3 / 7
3話
しおりを挟む
エイデンと私は花が咲き誇る庭のベンチに座って話している。
「私の本当の名前は嶋田亜希というんです」
「シマダアキ?変わった名前だね。どこまでが名字なの?」
「嶋田が名字です。あ、こちら風で言うとアキ・シマダですね」
「なるほど。こちら風ってことはアキは別の国から来たの?」
「別の国というか…そもそもこの世界ではないんですよ」
「この世界じゃない??なんだか難しいね」
エイデンは考え込むように座っている。
「まぁ別の国みたいなものですよ」
アキはこれ以上考えさせないように無理やり結論を出す。
「そうなの?…そうだ、アニタは自由になりたいと言ってたみたいだけど具体的には何がしたいの?」
アキは一瞬行っていいのか悩む。アニタの言う自由がエイデンを驚かせるものになるかもしれない。
「どうしたの?」
「えっと…アニタは…」
「うん」
「…士になりたいんです」
「ん?」
「騎士になりたいんです!」
「え、でも王家の騎士になったら今より自由なんてないよ??」
「いえ、王家の騎士ではなく魔物を狩る騎士?になりたいそうなんです」
「魔物を狩る騎士って…酷薄の騎士か!?」
彼はベンチから勢いよく立ち上がる。
「え?こくはくの騎士?」
キョトンと座っているアキは頭に告白という文字が浮かんだがエイデンの驚き方を見て違う意味だと確信した。
「アニタが酷薄の騎士に!?どうして!」
頭を抱えてブツブツつぶやいているエイデンを見て、内心しまったと思った。
「あの…酷薄の騎士ってなんですか?」
エイデンを少しでも落ち着かせるために座らせるため、隣をポンポンと叩く。
「うーん、これは二つ名なんだよ。酷薄っていうのはね残酷で薄情って意味なんだけど…本当の名前は魔物討伐騎士団っていうんだ」
「なるほど…その魔物討伐騎士団にアニタは入りたいってことですね」
「どうしてアニタは酷薄の騎士になりたいなんて…」
「きっかけは確か…アニタが8歳の頃に馬車で移動しているときに魔物が現れて…」
「え!そんな話聞いてないぞ!!」
エイデンはアキの肩をガシッと掴んで目を見開き前後に揺らす。中に健康な人が入っているとしても病み上がりをそんなふうに扱うのはどうかと思う。
「落ち着いてエイデン兄様。アニタは傷一つついてません!話はここからです!」
「あ、ごめん。ちゃんと聞くよ」
「それでアニタが乗った馬車に魔物が襲いかかったとき、その魔物討伐騎士団が倒してくれたそうなんです。その時の光景が頭から離れないって…」
「…本当はその中の誰かに惚れたんじゃないの?」
「いいえ。颯爽と魔物と戦う姿がかっこよかったと言っていましたよ。それに女性の騎士も居たから自分もなれるかもって」
「惚れたのならまだ良かったのに」と大きなため息をつくエイデンはこの少しの時間で何度も頭を抱えている。しかしハッと笑顔を浮かべた顔を上げる。
「アニタは体力がない!騎士は体力が第一だから…!」
「それが言いにくいのですが…アニタは基礎体力どころか闘い方すら身につけているんですよ」
そう…今17歳のアニタは8歳の時に魔物討伐騎士団に憧れた。その間の9年間ただ憧れていただけで留まるはずなく、家族に内緒で特訓をしていたそうだ。その上アニタを強くしたのは、それまで秘められていた才能が開花したためである。入れ替わった私が剣を持っただけでも、勝手に構えをとるくらい体に染み付いている。
「そっか…アニタは勉学だけでも他のご令嬢たちよりずば抜けていたからな、ハハ」
もうエイデンは乾いた笑いしか出ないようだ。
「まぁ…私はアニタの夢を叶えてみせますよ」
スクッと立ち上がりエイデンの目をしっかりと見る。
「…君は、アキはいいの?酷薄の騎士っていわれるくらい恐れられているし、魔物を狩らなければいけないんだよ?」
エイデンがここまで賛成しない理由は心配で仕方がないからだろう。
「大丈夫よエイデン兄様!だってアニタと私は二人で一つ。最強なのよ?」
アキはそう言ってニッと令嬢らしくないワンパクな笑みを浮かべる。
「……!そっか、そうだね!」
立ち上がったエイデンの背丈はアニタより高くたくましい。
「兄である僕を困らせるなんて困った妹達だよ」と、乾いた笑いとはまったく違う温かい笑顔に優しい手つきで頭をなでた。
「私の本当の名前は嶋田亜希というんです」
「シマダアキ?変わった名前だね。どこまでが名字なの?」
「嶋田が名字です。あ、こちら風で言うとアキ・シマダですね」
「なるほど。こちら風ってことはアキは別の国から来たの?」
「別の国というか…そもそもこの世界ではないんですよ」
「この世界じゃない??なんだか難しいね」
エイデンは考え込むように座っている。
「まぁ別の国みたいなものですよ」
アキはこれ以上考えさせないように無理やり結論を出す。
「そうなの?…そうだ、アニタは自由になりたいと言ってたみたいだけど具体的には何がしたいの?」
アキは一瞬行っていいのか悩む。アニタの言う自由がエイデンを驚かせるものになるかもしれない。
「どうしたの?」
「えっと…アニタは…」
「うん」
「…士になりたいんです」
「ん?」
「騎士になりたいんです!」
「え、でも王家の騎士になったら今より自由なんてないよ??」
「いえ、王家の騎士ではなく魔物を狩る騎士?になりたいそうなんです」
「魔物を狩る騎士って…酷薄の騎士か!?」
彼はベンチから勢いよく立ち上がる。
「え?こくはくの騎士?」
キョトンと座っているアキは頭に告白という文字が浮かんだがエイデンの驚き方を見て違う意味だと確信した。
「アニタが酷薄の騎士に!?どうして!」
頭を抱えてブツブツつぶやいているエイデンを見て、内心しまったと思った。
「あの…酷薄の騎士ってなんですか?」
エイデンを少しでも落ち着かせるために座らせるため、隣をポンポンと叩く。
「うーん、これは二つ名なんだよ。酷薄っていうのはね残酷で薄情って意味なんだけど…本当の名前は魔物討伐騎士団っていうんだ」
「なるほど…その魔物討伐騎士団にアニタは入りたいってことですね」
「どうしてアニタは酷薄の騎士になりたいなんて…」
「きっかけは確か…アニタが8歳の頃に馬車で移動しているときに魔物が現れて…」
「え!そんな話聞いてないぞ!!」
エイデンはアキの肩をガシッと掴んで目を見開き前後に揺らす。中に健康な人が入っているとしても病み上がりをそんなふうに扱うのはどうかと思う。
「落ち着いてエイデン兄様。アニタは傷一つついてません!話はここからです!」
「あ、ごめん。ちゃんと聞くよ」
「それでアニタが乗った馬車に魔物が襲いかかったとき、その魔物討伐騎士団が倒してくれたそうなんです。その時の光景が頭から離れないって…」
「…本当はその中の誰かに惚れたんじゃないの?」
「いいえ。颯爽と魔物と戦う姿がかっこよかったと言っていましたよ。それに女性の騎士も居たから自分もなれるかもって」
「惚れたのならまだ良かったのに」と大きなため息をつくエイデンはこの少しの時間で何度も頭を抱えている。しかしハッと笑顔を浮かべた顔を上げる。
「アニタは体力がない!騎士は体力が第一だから…!」
「それが言いにくいのですが…アニタは基礎体力どころか闘い方すら身につけているんですよ」
そう…今17歳のアニタは8歳の時に魔物討伐騎士団に憧れた。その間の9年間ただ憧れていただけで留まるはずなく、家族に内緒で特訓をしていたそうだ。その上アニタを強くしたのは、それまで秘められていた才能が開花したためである。入れ替わった私が剣を持っただけでも、勝手に構えをとるくらい体に染み付いている。
「そっか…アニタは勉学だけでも他のご令嬢たちよりずば抜けていたからな、ハハ」
もうエイデンは乾いた笑いしか出ないようだ。
「まぁ…私はアニタの夢を叶えてみせますよ」
スクッと立ち上がりエイデンの目をしっかりと見る。
「…君は、アキはいいの?酷薄の騎士っていわれるくらい恐れられているし、魔物を狩らなければいけないんだよ?」
エイデンがここまで賛成しない理由は心配で仕方がないからだろう。
「大丈夫よエイデン兄様!だってアニタと私は二人で一つ。最強なのよ?」
アキはそう言ってニッと令嬢らしくないワンパクな笑みを浮かべる。
「……!そっか、そうだね!」
立ち上がったエイデンの背丈はアニタより高くたくましい。
「兄である僕を困らせるなんて困った妹達だよ」と、乾いた笑いとはまったく違う温かい笑顔に優しい手つきで頭をなでた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた
ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。
マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。
義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。
二人の出会いが帝国の運命を変えていく。
ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。
2024/01/19
閑話リカルド少し加筆しました。
オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる
坂森大我
ファンタジー
幼馴染みである奥田一八と岸野玲奈には因縁があった。
なぜなら二人は共に転生者。前世で一八は災厄と呼ばれたオークキングであり、玲奈は姫君を守護する女騎士だった。当然のこと出会いの場面は戦闘であったのだが、二人は女神マナリスによる神雷の誤爆を受けて戦いの最中に失われている。
女神マナリスは天界にて自らの非を認め、二人が希望する転生と記憶の引き継ぎを約束する。それを受けてオークキングはハンサムな人族への転生を希望し、一方で女騎士は来世でオークキングと出会わぬようにと願う。
転生を果たした二人。オークキングは望み通り人族に転生したものの、女騎士の希望は叶わなかった。あろうことかオークキングであった一八は彼女の隣人となっていたのだ。
一八と玲奈の新しい人生は波乱の幕開けとなっていた……。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
辺境伯に嫁いだけど、自宅裸族なのを隠したい
参
恋愛
【完結】結婚適齢期が過ぎた公爵家のメーラに突然結婚の話が浮上した。相手は兄の友人で、魔物の血が混じっているからと敬遠されていた男性だ。メーラの意思を無視して彼女の家族は結婚の手続きを済ませ、早々に辺境伯に嫁ぐことになってしまう。
彼女には誰にも知られたくない秘密があった。自宅で裸で過ごすという習慣だ。自宅裸族の趣味を知られたくないが為に、結婚相手に無理難題な条件を付けて避け続けていたのに、兄の友人レイオン・ゼストス・ディアフォティーゾ辺境伯は条件を全部飲むと言う。
結婚が決まりすぐに辺境伯領の屋敷に移ったメーラは彼が全て了承済みである事を知る。室内では裸で過ごし、外では室外犬のフォティアに懐かれ、一人と一匹でのんびりとした時間を過ごしていた。
しかし自宅裸族をレイオンに知られてしまい、二人の関係に変化が訪れた。メーラはレイオンの秘密を知り、徐々に二人の関係が深まっていく中でメーラはレイオンに心を寄せていき、最後にはフォティアの秘密も知る事になる。
表情に乏しい辺境伯と自宅裸族の令嬢が距離を縮めていくだけのラブコメ。
本音→自宅裸族を書きたい
前作~魔王でしたと同じ世界線、というか隣国エクセロスレヴォを舞台にしたものです。こちら単体で読めます。よくある氷の~と詠われる男性の心溶かす系もどきな話。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる