからその、瑞月さえよければ、番いであると偽装しないか、と……。ええと、そういう関係だと誤認させることになるから、瑞月が嫌だったら他の方法を考える。つまり、その、僕は瑞月と信頼し合えない関係になるのは嫌なんだ」
困ったように、狼狽えるように柊夜はそう言う。
要約すると、先輩らが言うようなお互いを信じられない状態にはなりたくない、ってことだよな?
で、それを回避しつつ、周りから横槍を入れられないように『番い』って関係に偽装したい、と。
なんか真剣に教科書読んでるから帰り際に言ってた魔力について調べてると思ってたけど、まさかそんなことを考えていたとは。
だってまだ会って一週間も経ってないんだぜ?他人も他人だ。
俺はあっちの柊夜を知ってるけど、柊夜は違うのに。
どうして柊夜はそんなに俺に寄せて来るんだろうと思ってたけど……一応、事情はあったんだな。
学校に通っていなかった、なんて、一体どういう事情だったのかはさっぱり予想もつかないけど、不安だっていうのはなんとなく分かる。俺もそうだし。
お互い、事情は全っ然違うけど本当に全部が初めてなんだ。
…………初めての友達、か。
じゃあ、仕方ないよな。
不安だから手放したくない、って気持ちも分からないでもないよ。
正直に言うとあっちの……アイツのことを思えば、『番い』っていう性的関係も含めた関係だと偽装する、なんて複雑極まりない。
でも、なぁ。
利用できる。
最低だけど、俺もそう思ってしまった。
この世界でたった一人とも言える不安を誤魔化すために。誰も味方がいないから、道連れが欲しい、って。
それが柊夜だっていうのが本っっっ当に!複雑そのものだけど。
「分かった。いーよ、それで。俺もこの学園で一人でやってくの、不安だし」
「本当か!?良かった……!」
安心したように笑う柊夜。
あーあ。嬉しそうにしちゃってさぁ。
本当に分かってるのかよ?番いを偽装する、ってのがどういうことか。
少なくともこの先、本当の本当に仲違いでもしない限り、好きな相手ができてもそう簡単には切れなくなるんだぜ?
分かっててそれを言わずにその提案を受けた俺も相当クソだけどさぁ。
でも、分からないならそれでいいや。むしろその方がいいよな。
そっち方面に深く考えられても困るし。
友達として、信用できる相手として。
それだけ。うん。
「じゃあ、瑞月はどの程度までなら許せる?」
「んっ!?えっ、何が、」
「だって番いを偽装するなら、ある程度そういう行動はしておかないと怪しまれるだろう?」
えっ。
ちょ、っと待った、そういう行動、て。
「校内で、なら多少大袈裟なスキンシップ程度でいいのかな。ああでも、瑞月は触られるのが苦手なんだよな?」
「え、うん……」
「それ、僕は大丈夫、って誤魔化せるか?」
むしろお前だから駄目なんだが????
他の誰に触られようと別に問題ないんだよなぁ!?
どうしよ、コイツ予想以上にそっち方面にきっっっちり考えてやがる……!!
でも今更触られる云々は嘘と言うかお前に限ってのことだとか言えるわけないし!
なんでって聞かれても答えられる事情でもないし?!
「わ、かんね。考えたこともなかったし……」
「そうか……、少し、触ってもいいか?」
「えぁ、っ?!」
返事を返す前に、柊夜の手が俺の頬に触れる。
指、が、耳に触れて、擽るように首筋を撫でていく。
待っっったなにこれ何この、このっ!変な、触り方、
「瑞月、これ、無理そうか?」
「ひ、っぁ、擽った、ぃだけ、」
「…………じゃあ、これは?」
「ぇ、」
とん、と肩を押されて。
身体が傾いだのは分かったけど、止める間もなく。
二人分の体重に、ぎし、とベッドが軋む。
――――――あ。やばい。
押し倒されて見上げた紺藤の眼が。
あの日のアイツと、重なって、
・異性、あるいは同性の性的関係にある者達のこと。婚姻している場合は夫婦、或いは夫夫、婦婦と呼ぶ。
※魔力を持つ者の出生は年々減少しており、既に番っている者達は基本的に引き剥がしてはならない。
(過去に番い持ちに横槍を入れた結果どちらも自死を選ぶ悲劇が起きたため)
おわぁ……(絶句)
ええと、うん。
色々言いたいことはあるんだけど。ちょっと置いておこう。
つまり、言われた時に考えたことは間違いでもなかったってことだな。
先輩らの確認はその後の忠告も考えると、番いなら必要ないか、それを踏まえた忠告になったんだろう。
ていうか俺ら、マジでそう見えたの?番いって勘違いされる程度に?
言ってきたんだからそうなんだよな。マジか。
…………で。
柊夜はこれを俺に見せて、何が言いたいんだ?
「さっきの先輩の……外部生は自分以外信用するな、っていう話、なんだが」
「……ああ」
「一応、両親から話を聞いていたから、先輩達の言っていることは凡そ正しいことは分かるんだ。だけど……その、少し込み入った話なんだが。実は僕、家の事情で小、中学校に通っていないんだ」
「はっ?!マジで?」
唐突なカミングアウトに驚きの声を上げる。
いやだって、小、中学校って義務教育だぞ。行ってないって相当じゃん。
病気、とか?でもそういう風には見えないけど……。
「ああ。だから学校に通うのはここが初めてで、瑞月が初めての友達、になるんだ。だから、正直に言うと先輩達の言うようにはしたくない。そもそも僕達はお互いに外部生でこの学園には染まっていないし、先輩達の言う所には恐らく当て嵌まっていないと思う。だからその、瑞月さえよければ、番いであると偽装しないか、と……。ええと、そういう関係だと誤認させることになるから、瑞月が嫌だったら他の方法を考える。つまり、その、僕は瑞月と信頼し合えない関係になるのは嫌なんだ」
困ったように、狼狽えるように柊夜はそう言う。
要約すると、先輩らが言うようなお互いを信じられない状態にはなりたくない、ってことだよな?
で、それを回避しつつ、周りから横槍を入れられないように『番い』って関係に偽装したい、と。
なんか真剣に教科書読んでるから帰り際に言ってた魔力について調べてると思ってたけど、まさかそんなことを考えていたとは。
だってまだ会って一週間も経ってないんだぜ?他人も他人だ。
俺はあっちの柊夜を知ってるけど、柊夜は違うのに。
どうして柊夜はそんなに俺に寄せて来るんだろうと思ってたけど……一応、事情はあったんだな。
学校に通っていなかった、なんて、一体どういう事情だったのかはさっぱり予想もつかないけど、不安だっていうのはなんとなく分かる。俺もそうだし。
お互い、事情は全っ然違うけど本当に全部が初めてなんだ。
…………初めての友達、か。
じゃあ、仕方ないよな。
不安だから手放したくない、って気持ちも分からないでもないよ。
正直に言うとあっちの……アイツのことを思えば、『番い』っていう性的関係も含めた関係だと偽装する、なんて複雑極まりない。
でも、なぁ。
利用できる。
最低だけど、俺もそう思ってしまった。
この世界でたった一人とも言える不安を誤魔化すために。誰も味方がいないから、道連れが欲しい、って。
それが柊夜だっていうのが本っっっ当に!複雑そのものだけど。
「分かった。いーよ、それで。俺もこの学園で一人でやってくの、不安だし」
「本当か!?良かった……!」
安心したように笑う柊夜。
あーあ。嬉しそうにしちゃってさぁ。
本当に分かってるのかよ?番いを偽装する、ってのがどういうことか。
少なくともこの先、本当の本当に仲違いでもしない限り、好きな相手ができてもそう簡単には切れなくなるんだぜ?
分かっててそれを言わずにその提案を受けた俺も相当クソだけどさぁ。
でも、分からないならそれでいいや。むしろその方がいいよな。
そっち方面に深く考えられても困るし。
友達として、信用できる相手として。
それだけ。うん。
「じゃあ、瑞月はどの程度までなら許せる?」
「んっ!?えっ、何が、」
「だって番いを偽装するなら、ある程度そういう行動はしておかないと怪しまれるだろう?」
えっ。
ちょ、っと待った、そういう行動、て。
「校内で、なら多少大袈裟なスキンシップ程度でいいのかな。ああでも、瑞月は触られるのが苦手なんだよな?」
「え、うん……」
「それ、僕は大丈夫、って誤魔化せるか?」
むしろお前だから駄目なんだが????
他の誰に触られようと別に問題ないんだよなぁ!?
どうしよ、コイツ予想以上にそっち方面にきっっっちり考えてやがる……!!
でも今更触られる云々は嘘と言うかお前に限ってのことだとか言えるわけないし!
なんでって聞かれても答えられる事情でもないし?!
「わ、かんね。考えたこともなかったし……」
「そうか……、少し、触ってもいいか?」
「えぁ、っ?!」
返事を返す前に、柊夜の手が俺の頬に触れる。
指、が、耳に触れて、擽るように首筋を撫でていく。
待っっったなにこれ何この、このっ!変な、触り方、
「瑞月、これ、無理そうか?」
「ひ、っぁ、擽った、ぃだけ、」
「…………じゃあ、これは?」
「ぇ、」
とん、と肩を押されて。
身体が傾いだのは分かったけど、止める間もなく。
二人分の体重に、ぎし、とベッドが軋む。
――――――あ。やばい。
押し倒されて見上げた紺藤の眼が。
あの日のアイツと、重なって、
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