勇者のママは環の婚礼を魔王様と

蛮野晩

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勇者のママは環の婚礼を魔王様と≪婚礼編≫

十六ノ環・勇者と冥王のママは今日も魔王様と

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 この地には巨大な国家がいくつかあり、そしてその周囲に小国が散らばっている。
 人々の往来は東西中央海の道を通じていくつもルートがあり、それはまた、交易に従事する民族によって都度開発されていた。

 この国、アルメルセデスは小国ながら、西は山脈、南と東は海に隔たれ、そして北は雪深い氷河に覆われた地域とあって、あまり他国との戦禍には巻き込まれることなく長い歴史を誇ってきた。

 海を隔てたはるか東には龍が住まうという華国。南には砂漠の国カナン。そして山脈を隔てた西には帝国。
 アルメルセデスは地域的に、この西の地域の覇者である帝国の影響下にあると言える。
 過去、アルメルセデスの王室が絶えた時、帝国からその皇室の血筋の者を王に迎えたこともあった。
 それでも属国とはならず独立を保ったのも、この地の特殊性故だろう。


 ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
 この国が自らそう名乗るようになったのは、これより一世紀は前の事だった——。


 ♢ ♢ ♢

 この世界には神の氣が満ち、それは生命の活力ともなると共に、濃すぎるその氣は命あるものにとって毒にもなる。

 エーテルと呼ばれるそんな神の氣は、真那マナと呼ばれる清浄な氣と、そしてその状態が変ったと呼ばれるものに分けられる。

 水と氷のように、ただその状態が変わっただけで同じ神の氣エーテルであるに違いはないのだけれど、生憎と生命にとってその性質は正反対に作用してしまう。

 水が命を育むように、真那マナは生命の活力となり。
 氷が死を呼ぶように、は生命を蝕んだ。

 元々、この世界を構成するブレーンの表面に存在するには神の氣は真那マナの状態である場合が多く。
 ブレーンの内側にはが多かった。
 そのため、生命はそのブレーンの表面に多く生まれ、繁殖していったのだった。

 真那マナの泡、プランクブレーンはいつしか命の源大霊グレートレイスを産み。
 そしてその大霊グレートレイスからレイスが産まれ、生命に宿り『意志』が目覚め。
『意志』すなわちその神のかけらは『人』と呼ばれるものとなる。

 神は自らの分身でもあるその人の誕生を祝福し、彼らに加護マギアスキルを与えた。

 しかしそれは、神による人のレイスに対する、人がその全ての権能を解放し神と同等となることが無いようにする為の枷でもあった。

 そうしてその能力に対して枷が嵌められた『人』は、命の終わりにまた大霊グレートレイスに還る。
 多くの命はそうしてその円環の輪の中で、永く時を紡いできたのだった。




 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「本日をもって貴様は解任だ、聖女フランソワ!」

 亜麻色の髪の聖女フランソワは、そろそろお昼の食事の時間だなぁとのんびりしている所で、自室を訪れた王室聖女庁長官を務める王太子、シャルル・ド・アルメルセデスにいきなりそう告げられた。

 一瞬あっけにとられる彼女。
 それでもすぐに気をとりなおす。

「はう。何かございましたでしょうか?」
 そう首を傾げる彼女。

 それでなくとも冷たい目をしていたシャルル王太子、いっそう冷えた視線を聖女に向けた。

「お前のそういう所が私はずっと気に入らなかったのだ。聖魔法も碌に使えない半人前のくせに。お前のような者を聖女として迎えた事自体が誤りだったのだ!」

 そう怒鳴り。

「まあいい。真の聖女が見つかった今となってはお前はもう用済みだ。荷物を纏めてとっとと実家に帰るといい!」

 と続けた後、背をむけ部屋を出ていった。

 ♢ ♢ ♢
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感想 5

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みんなの感想(5件)

ヒカリ
2022.03.28 ヒカリ

既に公開作品だったとのことで展開気になり先読みしようと思いましたがエブリスタ撤去されていたようで…
先の展開が気になります…家族増えるのかぁといった感じでいまはみております!
(Amazonプレミアム会員ですが無料でなかったです…)

そして生き返り設定はないようで姉弟もいつか別の形でまた見られるのではないかと思っていたので残念です…
長く連載をされているような中で一気読みできる現在につくづく感謝です。
これからも応援しております。

蛮野晩
2022.03.28 蛮野晩

小説を気に入ってくれて嬉しいです!応援ありがとうございます!
先の展開が気になるとのこと、物語を書いていて嬉しいことです。
これからもいろいろあるのでぜひ読んでください!
とりあえずゼロスも加わり、イスラとゼロスが兄弟になりました。
ハウストとブレイラは子どもが二人できて大変ですが、なんだかんだ楽しい日々をすごします。
もちろん辛い展開もあるんですが、私は完全ハピエン主義なのでラストはハピエンです。

このシリーズは最新作のみweb公開で連載し、それが完結したらwebから下げてKindleで配信という形を取っています。
そして現在こうしてシリーズ一作目からwebで公開している作品は、Kindleの無料読み放題も外しているんですよ。

解除
niya
2022.03.27 niya

あー、近づいてきました〜
あちらでね、最初からずーっと読んでいた者としてはこの先が暫く辛いんです。
フェリクトール様の株はグッと上がりましたが、、、、、
あー、辛い章は一気読みして平和な所までダイブしたいwww


現在進行中のあちらもね、ハラハラ状況なのでね、早く家族○人(ネタバレしちゃうから人数ふせました)楽しく平和な状況がみたい。お魚さんも出来ればまた出てきて欲しいなー

蛮野晩
2022.03.28 蛮野晩

小説の感想をありがとうございます!!
ずっとお付き合いしてくれて嬉しいです!!
私も書き直しや修正のために改めて読み直しているんですが、思ってたより辛い展開で衝撃を受けています(笑)
現在進行中のは完結に向けた布石の物語なのでここから更に展開していくんですが、燃えて萌えるような恋愛と冒険の物語をがんばります!!
あと家族で楽しく平和な話し、いいですよね~。私も猛烈に書きたくなりますよ。特に長編やシリアスを書いていると同時進行で楽しいのを書いてたりします(笑)
まだまだ続きますので、どうぞお付き合いください!
これからも応援よろしくお願いします!!

解除
マロミル
2022.03.26 マロミル

こんにちは!
エブの方でずっと読ませていただいてました。
こちらで前のお話が読めると知って毎日楽しみにしています。
とても新鮮な感じですね。
ゼロスの登場でギリギリ助かったブレイラですが何だかちょっと切ないです。ゼロスは孤独なんですね。
三界の王たちもそうなのかもしれませんね。
ハウストやイスラはブレイラによって平穏な心を保てているのかなぁ~
これからも楽しみにしています。

蛮野晩
2022.03.26 蛮野晩

小説の感想をありがとうございます!!
ずっとお付き合いしてくれて嬉しいです!!
そうなんですよ、私も新鮮なんですよ(笑)
この頃のハウストとブレイラは愛しあっていても、なんだか切なさがありますから。
そしてゼロスが一番恐れているのが孤独なんですよね。それは強大な力を持つハウストやイスラも一緒です。
イスラは卵の時からブレイラがいるのでハウストやゼロスとは違いますが、それでもイスラはブレイラがいることで安定していますからね。
まだまだ続きますので、どうぞお付き合いください!
これからも応援よろしくお願いします!!

解除

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