不老不死と拾われ弟子

シーカピ

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蜃気楼

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カミラが砂の中に引きずり込まれて数分後、砂嵐が起こりその中から現れる。頭についた砂を落とすため頭を横に振り、手で服についた砂もパッパッとはたいていると、後ろからノアが駆け寄ってきた。

「師匠!…あれ、サリヴァードさんは?」
「砂の中にいるから心配ない」
「そうなんですね!…師匠、仲直りできたんですか?」

ゆっくりとノアの方を振り向き、ニコリと笑う。私のそんな顔を見て満面の笑みへと変わるノアは何も知らないのだ。まぁ後ろにいるヴァルは何か気づいているようだが。

 嬉しそうなノアと何かを考え込むヴァルを横目に砂漠を離れ、家へと帰ってくるが、その瞬間ノアの顔からサーッと血の気が引いていた。

「な、な…なんですか!?これは!!!」

グルンっと私の方に振り返ったのでチラッとヴァルケンドを見るとキッとあっちを睨み始めた。
家があった場所にはバラバラになった木材や荒れた畑、生き生きと伸びていた木がポッキリ折れているのだ。
睨まれている本人は知らん顔を決めているため、怒りが爆発するのは時間の問題だ。

「ヴァル、元の状態に戻してくれ」
「なんで俺が…」
「こんな状態にしたのは誰だ?」

そう言うとバツが悪いのか目をそらし「おらよっ」と手をブンッとふる。するとみるみるうちに元の状態へと戻っていった。

「…まぁ今回は見逃しましょう」
「あ?まだまだガキな弟子には言われたくねぇな」
「だ、誰がガキですか!!だいたいあんただって…!」

ギャンギャン言い争っている中カミラはドアを開けて、やがてひっそりと自分の部屋へ入った。二人が気づいたのはそれから2時間後だった。

「あんたのせいでカミラ様が部屋に入っちゃったじゃないですか!」
「....今何ていった?」
「だからあんたのせいで部屋に…!」
「違う、今カミラと言ったか!?」
「はい、それがなんですか?」
「…ぶな」

ヴァルケンドは肩を震わせながらぼそっとつぶやく。

「え?」
「お前みたいな小僧ごときがその名を軽々しく呼ぶんじゃねぇ!!」

ビリビリッと周囲が震え、今までの言い争いは全部本気ではなかったのだと感じた。身体が押しつぶされそうなほどの威圧感、鼓膜までもが震え、足がガクガクになり立っていられず膝をつく。

「ハッ!この程度の威圧でそんなんじゃぁまだまだだな」

ヴァルケンドは膝をついたまま立てないノアに近づいていき、耳元で囁く。

「カミラにお前は必要ないんだよ」

必要ない、その言葉に頭を殴られたような気がした。顔をあげると底冷えするような無機質に光る瞳と目があう。やがてその言葉は喉を通り、お腹へとおちる。その瞬間不安感が急激に増加して逆流し、口から吐き出してしまった。
ヴァルケンドは嗚咽を繰り返すノアを見てチッと舌打ちをした後、そのままドラゴンへと姿を変え帰っていった。
 ヴァルケンドが帰った後も吐き気は収まらず、落ち着いたのは約一時間後だった。少し自分の部屋で休み、気持ちを切り替えるために顔を洗う、手がかじかむような冷水で何度も何度も。
 そのままいつものように朝食の準備をし始める。当然食欲は湧かなかった。師匠もいつもより遅く起きてきた。
 それからお腹にもやもやを抱えながらもいつもと同じような日々が続いていたある日、師匠からあることを提案してきた。

「ノア、久しぶりにサリヴァードに会いに行かないか?」
「いいですね!すぐ支度しますか?」
「ああ、頼む」

すぐに支度は済んだ。家を出てそのまま砂漠の方に二人で向かっていると、師匠が急に立ち止まる。

「すまんノア。先に行っててくれ、忘れ物をした」
「分かりました、では先にサリヴァードさんに合流しておきますね!」

コクリと頷き今来た道をサーッと戻っていく。自分もそのまま砂漠に向かい、サリヴァードさんを見つけた。

「あ!サリヴァードさん!」
「…ノアくんじゃないか!久しぶりだね」

しっぽを振って嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる。

「突然どうしたんだい?」
「サリヴァードさんに会いに来ました!」
「それは…嬉しいねぇ」
「あ、あと師匠も来るそうですよ」
「師匠?どんな人かい?」

最初は聞き間違いと思った。「えっ?」と聞き返したが「どんな人なんだい?」と聞かれる。聞き間違いではなかった。

「どんな人って…カミラ・フローレス様ですよ」
「ほぉ~きれいな名前の人だね!」
「え…?じょ…冗談はやめてくださいよー」

サリヴァードは頭をコテンとする。まるで冗談とは思えない反応だった。その瞬間嫌な予感がする。どうして友人だと言っていた師匠に心当たりが無いのか、まるで記憶がなくなってるみたいに。そしてなぜ師匠は未だにここについていないのか…師匠の速さならすでについてるはずなのに。

「すみません!!ちょっと失礼します!!」

サリヴァードの方を振り返らず、全速力で家へと戻りバンっと扉を開ける。人気は無かった。ゆっくりと足を踏み入れると空気がひんやりとしている。微量のオーラも感じられないということはここには戻ってきてないのだ。
 カミラはこの日ノアの前から姿を消した。
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