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三章 入学試験 (学院編)

三十二話 紫

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 ローナとの戦いが終わり、今は2人で残りの試合を座りながら観ていた。
 その時、ローナが何故と言わんばかりに聞いてきた。

「ねぇウルス……さっきのって、どういうこと?」
「……さっきって言うのは?」
「ライトだよ。ライトって一直線に光が飛ぶ魔法だったよね……なのに何で曲がったの?」
「ああ……ライトを使う前、ローナがアクアランスを壊しただろ? その時に飛び散った水飛沫を凍らせて、その小さな氷にライトを当てて光を反射させて軌道を変えたんだ……その光がローナの目に届くかは少し運だったけどな。」

 ……まあ、仮に決まらなかったとしてもまだまだ策はあったがな。

「えっ………反射? 何で氷に光が当たったら反射するの?」
「……それは…………物に光が当たれば光は反射するだろ? まあ氷は光を透過する量も多いが……ライトの光量なら反射した分でも十分な光の強さが……」
「くっせつ?」
(…………?)

 ……そこまで難しいことは言ってないはずだが……どこか話が噛み合っていないような気がする。

「……何だかよく分からないけど、をしたんだね!」
「あ、ああ…………」
「はぁぁ~でも何か不完全燃焼だなぁ、もっと戦いたかった! 結構早く終わったけど、ちゃんと観られてたかなぁ?」


 ローナは悔しそうに声を上げる。
 ……ローナはこう言ってるが、ローナ自身もそれなりの強さを持っていた。特に、あのフレイムアーマーとやらのオリジナル魔法は試験官の目にも止まったはず。決して悪い成績ではないだろう。



「……そういえば、ミルは大丈夫かな?」
「それは心配ない。ミルは強いからな。」
「へぇー、信頼してるね。」
「……まあ、そうだな。」

 ミルは俺と同じ、師匠の弟子だ。心配することなんて何もない…………むしろ、手加減を間違えないが心配なくらいだ。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「あ、ウルスくんとローナさん!試合はどうだったー!」

 1日目の試験が終わり、学院の入り口近くに2人でミルを探していると、背後からミルのそんな声が聞こえてきた。

 そして振り返ると…何故か俺目掛けて突進してきていた。

「………あれ?」
「はぁ………」

 俺は体を傾け、ミルの突進を避ける……本当に油断も先もありやしない。

「……まあまあだったな。取り敢えず、落ちることはないと思う。」
「『まあまあ』って……その言い方はひどいよ!」
「……? もしかして二人で戦ったの? どっちが勝ったの?」
「わたっ……」
「俺だ……嘘をつくな。」
「ちぇ~」

 ローナが口を尖らせている。すると、ミルは何か思い出したかのようにローナに話を振った。

「……ローナさん、そういえばなんだけど……」
「ん、なに?」
「最初、ウルスくんのこと『ユウ』って人と間違えていたよね……そのユウって人はどんな人なの?」


 ミルにそう聞かれると、ローナは自慢げに語り出した。


「ユウかぁ……不思議な人だったよ。昔、私が変な人に絡まれてた時に助けてくれた旅人なんだけど……それがめちゃくちゃ強くってさ。その助けられた後に物凄い魔物が街にやって来たんだけど、それもあっさり倒しちゃって。」
「へぇ……それで、その人とウルスくんを間違えたってことは、結構見た目とか似てたの?」
(……似てるも何も、『俺』だからな。)

 ……それにしても、何故ローナは俺のことをユウだと判断しなかったのだろうか。あの時の俺と今の俺は何か変わったの…………




「いやぁ……見た目や雰囲気は全く一緒だったんだけど、が違ったんだよ。」
「目の色?」
「うん、ウルスは黒だけどユウは『紫』だったんだ。だから間違えちゃって……」
「……紫?」



「…………」



 ………そういうことか。



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