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二章 『強く』なるために
十七話 危機感
しおりを挟む「…ここか、意外と人はいるな。」
「……強そうな人たちがいっぱい……」
ユウについて行き、街の門前まで着くと……そこには様々な武器や防具を付けた冒険者などがたくさん立っていた。
まだ魔物はここまで辿り着いていないようで、冒険者たちは事前の作戦会議などをしていた。
(……あっ、あれは……)
よく見ると……その中には、有名なソルセルリー学院の人たちも数人いた。これなら街への被害も……
「ん…あんたら子供じゃないか?ここは危ないぞ。」
なんて呑気なことを考えていると、不意に背後から声をかけられる。
振り返ると、そこには背中に大きな斧を背負ったガタイのいい男が立っていた。
「え、あ、その……」
「いや、大丈夫だ。自分の身は自分で守るから俺たちのことはほっといてくれ。」
「そうか……じゃあ、勝手にしてくれ。邪魔だけはするなよ。」
急に話しかけられ困惑していると、ユウが代わりに返事をしてくれた。
……これくらいでビビってたら駄目だ、もっとしっかりしないと………
「……そういえばユウ、『俺も参加する』とか言わなくて良かったの?ユウは強いんだし『全部やっつけてやるっ!』とかいえば……」
「……俺たちは子供だ、そんなこといきなり言っても信用されないだろ。それに俺はステータスを見せる気はないし……できることなら目立ちたくない。魔力感知でもあまり強い奴もいなさそうだし、余計なことをする必要はない。」
「うーん……ユウの実力が見たかったけどなぁ…」
……にしても、ユウはよく考えてる。もし私がユウならとにかく魔物を倒しまくっちゃいそう……
「それで……ユウはどうやって魔物と戦うつもりなの?」
「……さっきも言ったが、俺はあまり目立ちたくない。だから基本的に雑魚を倒していくつもりだ。」
「雑魚?ゴブリンとかのこと?」
「ああ、そうだ……」
不意にユウは話すのをやめ、ある方向へ指を指した。
その方向を見てみるとゴブリンやオーク、ゴブリンウォーリアーなどの魔物が大量発生しており、あきらかに危険そうな気配だ。
その中でもゴブリンウォーリアは普通のゴブリンよりも体がでかく、動きも早いのでかなりの強敵として認知されている。少なくとも私1人じゃ倒せないほどに強いのだが……
「……ほ、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だ、あれくらいならここにいる人たちでも倒せる………ローナ、手を出せ。」
「え、なんで?」
「今からお前に魔法を付けるんだ。」
「魔法…?」
疑問に思いながらも、私はユウに言われた通りに手を出す。
すると、ユウは私の手に触れ……何かしらの魔法かけた。
(……?特に何もないけど……)
「今、お前の周りに俺と同じぐらいの魔力防壁みたいな物を張った……まあ、発動するようなことはないと思うけど。」
「そ、そうなんだ……」
(…あれと同じぐらいって、めちゃくちゃ強いんじゃないの?)
そんなことを思っていると、集まって話し込んでいた冒険者たちが声を上げた。
「よし、みんな!!この町に絶対あいつらを入らせるなよ……じゃあ行くぞぉ!!!」
「「「「「オォォーーー!!!!」」」」」
1人の掛け声に、周りの人達も雄叫びを上げた。
「俺たちも行くぞ。」
「……うん。」
ユウに言われ、私は後を追って走り出す。
見たところ戦士は前線で、魔法使いは後衛でと別れて戦っているようだった………が、1人だけ後ろの方で棒立ちしている女の人がいた。
(何だ、あの人……?)
「お前ら、危ない!」
「…えっ?」
謎の女の人に気を取られていると、いつの間にかゴブリンが目の前に来ていた。
(やばいっ……!?)
「………はぁ。」
しかし、前にいたユウが溜息を吐きながらゴブリンを蹴飛ばしてくれた。
吹き飛ばされたゴブリンは灰となり、ギリギリ視認できるくらいの魔力石を残していった。
「…周りを観察するのはいいが、もう少し危機感を持ってくれよ。いくら雑魚とはいえ、油断しすぎだ。」
「ご……ごめん、気をつける!」
私は頬を軽く叩き、ぼんやりしていた意識に喝を入れる。
(自分の身は自分で守る………)
……自分で行くって言ったんだ。守られているとはいえ、ぼやばやしてたら駄目だ!
「魔法は使えるんだったな?……なら、抜けてきた魔物を………殺すぞ。」
「う……うん、分かった。」
ユウの言葉に含まれた謎の『重さ』に戸惑いながらも、私は今度こそ魔物へ向かっていく。
(………何で、『重く』感じたのかな……)
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