不老不死と拾われ弟子

シーカピ

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不老不死

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私はノアを背に隠して、目の前にいる者と向かい合う。今のこの子では殆ど魔力が無いため探すのが困難だったが、助けに来られたのは心のなかで私の名前を呼んでくれたからだ。後ろにいるノアは目を見開いている。

「おい、お前!それは僕の下僕なのだ!返せ!!」
「この子はお前のじゃないが?」
「な!この僕に…この偉大な僕に向かってお前!?」
「偉大だの何だのうるさい…ただのガキなんてどうでもいい」

あぁー師匠、面倒くさがりだから早く話を切り上げたいのか。口が悪いのは相変わらずだけど俺の話は結構ちゃんと聞いてくれるからついつい俺だけ話しすぎるんだよなぁ。

「だいたいお前なんなのだ!?それは僕のなのだ!」
「ノアは…私の弟子だ。貴様に下僕やものと言われる筋合いはまったく無い!さっさと立ち去れ!」
「よくも…僕を、許さないのだ!炎の竜巻で焼かれてしまえ!」

杖をブンッと振り『バースト・フレア』と叫ぶ。その瞬間見上げるぐらいの高さの炎をまとった竜巻が現れる。

さ、さっきの『ファイアー・ボール』よりも大きくて熱い!

「ハッハッハ!火を操れる僕は強いのだ!これでお前は終わりなのだ~♪」

二人へと指を指して勝ち誇ったような顔をする。しかしカミラが指をパチンと鳴らすと炎の竜巻は跡形もなく消えた。

「え?僕の炎が無い!?そんなことあるはずが…」
「たかがあれくらいしか使えないのにそれで偉大な魔女か?いきがるのも大概にしろ」
「僕は!偉大な魔女なのだ!!次こそはお前を焼き尽くす!」

『ブラスト・ボム』と大声で杖をこちらに向ける。だがまたもやカミラは指を鳴らす。炎なんて何も無かったかのように元の状態に戻るのを見て魔女は魔力切れなのか萎んだ風船のようにフラフラと降りてきてペタンと座り込んだ。

「この僕が負けるなんて…。なぁ、お前は何者なのだ?」
「さあ?」
「こんなに強い魔女はある程度知っているが、お前もそのお前の能力もオーラすら目立つはずなのに僕が知らないなんてありえないのだ」
「運良く見つからなかったんだろう」
「なぁ、お前もトップにならないか!?僕から見れば十三厄に入るのはヨユーだと思うのだ!」
「無理」
「十三厄に…」
「無理」
「……なんかお前とアイツ、頑固で似てるのだ」
「さっさと帰れ」

そう言い放ってシャーロットの頭に手をかざし転移魔法でシャーロットを何処かに飛ばした。今この場所にはカミラとノアの二人しかいない。

「ノア……本当にすまなかった」

カミラはノアと向かい合うと頭を深々と下げた。

「師匠、やめてください!むしろ俺が謝らなくてはならないのに!」
「そんなことない。あんなことを言ったんだ。悪いのは私だ!」
「いや!俺です、俺が師匠にとって嫌なことを言ってしまったし、迷惑だから!」
「いや私だ!」「いや俺です!」とお互いに引く気が無いせいか最後はピタッと揃ってしまった。

「「……プッ、ハハハハ!」」
「すまない、あのガキが師弟で似てるって言ってたことを思い出してしまって!確かにどちらも譲らない頑固ものか!」
「そうですね!師弟って似るんでしょうか?」
「そうかもしれんな。私もリアンと似ているところがあるし」
「口が悪いところですか。もう慣れっこですよ」

ふたりでひと通り笑ったあと、カミラがノアの頭を撫でる。

「…本当にすまなかった。迷惑だと思ったことは全く無い。あの時私がノアを拾わなければノアは一生続く呪いもなかったのかなって考えてしまってな」
「いいえ、俺も不老不死がなにかもよく考えてませんでした。師匠を怒らせることになってすいません」
「あれは怒りすぎたと思っている。知らない者はその思考に陥るからな。そうだな…ノアは不老不死にどんなイメージを持ってる?」
「えっと…長く生きれて老けない?」
「まぁ合っているが、不老不死は長く生きるではなく死ねない、時が止まっているんだよ」
「時が止まる?」
「そう、進化ができないということだ」
「進化って、人間がですか?」
「あぁ、人間というか生きているものは生まれた時から今の姿というわけではない。生きているものは長い時間をかけて進化するか、もしくは退化する」
「だから時が止まれば進化できないということですか」
「あとこれは個人によるが長く生きすぎて心が壊れたり死にたいと願望する者もいるな」
「死ねないから…?」
「そうだろうな。もしお前に愛する者ができたとき必ず別れが来る。不老不死じゃない者も別れは来るがそれ以上だからな。そのせいで心身を病んでしまうんだろう」
「……俺は師匠といつか別れが来るんですか?」
「そりゃ来るさ、別れというものはなにも死だけじゃないと思うからな」
「…多分私は師匠離れできませんよ」
「…そうか」
「はい!」
「家に帰ろうか」

そう言って俺の頭を撫でふわっと微笑む。
あぁ、この笑顔好きだな。たまにしか見れないのが残念だけど。
師匠と共に生きれるなら悪くないと俺は密かに喜び「はい!」と師匠に向けて微笑み返した。
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