上 下
53 / 291
五章 選択

五十一話 オリジナル

しおりを挟む
 


「貴族の生活ってどんな感じなんすか? やっぱり豪勢な食事とか出てくるんすかね?」
「いや、貴族といっても僕たちの生活は平民の人たちとほとんど変わりませんよ。」
「そうそう、くらいも一番下だしな。」
「へぇ~てっきりお金持ちなのかと思ってたよ。」
「貴族にも色んな人がいるんだね……」

 学院生活が始まり約2週間。俺たち新入生もここの生活に慣れ、今は談笑して過ごしていた。

 2週間も過ごすとクラスにもある程度のグループが生まれ、俺はミル・ローナ・ニイダの4人に加えて、タッグ戦の試合で仲良くなったソーラとカーズの合計6人と一緒にいることが多くなった。


「…………」


(…………また独りか。)


 ちなみに、ラナはほとんど1人で過ごしていた。
 あの整った見た目から最初は大勢に話しかけられていたが、ラナは初めから誰とも連(つる)む気はなかったようで淡々と受け答えをした結果、今のような立ち位置となっていた。

 ……昔のラナは独りぼっちが嫌いだったのか、よく俺にくっついていたが……成長したのだろうか。



(…………何様って話だが。)





「そういえば……次の授業は何か特別らしいですよ。」
「特別?」
「特別っていえば前みたいなタッグ戦とかっすかね……だったらまたウルスさんと組みたいっすねー」
「あっ、私も組みたい! ウルスって何か凄いことしてくれそうだし面白そう!」
「だ、駄目! 次は私だよ!」


「人気者ですね、ウルスさん。」
「まっ、確かにウルスの戦い方は凄かったし……俺も一回組んでみたいな!」
「…………持ち上げるのはやめてくれ、落ち着かない。」


 …………こうやって同じ年代と過ごすのは違和感があって仕方ない。

 

(まあ………同年代というのはあれだが。)














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



















「この2週間で魔法の基本はそこそこ学べてるはずだろう……そこで、今回は課題を出す。3日後までに私が指定した2人ペアでオリジナル魔法を作り、披露してもらう。」
「えっ、課題?」
「急だな……しかもオリジナル魔法……?」

 授業が始まった途端、ラリーゼがいきなりな課題を言い渡し……クラス全体が騒めき出す。
 そして、ローナも同じように動揺しながら俺たちに聞いて来た。


「オ、オリジナル魔法? それってなに?」
「知らないのか? 既存の魔法ではなく新しく作られた魔法のことだ、お前のフレイムアーマーもそれと一緒だ。」
「オリジナル魔法っすか……楽しそうな課題っすね!」

 ニイダはウキウキとした様子でそう言う。


 オリジナル魔法……自分で魔法を作るというのは、実際みんなが驚くほど難しくはなく、単純な物なら1日あれば作れてしまう…………その場合、既存の魔法と性能が被ったりすることもあるが。
 だが、複数人で3日もあればよっぽどでもない限り魔法ができないことはない。ラリーゼはそれも考慮しているのだろう。


「ラリーゼ先生、質問いいですか?」
「何だ、アイク?」
「オリジナル魔法を作るって、具体的にどのような魔法を作ればいいんですか? 回復魔法とか、攻撃魔法とか……」
「何でもいい。属性も性質もお前たちが自由に決めていい……が、あくまで実用的な魔法にしてくれ。あと、他には無い特殊な物だとより点は高いかもな。」
(特殊な魔法か…………)

 ラリーゼの言う『特殊な物』というのはあまりよく分からないが……要は意外性かつ実用性のある魔法を求めてるのだろう。

「分かりました……では、ペアというのは?」
「そのまんまだ。私が無作為に2人組を指定する……その2人で協力して魔法を使ってもらう。ちなみに魔法は1人用、2人用どちらでもいい。」
「なるほど……ありがとうごさいました。」

 質問をし終わり、カーズは席に座る。

(……以前のタッグ戦でのペア決めは自由だったのに対して、今回はラリーゼが選ぶのか。)

 決め方が違う理由はよく分からないが……何か理由があるのだろうか。
 
 
 (俺たちの新たな可能性…………そんなところだろうか。)


「この課題の期間中、魔法作りに集中してもらうため授業は無しにする……じゃあ、ペアを発表していくぞ。まず………」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで

雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。  ※王国は滅びます。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

処理中です...