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十五章 勝ち取るもの 『certify』

二百十二話 答え

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 どうやら、人間というものは大抵、『夢』や『目標』があるらしい。



『ねぇ、マグアさんって将来、何になりたいの?』
『……将来? 『なる』って……何が?』
『え、そ、そのままの意味だけど……ほら、冒険者とか国の騎士とか色々あるじゃん! マグアさんは学校で1番強いし、なんかそういうのないの?』
『…………無いとおかしいの?』

 今思えば、僕の言い方も棘があるって分かるけど……そのやり取りから、何となく学校の居心地が悪くなった気がする。別にみんなは気にしてなかっただろうけど。

 僕は、夢なんて持ってなかった。大人になってどういう人になりたいのか、どんなことを成したいのか……そんなことより今を楽しんでいた。
 先のことなんて、誰にも分からない。明日死ぬかもしれないし、次の瞬間に楽しいことが起こるかもしれない。行き当たりばったりな人生を……人によっては『ダメ』と言うらしい。



『武闘祭……?』
『ああ、ちょうど良い時期に来たな! 明日には試合があるし、観に行ってみな? 面白い試合が観れると思うぞ。』
『面白い……なら、行ってみる!!』



 たまたまプリエにおもむき、お父さんに会いに行ったところ、そんなお祭りがやっていた。どうやら、その武闘祭というのはこの街で年に一度行われる一大行事で、その目玉としてソルセルリー学院の生徒たちが団体戦をするようだった。






(出店回ってたら遅れた……もう試合終わっちゃってるかな?)

 ずっと試合を見るのも飽きそうだったので、街中を色々と回った後に僕はその会場へ向かった。幸い、まだ1年生の決勝戦がやっていたようなので、覗いてみると…………そこには、僕の知っている世界は無かった。



「…………すごっ……!」


 目まぐるしく動く戦況、自分には思い付かない発想と展開……そして、何の迷いもなく目の前の勝負に集中する景色。とても、僕の学校では味わえない刺激的な試合は…………あまりにも、輝かしかった。


(これが、国1番の魔導学院……いいなぁ…………)


 楽しさを追い求めるのは、退屈でもある。日々の解釈をわざわざ自分で変えないといけないからで……だから、常にこんな世界を体験できるこの学院はきっと、勝手に楽しさが押し寄せて来るのだろう。

「……あれ、なんででっかい男の人が……さっきまで勝ちそうだったのに。」

 試合の中、優勢だったはずの大男が相手の小綺麗そうな青年に吹き飛ばされ、砂埃に隠される。また、それと入れ替わるように仲間の男の子が向かっていくが……形成は変わらないようだった。

「速い……しかも、それに着いていってる。ステータスはあんなに負けてるのに、どうして………?」


 ……気になってることはたくさんあった。敵の圧倒的力はどこから生まれたのか、ちゃっかり空を飛んでいたり、見たこともない青い炎が飛び交ったり…………とにかく、たくさん。



 しかし、僕が1番目に入っていたのは…………先ほど吹き飛ばされた、だった。


(……動いてる? でも、あんなコテンパンにやられたら諦めそう……だけど。)

 見た感じ、今戦っている男の子の方が実力は上で、それでも苦戦していると言うのに……吹っ飛ばされた方の人が今更何ができるとは思えない。それなのにまだ…………

「……え、えぇ!!? は、はや……うぇぇ!??」

 瞬きの間に、さっきまでぐったりしていたはずの茶髪の男は目にも止まらぬ速さで金髪を蹴り飛ばし、脱力した体でそれを見届けていた。

(あ、蒼い目……何か喋ってる……)

 会話の内容は遠くて分からなかったが……復活した彼と共に黒髪の男の子は一気に攻めていき、そこからは流れるように敵を圧倒し、優勝を勝ち取ってしまった。


「…………諦めてなかった……いや、それどころか…………」



 もちろん、物凄く強かったし、そんな強さに魅力を少し感じた。しかし……僕の目にこびり付いたのはそれではなく、彼がもう一度立ち上がり、飛び出してきた時の…………だった。



(…………羨ましいな。)







 そんな、浅はかな気持ちが…………僕を突き動かし始めた。

























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「…………っ!?」


 決勝戦、終盤……ただただ結末までをしっかり眺めていただけの僕に…………突如、彼から指を指された。


「タ、タールくん……?」


 顔も見えず、周囲も謎の行動にザワザワし始めるが…………限界に染まったはずの震えた指先は、落ちることなくこちらを捉え続ける。


(……僕、だよね、1人だし……何か、意味が…………)









『決めろ。お前はここで『強くなりたい』のか、『楽しみたい』のか……それとも、別の何か。何でも良い、を出せ。』








「…………って、こと?」



 答え…………僕が、ここに理由。




 あの頃の気持ちは……『強さ』でも『楽しみ』でもない、違う世界を覗いてみたくなるような、羨望感。




 でも、現実は違った。みんな、強い意志を持って、それでも苦しんで…………子供のようなキラキラしたモノも無い、凄惨な世界。そんな中でも彼らは必死に足掻いて……僕は置いていかれるばかり。




 …………そして、変わった……いや、変えられた。僕がここに……みんなと一緒に理由は……


「すぅぅ…………」


 息を深く吸い込み、次の一言へ全てを乗せる。それが……僕のだ。








「………………勝ってぇ、タールくーんっ!!!!!」

















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「…………答えになってねぇっつうの。」
(……笑った…………)

 

 ……初めて見た気がする、こいつの……を。


「…………なぁ、ウルス。この『感情』は……やっぱり気持ち悪いよな。」
「……知らんな。」
「……でもな、思ったほどじゃない…………これが、














       繋 が り なんだな。」






 吐露した想いが、トリガーとなったのか…………カリストはに包まれた。


「……!!?」
(な、何が……解放の色と同じだが………!?)

 見たことのない、全くの予想外の光景に……ただ俺は佇んだ。そして、悟った…………まだ、彼は強くなるのだと。







名前・タール=カリスト
種族・人族
年齢・15歳

能力ランク
体力・400
筋力…腕・400 体・400 足・400
魔力・400

魔法・20
付属…『解放者ザ・リリース』 (全ての力を解放した状態)
称号…【力の才】
   【魔法の才
   【解放かいほうするもの】  (解放する者に贈られる称号。発動時には、付属カテゴリに『解放者』が明記される)




「…….はぁァ…………」

 茶色いブロンズの髪は濃い蒼色に、目からはその蒼が文字通りダダ漏れており、地味になっていた白黒の服も光の影響からか、所々侵食されていた。


「……いい加減、長ぇんだよ。」
「…………丁度ちょうど、俺もそう思ってた。」



 …………これが、本当に最後だ。


「「……ウォアぁぁあァッッ!!!!!」」



 剣を抜き、俺たちは駆け出した。


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