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十六章 壊れる者達 『disappear』
二百三十六話 ステータス
しおりを挟む「消えな……ぐっ!?」
剣に触れても消えることのない灯りはハートを襲い、魔力防壁いダメージを与えていく。そんな現状に納得できない彼女はすぐに炎から抜け、思考を巡らせる。
「何故……剣の魔法が発動してない…………?」
「言ったでしょ、『あなたより強い』と……それが答えですよ。」
「っ……そんなこと、ない!」
複雑そうな表情を浮かべながら、ハートは俺を吹き飛ばそうと拳を突き出す。その力と速さはこれまで見せたものの中で最大であり、舞台に飾られた氷のほとんどを散らし……風圧だけで壁を破壊した。
『鎧う碧炎』
「……な、なんで…………?」
「感情が漏れてるんですよ、顔を見れば……一目瞭然だ。」
しかし、そんな拳も蒼炎を纏った体によって力を流され……俺の手のひらに何とか収められる。直線的な動きであれば容易く、俺の敵にはならない。
「『蒼炎』」
「……!!」
始めて面を食らったからか、ハートは怯えるように放った炎から距離を取る。完全にビビってしまっているようだ。
「『風神・一式』……『風神・二式』!!」
「紫……でも、当たらない!」
紫風の咆哮、竜巻と足早に繋いでいき、すぐさま拳へと流し込む。また、魔法に一点集中させる為、鎧を解除してからそれを放った。
「『風神・三式』!!!」
「『エンドショット』……ぐぁっ!?」
遠距離から振るわれた拳は、その風を暴れさせながらハートは飛んでいく。それに対し彼女は超越級の闇で対抗するが……動揺からか、まともに魔法が構築できておらず、そのまま氷で埋め尽くされた舞台の壁へ叩きつけられていた。
「………それ、でも! 私には勝てない……炎を纏っても、風を吹かせても、私の魔力もステータスには何も……!!」
「そうですか。」
フィアがやられた場所は未だ濃い冷気が漂っており、ちょうど同じ場所から立ち上がったハートは慣れない苦味の表情で俺にそうぶつけた。
「君は、私のことを何も理解できずに……やられる。この魔法も、真実を」
「そこまで言うなら、やってやりますよ。」
駄々を捏ねるように言い切ろうとするハートに、俺は割り込んで自身の目を指差す。そして……滅多に口にすることのない魔法の名前を、唱えてみせた。
「調べろ……『ステータススキャン』」
「………なっ!??」
名前・フラン=ハート
種族・人族
年齢・18歳
能力ランク
体力・237
筋力…腕・244-100 体・278-50 足・269+150
魔力・341
魔法・21
付属…『クロスアビリティ』(発動時、魔法ランク以外のステータスの数値を入れ替えることができる状態)
称号…【力の才】
【魔法の才】
「……ステータスを交錯させて、本来の実力以上の能力を引き出す……面白い魔法ですね。」
「み、見られた……な、なんで……?」
無表情で無感情な顔はどこに行ってしまったのか、完全にキャラとは違って強張らせたハートが疑いの色を見せ始める。 ……能力差があるのにはっきり見られていることも欠如してるということは、それほど驚いているということだろう。
「……人って、初めての言葉とか物を想像するのは難しいですよね。でも、ある程度の知識や情報があれば、関連性のある初見の事象にも対処できます。」
「き、急に……なに?」
「…………あなたの魔力も同じです。俺にとって初めての感覚、透明すぎて察知するのは不可能であっても……何度も直に触れられたら、どういうものか分かるようになるんですよ。」
「…………!!」
『あの人と戦っていたことは、他人に言わないでください。色々と面倒なので。』
『ああ、別に構わないが……にしても、お前ですら手こずっていたようだな。次にやり合った時、勝算はあるのか?』
『まともにやれば無理ですね……けど、1つだけ“ 突破口 ” があるかもしれません。』
『突破口?』
あの日、ハートと初めて戦った時、マジックブレイク使用するため拳を掴まれた場面があった。その時感じた感触は……間違いなく、彼女の魔力だった。
「まさか…突撃も、無理やり受け止めたのも……!」
「3回目で、やっと解りました。あなたの魔力がどういうものか……どう捉えたら良いのか。」
……これで完全に彼女の魔力反応を察知できるようになった。それが意味するのは……転移魔法の無効化。
「もう、不意打ちは不可能……まだ、俺に勝機はないと?」
「……それでも、ステータスに……クロスアビリティに、追いつけるはずがない。いくら君が強かろうが……私に追いつけるわけがない!」
さまざまな感情が混濁してきたのか、ハートのエメラルドグリーンの瞳には深く染みついた現実と……小さく光る、期待の色が垣間見えていた。
(……ステータスが変われば、何か変われるかもと……だから、クロスアビリティはできたのかもしれない。)
期待して、飢えて……最後の足掻きすらも、人には離れていく要因でしかなかった。圧倒的な強さを直視できず……誰も、歩み出せなかった。
「ステータスが、強さがすべて。君もすぐに思い知ることになる……他の人がそうだったように!」
「……知ってますよ、生まれる前から。」
語る必要もない過去にフラッシュバックは起こらず……俺は、彼女に手を伸ばす。そして……体の奥底からあの魔力を溢れ出させた。
「だから。そのステータスも、強さも……俺は身につけた。全て…………失わないために。」
『真龍天鸞』
「っ!??」
ほんの一瞬、龍の魔力が俺の周囲に解き放たれる。その重圧は普通の魔力の比ではなく、近くにいたハートだけが声にならない悲鳴を上げていた。
(ステータスを操作する魔法。イメージは……簡単だ。)
すぐに魔法は解除され、普段通りの状態に戻る。そして、ステータスを覗いた時のように俺は次に発動する魔法を堂々と唱えた。
「変われ…………
…………『クロスアビリティ』」
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