不老不死と拾われ弟子

暴走

「ノア！！おい！聞こえるか！」

これは…魔力の暴走か！なんてことだ…。一番恐れていたことが起こってしまった。行き詰まった様子だったから少しくらいアドバイスになればと思ったが、こんな事になるなら地道にさせればよかったか。いや…今はこんなことを考える暇はない！

「ノア！聞こえるなら返事をしろ！」
「……ぅう、し…しょう？」
「よし！そのまま意識を強く保っておけ！」

うつ伏せになって倒れているノアは歯を食いしばりながらなんとか意識を保っているようだが早くしないとまずいことになる。なんとか冷静さを保ってノアの心臓あたりに手をおいて混ざり始めている魔力を自分に移しているが、どうも吸収しにくい。ノアは他のオーラよりも純度が高い上に魔力が強大であるため思ったほど成果が出ない。

「……チッ、厄介だな。時間がないのに！」

どうすればいい…私の力でこの魔力を消そうとすればこの子まで消してしまう可能性が大きい。どうすればこの子を助けられる？…そうだ。あれなら！

首にかけていたネックレスの紐を思いっきりちぎって、小さな結晶を額に当てる。

リアン…力を貸して！

透明な結晶を付属の金具から外してノアの口の中に入れ込んだ。そう…その結晶は私の師匠であり親であるリアンから貰った命そのもの。

「頼む！ノアを助けてくれ！」

するとノアが光に包まれて周りで暴走していた魔力が嘘のように落ち着いている。さっきの光はリアンが結晶になってしまったときに見た光と同じだ。ひとまず安心したが、今のノアは虫の息で顔が青白くなりぐったりと弱りきっている。おそらく意識はないだろう。とにかく治療のために力任せの回復魔法をかけた。そのおかげか顔色も戻り呼吸は安定的になってきたが精神的にも大きな負担がかかっているだろう。カミラはノアのベッドに転移魔法で寝かせた。

それから4日がたつ。外は豪雨と雷が降っており、吹きつける強い風はまだ止む様子はまだない。今だにノアは目を覚ます気配がなく、カミラはいつものようにノアの頭をゆっくりと撫でながら考え事をしていた。

どうしてあの時止めなかったのだろうか？いや意志が堅いあの子は何としてもするかもしれない。しかし…こういうのは慣れないものだな。

死ぬかもしれないと思った瞬間、背筋が凍った。始めて『死』というものが分かったとき恐怖感と消失感で足から崩れ落ち座り込んでしまった。大号泣して、それから長い間座り込んでいた。ハッと気づくともう夜になっていた。リアンが死んだとはまだ信じられなくていくら瞬きをしてもそこには居なかった。
その時の状況がフラッシュバックしてあの結晶を使うことに躊躇いはなかった。しかしあとになって考えてみると後先も考えず勢いで使ってしまったのは正しかったのだろうか。
もしかしたら何らかの影響が現れているかもしれないと調べようとしたその時だった。

「……ぅう」

ノアが布団を握りしめて唸り声をあげる。

「ノア！起きたか？」
「…師匠？えっと俺確か…」
「魔法を使っている時に問題が起きて倒れてしまったんだ」

そう言うとカミラは一つため息をついてノアにその時の状況を説明し始める。

「あの時、おそらく私が言ったことを実践したが何らかの原因で気を抜いてしまったのだろう。その上魔法を維持するために無理矢理力を入れたのが決定打だ。」
「そうなんですね…俺、できたの嬉しくなって見せようとしたんです。迷惑かけてすみません。」
「いや、無事でなにより」
「でもどうやって治したんですか？混ざってしまえば戻らないんですよね」
「あーそれは…リアンの結晶だ。私がネックレスにしていたあの結晶を使った。」
「えっ！？」

あの結晶はいわばお守りというか形見ではないか。そんな大切なものを使わせてしまうなんて…。

ノアが助かったにも関わらずカミラは暗い表情をしていた。落ち込んでいる様子のノアには気づかず重い口を開いて結晶について話し始めた。