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厄介者
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朝、パチっとノアは目が覚める。自分の用意を済ませたあと、ベッドから出てこない師匠の毛布をはいで朝食を作る。
カミラは起こしてからはっきりと目覚めるまでに時間がかかるので弟子がご飯を作るのにも専念できるのだ。
少ししてのそっと寝室からカミラが出てきた。いつもの席へと向かって歩くが、途中でピタッと止まる。しかし、ノアは無視してご飯の準備をしている。
実はカミラには最近困った癖がある。それはどこでも眠かったら寝てしまうことだ。しかも声を何度もかけてもなかなか起きない。立ったままでも寝れるし、水の中だろうと眠ることができる。そんなカミラにノアはどうしたものかと思っていた。
ノアは朝食を食卓に並べてカミラに声をかける。
「師匠、起きてください!もう朝食できてますよ!」
「うぅ…ん」
まだ寝ぼけた師匠を促して定位置へと座らせるが、しきりに目をこすりあくびをしていた。
(全く…最近は起こしてもすぐ寝てしまうし、寝る時間も長い。…そういえば最初からこんなに寝てたっけ?こんなに眠りだしたのはいつから…)
突然ガタンッという大きな音に思わずビクリと体が跳ねる。顔をあげると先程までウトウトしていたはずの師匠がすごい剣幕で立っていた。いつもの揺らめきのない湖のような静かな瞳は今や牙を剥く獣のような凶暴さが含まれていた。
「し…師匠?どうしたんでー・・・」
「来たか」
「来たって何が…?」
聞き返そうとすると、師匠はこちらを見ることなくパチンと指を鳴らす。次の瞬間、隣で鳥が飛んでいる場面へと切り替わった。
「…え?」
澄んだ淡色の青、見下ろせば白いふわふわの層ができている。ここは…空か!それに下の雲に段々と近づいている。つまり俺は落下しているんだ。この事実に気づくまでに時間がかかった。気づいた瞬間俺は…叫んだ。
「うわぁーーー!!!」
ノアはそのまま猛スピードで雲の中へと姿を消した。
カミラはパチンと指を鳴らし、ノアが転送されたのを確認する。
(なるべく遠くにやろうと空に放り投げてしまったが…まぁノアなら大丈夫か。それよりこっちを何とかしないとな)
そう思った時だった。窓がガタガタと揺れだして案の定粉々に飛び散った。ついでに木材で出来ている家も大きな亀裂が入るとともに吹っ飛んでいった。家だった中心で竜巻とも言える風にふわりと髪をなびかせているカミラの周りを大きな影が覆った。目の前には漆黒の鱗をもつ巨大なドラゴンがゆっくりと降下してくる。地面に降りた瞬間そのドラゴンは鼓膜が破けるような咆哮を一つあげ、少し間をあけてニヤリと笑う。
「カミラ久しぶりだな!相変わらず暇そうなやつだ」
不気味な笑みを向けるドラゴンにカミラは眉をひそめる。
「…もう少し静かに来れないのか、ヴァルケンド」
ヴァルケンドはカミラの親であるリアンの跡を継いだ今のドラゴンの長である。
「それは無理な相談だぜ?静かに来ても俺は目立つんだから、それなら最初から俺という存在を知らしめるほうがいいだろ?」
「全く理解できん」
「俺もカミラが何で引きこもってんのか理解できねぇ」
「ヴァルに理解してもらわなくて結構だ。そんなことより前にもいつ来るのか連絡しろと言わなかったか?」
「は?連絡したじゃねぇか」
「近いうちじゃ分からん、突然すぎる」
ヴァルケンドは鼻からブワァーと息を吹き出す。人で言うため息だ。同時にカミラもハァと長くため息をついた。
「分かった、言えばいいんだろ言えば」
「あぁそうしてくれ」
「…ったく。そうだ、今さっき誰か来てたのか?」
「いいや、来てないよ」
「へぇ…。でもそれ嘘だろ?もう一体はどこのどいつだカミラ」
「…もしそうだとしてもヴァルには関係ないんじゃないか?」
カミラはハッと鼻で笑うとヴァルケンドへと赤く鋭い視線を向ける。そしてヴァルケンドもカミラへと金色の鋭い眼光を向けた。
カミラは起こしてからはっきりと目覚めるまでに時間がかかるので弟子がご飯を作るのにも専念できるのだ。
少ししてのそっと寝室からカミラが出てきた。いつもの席へと向かって歩くが、途中でピタッと止まる。しかし、ノアは無視してご飯の準備をしている。
実はカミラには最近困った癖がある。それはどこでも眠かったら寝てしまうことだ。しかも声を何度もかけてもなかなか起きない。立ったままでも寝れるし、水の中だろうと眠ることができる。そんなカミラにノアはどうしたものかと思っていた。
ノアは朝食を食卓に並べてカミラに声をかける。
「師匠、起きてください!もう朝食できてますよ!」
「うぅ…ん」
まだ寝ぼけた師匠を促して定位置へと座らせるが、しきりに目をこすりあくびをしていた。
(全く…最近は起こしてもすぐ寝てしまうし、寝る時間も長い。…そういえば最初からこんなに寝てたっけ?こんなに眠りだしたのはいつから…)
突然ガタンッという大きな音に思わずビクリと体が跳ねる。顔をあげると先程までウトウトしていたはずの師匠がすごい剣幕で立っていた。いつもの揺らめきのない湖のような静かな瞳は今や牙を剥く獣のような凶暴さが含まれていた。
「し…師匠?どうしたんでー・・・」
「来たか」
「来たって何が…?」
聞き返そうとすると、師匠はこちらを見ることなくパチンと指を鳴らす。次の瞬間、隣で鳥が飛んでいる場面へと切り替わった。
「…え?」
澄んだ淡色の青、見下ろせば白いふわふわの層ができている。ここは…空か!それに下の雲に段々と近づいている。つまり俺は落下しているんだ。この事実に気づくまでに時間がかかった。気づいた瞬間俺は…叫んだ。
「うわぁーーー!!!」
ノアはそのまま猛スピードで雲の中へと姿を消した。
カミラはパチンと指を鳴らし、ノアが転送されたのを確認する。
(なるべく遠くにやろうと空に放り投げてしまったが…まぁノアなら大丈夫か。それよりこっちを何とかしないとな)
そう思った時だった。窓がガタガタと揺れだして案の定粉々に飛び散った。ついでに木材で出来ている家も大きな亀裂が入るとともに吹っ飛んでいった。家だった中心で竜巻とも言える風にふわりと髪をなびかせているカミラの周りを大きな影が覆った。目の前には漆黒の鱗をもつ巨大なドラゴンがゆっくりと降下してくる。地面に降りた瞬間そのドラゴンは鼓膜が破けるような咆哮を一つあげ、少し間をあけてニヤリと笑う。
「カミラ久しぶりだな!相変わらず暇そうなやつだ」
不気味な笑みを向けるドラゴンにカミラは眉をひそめる。
「…もう少し静かに来れないのか、ヴァルケンド」
ヴァルケンドはカミラの親であるリアンの跡を継いだ今のドラゴンの長である。
「それは無理な相談だぜ?静かに来ても俺は目立つんだから、それなら最初から俺という存在を知らしめるほうがいいだろ?」
「全く理解できん」
「俺もカミラが何で引きこもってんのか理解できねぇ」
「ヴァルに理解してもらわなくて結構だ。そんなことより前にもいつ来るのか連絡しろと言わなかったか?」
「は?連絡したじゃねぇか」
「近いうちじゃ分からん、突然すぎる」
ヴァルケンドは鼻からブワァーと息を吹き出す。人で言うため息だ。同時にカミラもハァと長くため息をついた。
「分かった、言えばいいんだろ言えば」
「あぁそうしてくれ」
「…ったく。そうだ、今さっき誰か来てたのか?」
「いいや、来てないよ」
「へぇ…。でもそれ嘘だろ?もう一体はどこのどいつだカミラ」
「…もしそうだとしてもヴァルには関係ないんじゃないか?」
カミラはハッと鼻で笑うとヴァルケンドへと赤く鋭い視線を向ける。そしてヴァルケンドもカミラへと金色の鋭い眼光を向けた。
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