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三章 入学試験 (学院編)
四十話 串焼き
しおりを挟む試験も終わり、3日目。
俺とミル、そしてローナは合格発表を見に再び学院へと足を向けていた。
成績順に合格者が張り出されているボードに、ローナは血眼で探していた。
そして…………
「あ……あった!! 合格だぁっ!!!」
「私もあったよ!」
「……俺もあったな。」
「じゃあみんな合格か……やったねっ!!」
「うっ、苦しい……苦しいよローナさん!」
ローナ喜びながらミルに抱き、ミルも満更でもなさそうな顔をして一緒にはしゃいでいた。
そんな2人を横目に、俺はある2つの名前を探す。
(ニイダは……やっぱりあるな。)
「……? ………はぁ。」
ニイダの名前を見つけた途端、俺に視線を向けている気配を感じ取る。
俺は渋々その方向を見ると、やはりニイダがニヤッとした表情でこちらを見ていた。
「どうしたの、ウルスくん?」
「いや………何でもない。」
ミルに聞かれ、返事をした際にニイダから視線を外した。一応再びニイダが居た方向を見ると……既に居なくなっていた。
(本当に忍者みたいな奴だ………)
「あの金髪の人が次席かぁ、確かに強かったもんな。」
「教師に勝った数少ない人らしいぜ、それに平民らしい……ついでに可愛かったし。」
「マジか……美人で強いなんて凄いな!」
(……昨日の奴か。)
周りの声を聞き、俺はトップの方の名前を眺める。一応順位通りに並ばれているので上位の方を見れば………
「………………」
『次席 ライナ』
「………本当に……!」
……ラナは……生きていた?
……いや、確かあの日……ラナたち家族は旅行に出ていると聞いていた。だから生きているのは当然……
(…それを忘れるほどに……)
………だが……何故ここに……?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねぇ、合格祝いとしてどこか行かない? お勧めの店があるんだ!」
「そうなんだ……ウルスくん、どうする?」
「……………」
「……ウルスくん?」
「……え、あ…ああ、いいぞ。時間はあるし。」
俺はミルに聞かれ、生返事をする。
さっきの……ラナのことが頭の中をグルグル回って、何も考えられない。
(俺は、どうすれば…………)
「じゃあ行こう! もう少ししたら食べれる店があるんだけど……ちなみに何がイチオシだと思う?」
「う~ん、なんだろ……パンとか?」
「違う違う、もっとガッツリしたのだよ。ウルスは何だと思う?」
「……………」
「……おーい、ウルス? どうしたのっ、て!」
「っ……ああ、そう……だな……」
ローナに小突かれ、俺はよろけながらも頭を振るわせて思考を切り替えさせる。
(イチオシ……確か…………)
「若鶏の……串焼き?」
「え……凄いピンポイントだね!!? しかもあってるし……よく分かったね?」
「……一度ここには来たことがあるんだ。そこで以前この近くの店で勧められた物がそれだったから……と思って。」
「へぇ……『偶然』もあるんだね~……おっ、着いたよ。じゃあ行こうか!」
「ちょ、ちょっとローナさん、そんなに引っ張らないで……!?」
ローナは合格した興奮もあってか、ミルの手をブンブン振りながら店へと入っていく。
(……たった3日間で………色々あったな。)
ローナとの再会、ニイダという喰えない奴に……ラナのこと。
前の2つはいいとして……ラナのことは…………考えなければいけない。
「ウルスくん、どうしたの?」
「早くしないと全部食べちゃうよ!」
「……ああ、今行く。」
(……今はやめておこう。ミルにせっかく友達ができたんだ、そのことを喜ばなくてどうする。)
俺はそう割り切り……思考を一度やめた。
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