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十五章 息吹く気持ち 『face』(冬の大会編)
二百二話 満たされる
しおりを挟む「……あっ、言い忘れてたけど……この前は助けてくれてありがとうね。」
「……何のこと?」
「神に襲われた時の話だよ……あの時はカッコよかった!」
(……どこが…………?)
マグアのよく分からない褒め言葉に、私は首を傾げる他なかった。
名前・マグア
種族・人族
年齢・16歳
能力ランク
体力・89
筋力…腕・100 体・75 足・77
魔力・80
魔法・11
付属…なし
称号…なし
ステータスの差はそこまでない……が、マグアは転入生にしてここまで上り詰めてきた人間。神に対して魔法だけでも対等だったほどの実力者に加え、どうやらテルと似たような武器を持っていると言っていた。
『……なんか、僕の武器と似てるね。本当に強いの?』
『…………強いよ、神器だから。』
(……似ているとはいえ、流石に神器ほどの万能感は無いはず。とりあえず武器の特性を掴むことが最優先だ。)
『それでは、1年の部本戦、準々決勝第2試合…………始めぇ!!』
「『アイスショット』」
「おっ、早速……貰うよ!」
合図とともに、私は試す意味合いも込めて小さな氷の塊を数発飛ばす。すると当然マグアはそれを例の武器であろう青い片手剣を構え、すべてそれで塊を受け切った。
その結果、氷は弾け飛ぶことはなく、剣への吸収されていく……やはり、魔法を吸収する武器か。
「魔法は効かないよ? 『照弾』!」
「知ってる。」
反撃でもある中級魔法の小さな光の弾を飛ばしてきたが、私は軽く避けて接近戦を仕掛けるために剣を抜き、距離を詰めていく。
「なら、これはどうかな……『バースト』!!」
「っ、速い……!」
それに対し、マグアは謎の詠唱をしてから剣を思いっきりその場で振るい、無色の何かを斬撃として飛ばしてきた……反応的に魔力の塊だろうか。
(やっぱりほとんど一緒……なら、対策はしやすい。)
「良い反応だね、ならこれで……『バースト』!!」
塊を避けると、今度は剣を光らせたマグアがこちらへ近づき、それを振るってきた。その攻撃に只者じゃない気配を悟った私は、寸前のところで横軸に移動し……結果、先ほどまで立っていた地面は粉々に砕かれていた。
(まともに食らえば……終わる!)
「『アイススフィア』!」
「それも貰うよ……って、うわぁっ!?」
至近距離で放った魔法も彼女の反応速度には容易いことだったようで、氷塊も簡単に吸収されるが……あくまでそれは囮だ。
「構えたね。」
「…………えっ、ちょ離してっ!!?」
距離が距離だったため、魔法を取るために動きを止めたマグアの剣を無理やり握らせてもらう。すると、まさかそんなことをされるとは思っていなかったのか、マグアは焦った様子で私の手を払い除けようとブンブン剣を動かす。
しかし、当然私は離すことなく…………こう、唱えた。
「……『バースト』」
「ふぇ……なぇっ!!?」
私の言葉にマグアの剣は反応し、また振り回されている軌道に合わせるように光り輝き……魔力の塊は彼女の方向へと飛んでいき、吹き飛ばした。
また、発動した瞬間に手を離した私はそんな面白い状況に口角を上げながら、彼女を挑発する。
「…………焦るから、そうなるんだよ。」
「くぉ……アイススフィアは、そのためのか……」
「……そうだね。」
武器の魔法は、基本的に誰でも扱えるように調整されており、発動条件を知っていれば神器でもない限り簡単に使えるようになっている。そのため、初見であっても私が他人の武器魔法を発動させることは何も難しくはない……あくまで仕組みを知っている前提だが。
「『ライトレーザー』!」
「……お返しする。」
『ドライミラー』
「……んんっ!?」
遠くからマグアが光線を放ってきたため、私はそれを避けるわけでも吸収するわけでもなく……オリジナル魔法でもある氷の鏡で跳ね返してあげた。
反射して襲われる立場になったマグアは声にならない驚きを漏らしながら、ギリギリのところでそれを剣で吸収し……両腕をグルグル回して怒りの表情を見せた。
「あぶな……と、というかどういう魔法!!? そんな呆気なく返されたら元も子もないじゃん!」
「それはお互い様……かかってこないの?」
「むむっ……言ってくれるね。なら、もう容赦はしないよっ!」
そう言ってマグアは剣をボックスへ放り投げ、何も持たない状態でこちらへ駆け上がってくる。当然、私はそれを見逃す気はなく、魔法で牽制していく。
「『フリーズホーン』」
「おっと、贅沢だねっ!!」
「…………っ!」
氷柱攻撃は軽々と避けられ、あっという間に距離を詰められて肘打ちを繰り出される。それを剣で一度受け止めるが、謎の振動で腕が痺れ、次の行動への対応が遅れてしまう。
「舐めてたでしょ、私の武術!!」
「んなこと……ぐっ!!」
続いて打ってきた膝蹴りに何とかを合わせるが、またも響いた衝撃に今度は大きく隙を見せてしまい、次に出た胸への肘の振り下ろしに大きく吹き飛ばされ、地面を転がっていく。
(い、痛い……ウルスの発勁っていう技と同じ不快感……)
「女の子同士だから許してね、っと!!」
よく分からない文言とともに、こちらが体制を立て直す前にマグアが飛び上がってからの飛び膝蹴りを食らわせようとしていた。これを受けたら負ける…………!
「ふ……あっ!!」
「うぉ!?」
私は立ち上がるのを中断し、両足の裏をマグアの膝に合わせるよう揃えて受け止め、衝撃を殺すと同時に弾き飛ばす。また、その勢いのまま一気に体勢を起こし、返されて怯んでいるマグアの肩を掴み……思いっきり頭突きを食らわせた。
「ふごぉっ!!?」
「こっちだって……舐めないでっ!!」
情けない悲鳴を聞きながら、私は威勢よく吠える。だが、それとは裏腹にこちらの体力はやや尽きかけており、息を整えながら次の策を練り出す。
(考えろ……今の一撃であっちは痛手、こっちも肘落としで大分削られた。ちょっとだけ有利だけど、マグアにはまだあの魔法が…………)
スターダスト・スピア……発動に時間がかかるとはいえ、そろそろ準備する様子を見せてきてもおかしくはない。ならば、こちらが取る手は…………
「『ブリザード・フィールド』!!」
「うぉっ? これって吹雪……でも、場所は分かるよ!!」
昔は2人でやっとだったオリジナル魔法も、今では何の苦もなく瞬時に発動させ、舞台全体の視界を吹雪で曇らせた。しかし、あくまでこの魔法は視界を遮るだけで魔力感知は行えるため、私の居場所はバレバレのようだった。
「利用させてもらう……はぁぁっ!!!」
(…………来る。)
元より、これが狙い。マグアにスターダスト・スピアを発動させ、魔法ごと押し潰す…………!!
「さぁ、ぶつけ合おうよっ!!」
「うん……『アイシクル・グラディウス』!!!」
「『スターダスト・スピア』!!!!」
吹雪は大剣を型取り、マグアの頭上へと振り下ろされる。対して、マグアの掲げた両手から無数の光が溢れ出し……こちらの魔法と競り合い始める。
「っ……強い!!」
「潰れて……ねっ!!!」
剣を全力で落とさせながら、マグアの状況を確認する。どうやら彼女は既に出し切っているのか、全くの余裕もなさそうな表情をしていたが……それでも、こちらの剣はどんどんと沈んでいく。
(このまま行けば……倒せるっ!!)
「いっ、けぇ………!!」
次第に光と剣の距離が縮まっていき、その結果光の収束によって輝きが強く、視界を白く染め上げていく。
『……俺も、最期まで全力で手助けする。だから、タッグ戦…………組んでくれるか?』
『……もちろん、私も同じ気持ちだった。』
「うぉぉアァっ!!!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…………こんなところで、負けちゃだめだ。
『…………ふん、そこまで言うならやってみろ。まあどうせ、お前如きじゃ予選負けが関の山だろうがな。』
『それ関の山でも何でもないよ! もう、必ず見返してやるんだからね!!』
見返して……認めてもらって…………僕は。
「ぼく……はぁっ!!!!」
「…………!?」
今一度、足を踏み出し……体が焼けるほどの勢いで光を放出させる。すると…………壮絶な輝きとともに、氷の大剣は砕け散った。
「これで、勝ちだっ!!!」
「ぐっ、あぁっ!!」
僕は、止め処なく溢れる青光をフィーリィアへと飛ばし…………破壊した。
『…………そこまで、勝者は……マグア!!』
「よっしっ!!!」
勝利の宣告が聞こえると、僕は柄にもなくそんな声を上げてしまう…………が、そんな気持ちも彼女を見てすぐに収まってしまう。
「……くっ……うぅ…………」
(……泣いてる。)
負けた悔しさからか、フィーリィアは今までに見たことのない表情をしながら涙を流していた。
その涙は、とても躍動的で、感情がこもっていて…………堪らず、僕は背を向けた。そして…………
「……………ふふっ。」
これが、満たされることなのだと知った。
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