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陰謀
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ヴァルケンドが人型へと変化した姿はなんとも雄々しく勇ましい。顔もノアとは系統が違うものの整っているのではないだろうか。神獣というものはそういう見た目をしているものが多いのだ。
「ほら人型になってやったぞ」
「そうだな」
「ほら、他に言うことはないのかよ」
「他に?」
疑問形で言うとヴァルはガシガシと頭をかき、わざとらしくため息をつく。こいつとの付き合いは長いが未だによくわからないときがある。
「何がご不満だ?」
「…別に何もねぇよ」
カミラはよく分からないとでも言いたげな顔でヴァルケンドを凝視したが結局何も読み取れなかったようだ。数秒間流れる沈黙を破ったのはヴァルケンドからだった。
「それで…お前に弱点なんてあんのか?」
周りに他のものが入らないようバリアを張りコクリと頷く。ヴァルは次の言葉を待つように私の目をじっと見る。
「…弟子だ」
「……は?」
「私の弟子である人間、ノアだ」
今度はヴァルが眉間にシワを寄せ、訳がわからないという顔をする。ノアのことは秘密にしておこうかと思ったが、隠し通すのは難しいだろうから正直に言ったほうがいいと判断した。
「あのお前が…人間の弟子?」
「あのって…」
「いやそうだろ。だって…」
ヴァルケンドは一呼吸おいてカミラへと困惑した表情で言い放つ。
「カミラは人間に対して無関心じゃねぇか!!」
神獣というものは自分の種族を愛し守護する。滅びないように繁栄するように、それは龍の神獣であるヴァルケンドも例外ではない。しかし、同じ神獣のカミラは人間に対してとても無関心だった。誕生してから一度も人間に対して加護を与えたことがなく、目の前で人が他の種族のものに殺されても「自然の摂理だ」と気にもとめない。稀に気に入られた者がいたがその者はカミラによって消された。
「そんなお前が弟子……!?」
開いた口が塞がらないヴァルケンドにカミラはコクリとうなずく。
「…え?なん、どうして!?」
「落ち着け、ヴァル」
「いや落ち着けるか!…いつからだ!いつから弟子に…」
ヴァルは興奮しているのかグイグイ私に歩み寄ってくる。詳しく聞かせろと目がギラギラと光っているように見えるのは気のせいなのかは分からない。あまりの熱意に観念し、ノアに出会ってから今までのことをすべて話した。
話し終わる頃にはヴァルケンドは頭を抱え唸っていた。
「あのお前が人のガキを育てる?魔法を教える?お前本当にカミラか…?」
困惑し続けるこいつを見るのは面白いが、もう一つ伝えなければいけないことがあるんだよな…。
「ヴァルケンド」
そう名前を呼べばヴァルはピタッと話すのをやめこちらを静かに見る。急にこっちに来るといった時は驚いたが今来てくれて良かった。本当にタイミングがいいやつだ。
「ノアは私の後継者にするつもりだ」
「……は!?」
今日はずっとこいつの驚いた顔を見ている気がする。滅多に見れない表情に思わず笑みがこぼれポロッと本音が漏れる。
「私は長くないだろうな」
ヴァルケンドの風圧に耐えた木々がザーっと揺れる中、ヴァルケンドは時が止まったと思うほど呆然と笑顔のカミラを見つめていた。
「ほら人型になってやったぞ」
「そうだな」
「ほら、他に言うことはないのかよ」
「他に?」
疑問形で言うとヴァルはガシガシと頭をかき、わざとらしくため息をつく。こいつとの付き合いは長いが未だによくわからないときがある。
「何がご不満だ?」
「…別に何もねぇよ」
カミラはよく分からないとでも言いたげな顔でヴァルケンドを凝視したが結局何も読み取れなかったようだ。数秒間流れる沈黙を破ったのはヴァルケンドからだった。
「それで…お前に弱点なんてあんのか?」
周りに他のものが入らないようバリアを張りコクリと頷く。ヴァルは次の言葉を待つように私の目をじっと見る。
「…弟子だ」
「……は?」
「私の弟子である人間、ノアだ」
今度はヴァルが眉間にシワを寄せ、訳がわからないという顔をする。ノアのことは秘密にしておこうかと思ったが、隠し通すのは難しいだろうから正直に言ったほうがいいと判断した。
「あのお前が…人間の弟子?」
「あのって…」
「いやそうだろ。だって…」
ヴァルケンドは一呼吸おいてカミラへと困惑した表情で言い放つ。
「カミラは人間に対して無関心じゃねぇか!!」
神獣というものは自分の種族を愛し守護する。滅びないように繁栄するように、それは龍の神獣であるヴァルケンドも例外ではない。しかし、同じ神獣のカミラは人間に対してとても無関心だった。誕生してから一度も人間に対して加護を与えたことがなく、目の前で人が他の種族のものに殺されても「自然の摂理だ」と気にもとめない。稀に気に入られた者がいたがその者はカミラによって消された。
「そんなお前が弟子……!?」
開いた口が塞がらないヴァルケンドにカミラはコクリとうなずく。
「…え?なん、どうして!?」
「落ち着け、ヴァル」
「いや落ち着けるか!…いつからだ!いつから弟子に…」
ヴァルは興奮しているのかグイグイ私に歩み寄ってくる。詳しく聞かせろと目がギラギラと光っているように見えるのは気のせいなのかは分からない。あまりの熱意に観念し、ノアに出会ってから今までのことをすべて話した。
話し終わる頃にはヴァルケンドは頭を抱え唸っていた。
「あのお前が人のガキを育てる?魔法を教える?お前本当にカミラか…?」
困惑し続けるこいつを見るのは面白いが、もう一つ伝えなければいけないことがあるんだよな…。
「ヴァルケンド」
そう名前を呼べばヴァルはピタッと話すのをやめこちらを静かに見る。急にこっちに来るといった時は驚いたが今来てくれて良かった。本当にタイミングがいいやつだ。
「ノアは私の後継者にするつもりだ」
「……は!?」
今日はずっとこいつの驚いた顔を見ている気がする。滅多に見れない表情に思わず笑みがこぼれポロッと本音が漏れる。
「私は長くないだろうな」
ヴァルケンドの風圧に耐えた木々がザーっと揺れる中、ヴァルケンドは時が止まったと思うほど呆然と笑顔のカミラを見つめていた。
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