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十五章 息吹く気持ち 『face』(冬の大会編)

百九十八話 道標

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「……カーズ。」
「ん?……何ですかフィーリィアさん?」

 2回戦、私は試合が始まる前にカーズへ何てことない質問をした。

「カーズって……親と仲はいいの?」
「親? 仲はいいですが……それがどうかしたんですか?」
「……親とはいつも、何話してるの?」
「え? えーと……成績とか、学院であったこととか……普通の会話しかしてませんよ。 ……って、結局何なんですか?」
「…………何でも。ただの世間話。」
「えぇ…………」




名前・フィーリィア
種族・人族
年齢・16歳

能力ランク
体力・88
筋力…腕・80 体・86 足・93
魔力・124

魔法・15
付属…なし
称号…【暴走する魔力】





名前・カーズ=アイク
種族・人族
年齢・16歳

能力ランク
体力・68
筋力…腕・64 体・73 足・61
魔力・90

魔法・12
付属…なし
称号…【化身流継承者】




(……化身流、英雄グラン=ローレスが作った魔法で……デュオにも通用していた強力なもの。)

 ステータス的には勝っているが……その魔法を持っているだけで私の方が十分不利と言ってもいいだろう。練習しているはまだ使えないため……普通に戦っては勝てない相手に違いない。



「……フィーリィアさん、少し。」
「…………?」

 何の前触れもなく、カーズにそんなことを言われ……私は首を傾げる。

「変わった? ……髪の毛が伸びたとか?」
「い、いやいや、そういうのではなくて…………こう、雰囲気みたいなのが前よりも明るくなった、と。」
「……そうかな?」

 …………『変わった』と言われれば、確かにそうなのかもしれないが……それはあくまでだけの話だ。



『……俺も、最期まで全力で手助けする。だから、タッグ戦…………組んでくれるか?』



 彼の言葉に、私の心は溶かされ…………自信を持って前を向けるようにはなったと思う。けど、それを『変わった』と言うには……まだ、何も成せていない。

「…………そんなことより、勝負。すぐに終わらせてあげる。」
「強気ですね……その言葉、そっくりそのまま返しましょう!」


『それでは、2回戦第5試合……カーズ=アイク対フィーリィア、開始っ!!!』


「……倒すっ!」
「接近ですか……返り討ちにしますよ!」

 始まった瞬間に私は両手剣を抜き、カーズが槍を取り出している時間で彼との間合いを詰め切る。そして、一度軽く剣を振るったが当然それは避けられ……反撃の横振りがやってきた。

「…………ふっ!」
「っ!? ……『ウォータースプラッシュ』!」

 私はそれをしゃがんで避け、すかさず剣を食らわせようとするが、ギリギリで放った上級魔法によって塞がれ、距離を取らざるを得なかった。

(水の柱……邪魔!)

 2人の間に現れた水柱すいちゅうを無理やり剣で斬り伏せ、再び迫ろうとしたが……その合間で既に彼の魔法は発動されていた。

「『アクアランス』!!」
「っ、もう化身流が……くっ!?」

 青い光を体から発しながら、カーズは私目掛けて水の槍を数本飛ばしてきていた。それを回避しようにも距離が近すぎたため、最後の1本だけもろに食らってしまう。

(半分削れた……でも、まだここから。)
 アイススフィア !」
「効きません、はぁっ……えっ?」
(……かかった。)

 私は魔法の名前を叫び、カーズの腕の振り払いを誘導した。だが、私は魔法の名前を叫んだであり、決してこちらから氷の塊が飛び出てくることはなかった。
 そして、カーズの振り払いによる水撃を避けながら、今度こそ射程範囲にまで詰め切った。

「っ……このっ!!」

 カーズは焦って槍の振り下ろしを繰り出した来たが………その判断は『間違い』だ。

「…………いま!」
「なっ、どうぐはぁっ!!??」

 振り下ろしに対し、私は同じように剣を上から垂直に振り……丁度、私の剣の上にカーズの槍が来るよう調整してから、速度を落として剣の上に。そこから槍の軌道を誘導するのと同時に、私の剣撃だけを見事に当ててみせた。

「『アイススフィア』!」
「ぐふっ……らぁっ!!」
「いっ……!」

 続け様に氷塊をぶつかるが、その反撃にカーズの蹴りによって生まれた水の衝撃波にやられてしまう。

「……ごり押し、だね……」
「そっちこそ……押し切りが過ぎますね……」

 互いに地面へ手をつきながら、挑戦的意志を伝えるよう睨み合っていく。また、そんな雰囲気とは裏腹に私は冷静に現状を把握する。

(魔力防壁的にはちょっと負けてる……けど、さっきの感じ、カーズは焦ってるはず。焦りは…………『負け』への道標みちしるべ!)

 剣を片手に構え、私は挑発する。

「……化身流、私にもできる。」
「……何を言って…………なっ!?」

 私は空いている片手を空は掲げ……暴走の冷気を少しだけ腕から噴出させる。すると、私の台詞がまさにその現象通りだと錯覚したのか、カーズはありえないと言わんばかりに表情を崩していた。

「ま、まさか……いや、そんな簡単に使えるわけが………」
「成長は人それぞれ……だよ!」

 腕に冷気を纏わせたまま、私は何度目かの接近を仕掛ける。それに合わせるようにカーズは化身流の攻撃を飛ばしてくるが……いい加減、癖も読めてきたため回避するのは容易たやすかった。

「くっ……!!」
「さぁ、食らって……私の………!」
「……っ!? 『光』じゃなくて冷気……騙されたっ!!」

 距離が縮まったところで、私の化身流うそがバレてしまったが……ここまで来ればっ!!

(読み切れ……カーズの行動を!!!)
「………はぁえっ?!?!」

 カーズの予備動作を見極め、私はカーズの槍を薙ぎ払いを…………
 その掴みは一寸の狂いもなく完璧なもので、じかに手に触れたのにも関わらず、衝撃もなく魔力防壁は全くと言っていいほど削れていなかった。

「き、効いて……」
「やれば、できるものだよ…………はぁっ!!」
「ぐ、がほぉっ……!!」


『決着! 勝者はフィーリィア!!!』

 驚きのあまり微動だにしなかったカーズを斬り飛ばし、勝利を収めた。また、そんな勝利の雰囲気を味わいながら……いつの間にかカーズの手からすっぽ抜け、こちらの手と横腹に渡っていた槍を見つめる。

(…………自分ながら、危ない橋だった。)

 
 剣で言う『受け流し』のように、どんな攻撃にもそれをさせる技というのが存在する。今回で言えば、槍はつかの割合が剣よりも長く手で触れられたのが幸いし、その柄を掴むと同時に威力を殺して……成功した。

「……カーズ、これ。」
「は、はい……くそっ、もう少しだったのに…………」

 カーズに槍を返すと、彼は悔しそうに顔を歪ませる。そんな表情を見て……これが『勝負』何だと改めて実感した。


(……負けちゃ、駄目だ。)


 せっかくウルスと組むんだ……中途半端なところで負けてガッカリされたくない。目指すのは…………



「…………優勝。」


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