45 / 291
四章 タッグ戦
四十三話 何となく
しおりを挟む「転移魔法って便利だよね~」
「そうだな……けど、知らない場所には行けないし、魔力の消費が多いから下手には使えないぞ。」
「でもウルスくんの魔力量なら問題ないよね?」
「……まあな。」
前と同じように森の中に着き、俺たちは街に向かって歩く。
転移魔法は距離が遠くなるほど消費が激しく、ここから師匠の場所に行くなら俺の魔力量でも5%程度は使うのであまり無駄遣いはできない。
(……今のうちにしておくか。)
俺は会話の中、ミルに神眼でステータスを偽証させておく。
「前にも言ったが……ミル、神眼で誤魔化してるだけで力は変わってないからな、気を付けろよ。」
「うん、分かった!」
ミルはステータスを変化させるほどの技術はない。神眼で誤魔化せるのはあくまで表面上だけなので、ヘマをすればすぐにバレてしまう。
それに対して俺はステータスを自在に操ることができ、それに神眼の力を使えば完全に誤魔化せる。
(ミルはともかく、俺は完璧に隠さないと……何故かあのニイダという奴に見抜かれかけたからな。)
森を抜け、街へと辿り着く……どうでもいいことだが、こんなに簡単に街を出入りできるのは人族の国だけらしい。師匠曰く、精霊族・獣人族の国はその種族の紹介のような物がないとすぐには入れないそうだ。
(……相変わらず人が多い。)
プリエは人族の国の中でも一際大きい街であり、人の行き来も俺が住んでいた村の比ではない。
「この中にも学院生はいるのかな?」
「ソルセルリー学院は人が多いからな……特に、派手な格好してる奴らはそうなんだろう。」
「……ウルスくんも派手な色にしたら? 白とかきっと似合うよ!」
「白は流石に………?」
不意に、どこからか木の軋む音が聞こえた。
(……何かが刺さった音、ということは………)
「どうしたの、ウルスくん?」
「……そういうこと、かっ。」
「……それって、クナイ? 何でここに刺さって……」
俺はすぐ近くの建物の壁に刺さっていた……というより、今まさに飛んできたクナイを抜く。
そして、建物裏の路地にあるであろう『奴』目掛けてクナイを投げ返した。
「な、投げ……!?」
「うぉっと!」
ミルが驚くや否や、そんな素っ頓狂な声が聞こえてきたと同時に奴……ニイダが飛び出してきた。
「ま、前より速く投げたっすね!? 危く当たるところだったっすよ!」
「仕掛けられたから返しただけだ……というか、お前には『素直に話しかける』の選択肢はないのか?」
「えぇーそれじゃ面白くないじゃないっすか。」
「………はぁ。」
こいつは一体何を考えているのやら…………
「ウルスくん、その人は?」
「ああ……こいつはニイダ、試験会場で出会った挨拶を知らない男だ。」
「なんすかその紹介……どうもニイダっす、あなたは………彼女さん?」
「そうだ……」
「違う。」
ミルの冗談を遮る……ややこしくなるから本当にやめて欲しい。
「こっちはミルだ、俺とは……家族? みたいなものだ。」
「えぇ……じゃあやっぱり彼女?」
「そうじゃない……まあ、色々あるんだよ。」
「へぇ……じゃ、そういうことにしておくっすよ。」
俺に答える気は無いと思ったのか、ニイダは話を終わらせ先に行こうと指を回した。
3人で学院へと歩きながら向かっていると、ニイダが問いかけてくる。
「学院って、具体的に何をするんすかね?」
「それは……魔法の知識や訓練、世界の事とかも学ぶらしいが……それはお前も知ってるだろ?」
「いやぁ、何となくここに来たんで。」
……何となくで入れるほど、ここの試験は甘くないはずだが…………
(……こいつのことを考えても仕方ないか。)
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで
雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。
※王国は滅びます。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる