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伝言
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カミラ様は突然現れた黒い宝石のような魔石を壊した瞬間、男の低い声が聞こえた。チラッと彼女を見ると笑顔を浮かべている。しかし、これは笑顔といっていいのだろうか。口角は上がってはいるもののピクピクしている上に、目が笑ってない。これはどう見ても怒っている。
「えっとーこの声は誰なんですか?」
苦笑いを浮かべながら頬を掻くと、カミラ様は眉間によったシワを伸ばすような動作をする。
「…ヴァルケイド・モリスガンク、リアンの後継に選ばれた奴だ」
あぁそういえば、前にカミラ様から聞いた話に出てきた気がする。リアンさんの話はよく聞くから知っているけど、確かヴァルケイドさんはあの時を除いて一度も聞いたこともない。
「その…どんな方なんですか?」
「…良いやつだよ、少し疲れるがな」
カミラは一瞬思い出すように視線を上に向け、眉を八の字にする。片手で両目を覆い、長いため息をついて「面倒くさいな」と呟いた。
カミラ様は元々面倒くさがりではあるがそれは自分がする行動に対して言うことが多い。なので今のように相手に対して面倒くさがるのは珍しいなと思っていると、突然バンッと大きな音が聞こえた。慌てて音の方を振り返ると彼女が机に右手をおいて立ち上がっていた。
「どっ、どうしました?」
「…つだ」
「え?」
「近いうちっていつだ!」
ワナワナと口を震わせながらドス黒いオーラを放っているカミラ様から目を逸らして窓に近づくと緑の葉が生い茂る木がたくさん生えている。
あぁ綺麗だなーと現実逃避をしていると突然ガシッと肩を掴まれた。驚いて振り返ると予想以上にカミラ様の顔が近くにあった。
「師匠!?」
えっ近い!目のやり場に困ってしまう。…あぁ肌は透きとおるほど白いし、唇はほんのり桃色を含んでいる。でも一番好きなのは長い前髪でたまに隠れてしまう瞳。暗い空間の中に火が激しく燃え盛る、まるで夕焼けのような瞳。時間が経てば…その色すら消えてしまいそうだ。
カミラ様の顔にゆっくりと手を伸ばそうとすると俺の顔の左側でドンと音がなった。目を左に動かすと細くしっかりした腕がのばされている。一瞬何が起きたか分からなかったが、窓に伸ばして右手をついていると分かった。この体勢は段々恥ずかしくなって顔が熱くなってくる。しかしその気持ちは一瞬で消え去り頭が冷えた。師匠が手をついている窓からビシビシッと嫌な音がする。恐る恐る窓の方を振り向くとやはり亀裂が入っていた。
確かこの窓って余程のことがない限り割れないはずなんだけどそこには触れないほうが良さそうだ。それより怒っている師匠は凛々しくてかっこいい。あぁ俺はこの方と一生いたいな。…まぁこの気持ちを伝えるにはまだ勇気が出ないけど。
「あの…師匠?近いんですが…」
「もし…ヴァルケイドがお前に近づいたら迷わず逃げろ」
「え?」
「あいつは好奇心の塊だ。悪い奴じゃないが限界を知らない」
呆れるようにハァと息を出す。おそらく師匠はここまで10回ほどため息をついている。しかし限界を知らないとはどういうことだろうか?
次にくる言葉を待っていると師匠はゆっくりと離れながら「とにかく気をつけろ」とだけしつこく釘を差した。
「えっとーこの声は誰なんですか?」
苦笑いを浮かべながら頬を掻くと、カミラ様は眉間によったシワを伸ばすような動作をする。
「…ヴァルケイド・モリスガンク、リアンの後継に選ばれた奴だ」
あぁそういえば、前にカミラ様から聞いた話に出てきた気がする。リアンさんの話はよく聞くから知っているけど、確かヴァルケイドさんはあの時を除いて一度も聞いたこともない。
「その…どんな方なんですか?」
「…良いやつだよ、少し疲れるがな」
カミラは一瞬思い出すように視線を上に向け、眉を八の字にする。片手で両目を覆い、長いため息をついて「面倒くさいな」と呟いた。
カミラ様は元々面倒くさがりではあるがそれは自分がする行動に対して言うことが多い。なので今のように相手に対して面倒くさがるのは珍しいなと思っていると、突然バンッと大きな音が聞こえた。慌てて音の方を振り返ると彼女が机に右手をおいて立ち上がっていた。
「どっ、どうしました?」
「…つだ」
「え?」
「近いうちっていつだ!」
ワナワナと口を震わせながらドス黒いオーラを放っているカミラ様から目を逸らして窓に近づくと緑の葉が生い茂る木がたくさん生えている。
あぁ綺麗だなーと現実逃避をしていると突然ガシッと肩を掴まれた。驚いて振り返ると予想以上にカミラ様の顔が近くにあった。
「師匠!?」
えっ近い!目のやり場に困ってしまう。…あぁ肌は透きとおるほど白いし、唇はほんのり桃色を含んでいる。でも一番好きなのは長い前髪でたまに隠れてしまう瞳。暗い空間の中に火が激しく燃え盛る、まるで夕焼けのような瞳。時間が経てば…その色すら消えてしまいそうだ。
カミラ様の顔にゆっくりと手を伸ばそうとすると俺の顔の左側でドンと音がなった。目を左に動かすと細くしっかりした腕がのばされている。一瞬何が起きたか分からなかったが、窓に伸ばして右手をついていると分かった。この体勢は段々恥ずかしくなって顔が熱くなってくる。しかしその気持ちは一瞬で消え去り頭が冷えた。師匠が手をついている窓からビシビシッと嫌な音がする。恐る恐る窓の方を振り向くとやはり亀裂が入っていた。
確かこの窓って余程のことがない限り割れないはずなんだけどそこには触れないほうが良さそうだ。それより怒っている師匠は凛々しくてかっこいい。あぁ俺はこの方と一生いたいな。…まぁこの気持ちを伝えるにはまだ勇気が出ないけど。
「あの…師匠?近いんですが…」
「もし…ヴァルケイドがお前に近づいたら迷わず逃げろ」
「え?」
「あいつは好奇心の塊だ。悪い奴じゃないが限界を知らない」
呆れるようにハァと息を出す。おそらく師匠はここまで10回ほどため息をついている。しかし限界を知らないとはどういうことだろうか?
次にくる言葉を待っていると師匠はゆっくりと離れながら「とにかく気をつけろ」とだけしつこく釘を差した。
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