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十七章 三国会議 (選抜戦・1)

二百五十三話 無双

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『ミル side』



 合図ともに、この場の静寂が一瞬にして解き放たれ……超大人数での大乱戦が始まった。

「まずは上位スプリアから行った方がいいな……!」
「ええ、人がいる内に倒した方がいいよ!!」
(あれ、もしかして……狙われてる?)

 まあ、確かに強い人から倒した方が人数的にも勝率は高いけど……慣れてないことはしない方がいいと思う。こんな大人数で連携なんか取れるわけないし……私は普通にやろうっと。
 
「ここだぁっ……がはぁっ!?」
「見えてるよ!」

 背後から攻めてきた男の人の攻撃を軽く避け、ペール・アクアの一撃で半分ほど魔力防壁を削ってみる。やっぱり、あまり実力の無い人は魔力防壁も脆い……ちょっと強い魔法を使えば一発で倒せそうだ。

「これなら……『シューティングショット』!」
「うわぁっ!?」
「よ、避けろぉ!!」

 水の球を突き、水線を飛ばすことで一気に何人かの魔力防壁を破壊することに成功する。

(最近、みんなが強くて麻痺してたけど……本来なら私のステータスは他を圧倒できるんだ。)




『ミル……入学試験や学院生活では少し手加減するんだ。』
『えっ、なんで?』
『ミルは師匠とずっと一緒に育ってきたから分からないかもしれないが……俺たちの能力は、子供にしては異常に高い。まだ学院のレベルも分からないが、俺たちより高いことは無いはずだ。そんな俺たちが圧倒的ステータスで今後過ごすとなると絶対に目立ってしまう。』



 ……ウルスくんも居ないし、もうステータスだけの世界じゃないし……良いよね。

(全力の出し方は、確か……)
「一気にかかれ!! この攻撃方法には慣れてないはずだ!!」

 一瞬怯んでいたものの、すぐさま立て直して今度は大人数で私を取り囲んできた。そこには剣や魔法など、様々な姿勢で向かってきていたが……私とってはだ。


(……ここ!)
「なっ、はやぐぁっ!?」
「どうなって……きゃぁっ!!」

 過去の記憶を辿り、私はグランさんの修行で習った通りに彼らの隙間を縫って通り過ぎ、ついでに通り道全員の魔力防壁を剣で全て斬り刻んだ。



『グ、グランさん、森の中を駆けるって何の特訓なの?』
『単純だ、細かく素早い動きを身につけるため。この複雑な森林の中でもぶつからずに全力疾走ができれば、より繊細に動ける……ちなみに、この特訓の発案者はウルスだぞ?』
『ウルスくん!? なら挑戦、うぉぉっ!! ……ふぎゃぁっ!!?』
『……まったく、可愛い弟子なことだ。』



 まさか、こんなところで役立つとは思わなかったけど……ありがとうグランさん!

「っ、武器を変えた……?」
「大丈夫、特に深い意味はないよ……『第一形態だいいちけいたい水滴すいてき』……おっ、重っ!?」

 威力を出すため、ペール・アクアからアステールへと入れ替えて今日のために練習していた魔法……武身流を発動する。やり方はソーラくんから聞いてたため、要領も化身流を同じで発動は簡単だったが…………アステールの想像以上の重力に驚いてしまう。

(ソ、ソーラくんは盾も振り回してた……流石だ。)
「な、何か仕掛けてくる!?」
「試させてもらうよ……はぁっ!!」

 剣を強く握り……思いっきり水平方向へ振った。

「飛んでけ、『水翔斬すいしょうざん』!」
「「「ぐわぁっ!!?」」」

 素振りの結果、かなりの太さを持った巨大な水の斬撃が発生し、固まっている人たちを一気に薙ぎ倒していく。


「……結構楽しい、これ。」


 これが、無双ってやつかな? 











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
















「早々、派手にやってるっすねミルさん……よっと。」
「なっ、おい乗るんじゃねぇっ!!」

 彼女の暴れっぷりを観察しながら、俺は不意打ちを狙っていた男の肩に手を乗せ、宙返りして上手く背中に乗ってみせる。

(他のところも大体上位スプリア狙い、俺にも来るか……まあ、ほぼ返り討ちにあってるが。)

 言っちゃあれだが、のうのうと過ごしてた奴らと俺たちには天地の差がある……まあ、その強さを持っている人間ほど、苦しみもがいてきた不幸の証なのだが。

「幸せもんっすよ、俺は……」
「何言ってんだ、いい加減おり……ぐほぉっ!?」

 降りるついでに彼を倒し、警戒しきっている人たちの目を見つめてみる。どうやら焦りと不安、そして動揺などと未だこの戦いに迷いが入り混じっていたようで……まるで、その鬱憤うっぷんを俺たちにぶつけるかの勢いだった。

「怖い顔っすねーみんな、どうせ緊張して準備体操もまだでしょうに。」
「の、のんきな……ニイダ! 悪いが実力者のお前から退場してもらう!!」
「まあまあ、ここは落ち着いて……でないと、俺は倒せないっすよ?」

 口でペラペラと回しながら、何をしようか策を考える……といっても、この人数じゃ不確定要素も多い。だったら……を利用するまでだ。

「『フレイム』!」「『アクアランス』!」
「っと、魔法は悪手っすよ?」

 勝ち残るなら長期戦必須、仲間を作るなら巻き込み事故……魔法なんて使うだけ損だ。やるにしてもこれくらいがちょうどだろう。

『武装・雷鳴』
「ほいほいっ!」
「えっ、あんな簡単に……がぁっ!?」
「み、見えねぇ……距離を取るんだ!」

 電気を剣に纏わせ、近くにいた何人かを切り伏せる。すると、俺の近くにいるとすぐやられると判断したのか、彼らは分かりやすく距離をとってくれた……分かりやすくて助かる。

「まぁ、俺は正統派に……『錬成・クナイ』」
「投げてくるぞっ、みんな注い……えっ?」

 俺はクナイを作り出し、空高く適当に放り投げる。そして、短剣、燕を内側に捻って…… 

「ぐはぁっ!?」
「「「「「……!??」」」」」
「さぁ、的当ての時間っすよ。」
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