不老不死と拾われ弟子

シーカピ

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知らせ

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 ある日の朝、朝食を作っていると後ろ側からコンコンと聞こえた。作るのを一旦止め、窓を開けると1羽の白い鳩が入ってくる。そのまま机にとまった瞬間白い便箋へと変わった。しかしノアは特に驚きもせず便箋の裏に書かれた名前を確認して引き出しにいれる。特にそれを気にすることなく朝食作りを再開した。
 今日の朝食は採れたて野菜をふんだんに挟んだサンドイッチと香ばしい玉ねぎが入ったコンソメスープ、そしてみずみずしいりんごを一切れだが調子に乗ってうさぎの形のりんごにしてしまった。恥ずかしいが、我ながら良い出来映えと思う。料理を並べているとガチャッという音がして、そのドアからカミラ様が目を擦りながら出てくる。

「おはようございますカミラ様」
「あぁ…おはよう、ノア」

ポヤポヤとした口調は相変わらずだが、服装も何度言っても直らないためとっくに諦めた。まだ眠そうな師匠は少しトロンとした目で俺の作った朝食をジーッと見る。

「毎度思うが凄いな…」
「ご飯ですか?それは光栄です」

自分の定位置に座るために俺の横を通る際に左手で欠伸を隠しながら右手で俺の頭をポンポンと優しく叩く。控えめに言って最高だ。頭に残った余韻に浸っていると、ふとあることを思い出した。

「カミラ様宛に手紙が届いていましたよ」

汚れないために引き出しへとしまった手紙を取り出し、師匠に渡す。手紙を受け取ると裏に書かれた名前を見て丁寧に封を剥がした。裏に書かれた名前は魔女集会に潜入した際にお世話になったレイラさんからだ。中から手紙を取り出し2枚とも読む。

「レイラさんはなんと?」
「5日後に遊びに来ていいかだって」
「返事はどうしますか?」
「了解」

指をパチンと鳴らして手紙をまっさらな状態に戻し最初の一行に『了解だ』とだけ書いてもう一度指を鳴らすと鳩へと変わって空へと飛んでいった。

「もうちょっと書かないんですか?」
「何が?」
「手紙ですよ」
「あー。特に伝えることも無いからな」

気まずそうにすることなく言うと、カミラは定位置の椅子に座る。ノアも同様に定位置の椅子に座ると2人は右の手の平を左側の胸にあて、少しの間目を瞑る。この動作は今から食べる命に対して敬意を払う意味を持つ、いわばお祈りと言ったところだ。確かこれは俺が初めて動物を狩ったときからするようになったはずだ。
ゆっくりと目を開けてそれぞれ黙々と食べ始める。
口を大きく開けてサンドイッチにかぶりつくカミラと違ってノアは小さい一口でリスのように頬が少し膨らんでいる。
まさかある騒動の始まりがここから始まるとは思わなかった。それはカミラ様が最後の一口を口に入れた瞬間だった。まだ食べていた俺の目の前に突然黒い宝石のようなものが現れてヒュンと皿めがけて落ちてくる。次の瞬間皿に落ちて割れる!と思い目を瞑ったがいつまで経っても音がない。片目を開けるとカミラ様の右手には黒い宝石が握られていた。咄嗟に取ったようだ。サンドイッチを口に入れたままだったのだろう。コップに入った水で流し込んで、突然現れたそれを上に掲げて少しの間観察する。

「なんですかそれ?」
「……魔石」

一言そう言うとこちらをチラリと見る。それを握りしめたと思った瞬間バキンッと言う音をたてて粉々にした。その瞬間どこからか声が聴こえてきた。低くて大きい声…これは大人の男性の声だろうか。

「おいカミラ!近いうち遊びに来るぜ!」

俺は知らない声に困惑したがカミラ様は親指と人差し指で眉間のシワを伸ばしながらため息をつく。この反応は恐らく師匠と知り合いなのだろう、迷惑がられているようだが…。一体誰なんだろうか。

「さっきの声のやつは若いときの知り合いだよ」

俺の心を読んだように腕を組んでもう一度ため息をつく。

「誰なんですか?」
「…ヴァルケイド・モリスガンク。リアンの後継者だったやつだ」




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※最初から書き直させていただきました。話自体はあまり変わりませんが少し細かく書いております。前回よりかは読みやすくなっているとは思いますが、誤字脱字などがあったらご報告ください。
ちなみに今回出てきたキャラは過去話という回に出ています。よければ読んでみてください。
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