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十七章 三国会議 (選抜戦・1)
二百五十八話 三流
しおりを挟む『side カリスト』
「だいぶ溜まったな、あとはいつ使うかだが……」
混戦によって溜まってきた剣の様子を確かめながら、俺は周りの奴らの戦いを眺める。学院長が去ってからそれぞれ相手を見つけて戦おうと探り合っている様子があるが……どちらかといえば、ここまで来れば『勝つ』というより『落とす』という雰囲気が強かった。
(……まあ、何でもいいが。)
目を閉じて、俺は深く息を吸い込む。流石にあの大会を見た奴らが俺に向かってくるようなことはなさそうだが……ウルスに触発された奴らだ、無謀を承知でかかってきてもおかしくない。油断をしないように気を引き締めて…………
「……こそこそしてんなよ、先輩?」
「……!?」
なんて、適当な能書きを垂れてから背後からゆっくり忍び寄って来ていた男……シーク=トリアスへ声をかける。そして、息の詰まるような声が聞こえてから振り返ると……誰もいなかったそこから奴の姿が瞬間的に現れていった。
「……よく気付いたな、伊達に首席じゃなさそうだ。」
「魔力も垂らしまくりでなにが『よく気付いたな』だ。かくれんぼでもしたいなら早めに消えることをお勧めするが?」
「結構。」
トリアスは苛立ち半分、余裕半分の表情でこちらと対峙する。その余裕に付け入るように魔法の準備をしながら、時間稼ぎの会話を続けていく。
「わざわざ俺に来るってことはそうだろ? 勝てる見込みもない相手に挑むとは、年齢と知能は比例しないってか?」
「傲慢な強さがな。お前程度、この3年次席俺が倒せないと?」
(……本当に馬鹿なんだな、こいつ。)
煽り方も三流……こんな奴が三角会議に出ても恥晒しだ、試しがてら潰してやるか。
『ブレイクボンバー』
「っ、いきなり……!?」
「甘ったるい動きだな……『プラネットデモリション・レーザー』!!」
前触れもなく俺は突進と同時に爆発を飛ばし、トリアスに無理やり飛ばせて行動を絞らせる。そして、温めていた方の魔法を構えて放ってやった。これでほぼ瀕死に……
「……悪いが、俺には『コレ』があるんでな!」
「あ? ……えっ、あぁ?」
……だが、トリアスは宙にいながらも足を蹴り出し……そこから飛び上がって爆破の軌道から避けてしまう。これは、称号の……
「【空を飛ぶ者】……まあ、文字通りだ。今度はこっちの番だ!」
「……槌? ……っ!?」
地面に着地したトリアスはすぐさまこちらへ駆け出し、自前の槌のような武器で攻めてきた。動き自体は速くないため、一撃目は軽く避けられたが……二撃目の違う武器からの攻撃により、体制を崩してしまう。
(樋の部分が鎌……槌鎌ってところか?)
「ほらどうした!? 一年の首席はこんなものなのか!!?」
「……つまらん剣筋だ……『バースト』!!」
威力や技術はそこそこだったが……鍛え足りない筋が俺にとっては退屈であり、その間にキングスターの魔力を解放して俺はステータスを上げる。
「そうか、なら面白い筋を見せてやろう!」
そう言って、トリアスは地面と空中を交互に蹴りながら、本来人間には不可能な動きと軌道で俺を惑わせてくる。ジェットや魔力操作による飛行とはまた別の動きであるため、流石に対応しきれず……剣を弾かれて少しだけ隙を見せてしまった。
「飛べ、『ハリケーンブースト』!」
「ちっ……おらっ!!」
それを見た奴は最上級魔法を発動し、俺を突風に吹かせて地面を転がす。ハリケーンブーストは攻撃性は薄いものの、一度飛ばされたら自力では立て直さないため、剣を地に突き刺せて無理やり体勢を維持したが……
「安心するのはまだ早いぞ!!」
「なっ……がほぉっ!?」
まさかの、トリアスは自ら起こした風に飛び込み、無謀にも流されながらこちらに接近し俺をぶっ飛ばした。意外にも柔軟な対応だったため、俺はそれに何の反応できず……今度こそ素直に転がっていく。
「どうだ、これで如何に君の思い上がりが間違いだと気づけたか? 一年でどれだけ強かろうが所詮はその程度……フラン=ハート様もさぞ退屈だっただろうな。」
(これは……俺も、少し舐めすぎてたな。)
予定では完封……しかし、こいつは仮にも3年の次席。むしろ、これくらいしてもらわないと面白くもないが…………やはり、気に入らない。
「さぁ、どうする? 力押しでは俺に勝てないぞ?」
「…………? 誰……あ。」
挑発に何を答えようか迷っていたところ……不意に俺の背中方面から誰かの足音が聞こえてきた。一瞬、不意打ちを狙われたかと思ったが……同時に感じ取った寒さで、その正体もすぐに分かった。
「……けっ、お前かよ。」
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