不老不死と拾われ弟子

シーカピ

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ある朝での出来事

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 師匠との稽古が始まって数日がたった。
いつもの朝日の眩しさに目を覚まし見慣れた光景が入ってきた。しかしベッドでウトウトと眠るか眠らないかという狭間がとても気持ちがいいので完全に起きるまで時間がかかってしまった。しかし朝食を作らないといけないので起きるしかない。

そういえばいつもだったら師匠が呼びに来るんだけど…どうしたんだろう?

少し肌寒いので長袖のシャツを着て俺はまずリビングに行ってみたが、そこには居ない。まだ寝ているのだろうか?と音をたてないように師匠の部屋の扉を少し開けて覗いてみると、少し寒そうに毛布に包まっていた。
できるだけ起こさないように静かにしよう。それより朝ごはんは材料を見て考えるかと材料の入った箱を見ると空っぽだった。ノアは少し考えて前日に思い当たることがあった。

…そういえば昨日材料が切れていたから師匠に言わないとと思っていた。しかし、新鮮な野菜などがあったことを考えると近くに畑があるはずだと思い外に行って細かく見てみたが結局何もなくあるのは生い茂った芝生だけだった。
なんで材料がないんだ?まさか…取られた?そう思いもう一度ドアを思いっきり開けると後ろの方からガチャッと音がした。後ろを振り返ると部屋から出ようとしている師匠だった。

「あれ…おはようノア」
「あっ、おはようございます師匠!材料が無いんですがどうしましょうか」
「…材料?…あるよ」
「え、でも外にもありませんでしたよ?」
「魔法で…隠してる…」
「魔法で…そんなことも出来るんですね」

良かった…取られたわけでは無かった。それにしても師匠の話し方が途切れ途切れでなんか脱力感があるなって…何だあの格好は!?

カミラのシャツはボタンが全部外れており風が吹けば見えてしまいそうで下に何も着ておらず素肌が見えている。何故あんな格好なのか訳がわからないまま手で目を覆う。

「目を隠してどうした…?」
「師匠!前、前を閉めてください!」
「…前?あぁ、ボタンか」
ゆっくりとボタンをとめるカミラをノアは必死に見ないようにしていたがそれでもチラチラと指の隙間から覗いてしまう。

「とめましたか?」
「あぁ…留めた。あれ?ボタンが一つ余ってる…」

そうしてまた全部外し始めたのでまた目を覆った。

「し、師匠って朝はいつもそんな感じなんですか?」
「うーん…どうも朝は弱くてな」

師匠って朝弱いんだ。だからこんな感じになっていたのか。話し方もポツリポツリと話しているし…。

「確か…材料だったな」
「はい、残っている物を見て作ろうかと思って」
「そうか、ならついておいで」

まだ眠いのかゆっくりと重そうにドアを開け外に出る。庭の左側にある空間に手をかざすと先程までなかった畑が出てきた。ニージンやキャベッツなどの野菜がある。

「次はここから自由に取っていい」
「分かりました」

今ボタンはきちんと留まっているが、なんで今日はあんな恰好だったのだろう?

「あの…いつもと格好が違ったのはなんでですか?」
「んー。起きた時はいつもあんな感じだよ、寝相が悪いから」
「へーそうなんですね」

何にも思ってないように見せたが心では悶々としていた。もしまたこんなことがあるなら恥ずかしいけど見てしまうだろう。隠しもせずに大きく欠伸する師匠は豪快だと思った。
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