3 / 41
受け入れ
しおりを挟む
カミラは目の前の皿を爪でカンッカンッと鳴らし、平たい皿にふわっと膨らんだ3個のロールパンと少し深い皿に火傷しない程度の熱々のスープを出した。ちなみにこれも魔法である。
「まだあるから好きなだけ食え」
突然出てきた料理に少年は訳がわからないとでも言わんばかりに2つの皿を交互に見ていたが「いただきます」と言っておずおずと食べだす。その向かいで特に話すこともないカミラは本を読み始めた。
今まで食べたことがないくらい美味しい。村にいたときはパンもスープも食べたことなく口に含んでいたのはそこら変に生えている雑草や木の実をそのまま食べていた。稼ぎも手に軽く収まるほどしか得られず、お婆さんにも貧しい暮らしをさせてしまったことは悔しさしかない。
…この人はなんでこんなことをしてくれるんだろうか。暇つぶしと言ってたけどなにか目的があるんだろうか…いや助けてくれるのも今だけかもしれない。失礼にも俺はその人をじーっと疑い深く見ながら思考を巡らす。
「もう食べないのか?」
次のページをめくり一度も顔をあげず尋ねるカミラに少年は慌てて「食べます」とパンやスープを口に詰め込む。
「あの…」
半分ほど読み進んでいると少年が遠慮がちに声をかける。目の前の皿にはスープもパンも全く残っておらずペロリとたいらげたようだ。
「食べ終えたか」
「は、はい!美味しかったです!」
「そうか、それで?お前はこれからどうする?」
「…え?」
思わずうつむいて机をただひたすら凝視する。
俺はこれからどうすればいいのだろう。そうだ、暇つぶしなのだから俺はつまらなかったんだ。ならば迷惑をかける前にここを出ていかないと…。
少年はうつむき口を閉じた。おそらく今すぐ出ていくべきとでも思っているのだろう。いくら暇つぶしで拾ったとしてもすぐ追い出すことはあまりにも外道すぎる。
「あ、あの!俺……」
「今すぐ出ていくとでも言うのか?」
「え、なんで…わかったんですか!?」
本をパタンと閉じて椅子から立つ。
予想通りの答えに思わずため息が出る。私はそんなに最低な外道に見えるだろうか。いや湖に思いっきり投げたな。あとは、まぁ…見た目が悪いのもあるか。だが。
「暇つぶしだとしてもすぐ追い出すような最低野郎ではない」
「でも…迷惑なんじゃ…」
追い出しはしないというのにまだ出ていくべきだと思っているのか。なんというか…。
「お前は迷惑というより面倒くさい」
「え!?」
「私はここにいていいと言っている、迷惑や面倒ごとは承知の上だ」
「…!」
俺はここにいていいのか、何もできない俺がここに。…少しだけ、少しだけならいいかな?すぐ追い出さないってことはいつかは追い出すってことだからそれまでは…ここにいたい。
「ここに…いてもいいんですか?」
「さっきからいいと言っているじゃないか」
「何もできませんよ俺」
「別にいい、なにかして欲しいわけではない」
「きっと迷惑もかけます」
「しつこいな」
呆れ返るような表情でため息をつく姿に思わず笑いが出てしまった。しかしすぐ椅子から立ちこの人と向かい合ってお辞儀をする。
「今日からよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく」
カミラが差し出した手を少年はグッと握り返した。
「まだあるから好きなだけ食え」
突然出てきた料理に少年は訳がわからないとでも言わんばかりに2つの皿を交互に見ていたが「いただきます」と言っておずおずと食べだす。その向かいで特に話すこともないカミラは本を読み始めた。
今まで食べたことがないくらい美味しい。村にいたときはパンもスープも食べたことなく口に含んでいたのはそこら変に生えている雑草や木の実をそのまま食べていた。稼ぎも手に軽く収まるほどしか得られず、お婆さんにも貧しい暮らしをさせてしまったことは悔しさしかない。
…この人はなんでこんなことをしてくれるんだろうか。暇つぶしと言ってたけどなにか目的があるんだろうか…いや助けてくれるのも今だけかもしれない。失礼にも俺はその人をじーっと疑い深く見ながら思考を巡らす。
「もう食べないのか?」
次のページをめくり一度も顔をあげず尋ねるカミラに少年は慌てて「食べます」とパンやスープを口に詰め込む。
「あの…」
半分ほど読み進んでいると少年が遠慮がちに声をかける。目の前の皿にはスープもパンも全く残っておらずペロリとたいらげたようだ。
「食べ終えたか」
「は、はい!美味しかったです!」
「そうか、それで?お前はこれからどうする?」
「…え?」
思わずうつむいて机をただひたすら凝視する。
俺はこれからどうすればいいのだろう。そうだ、暇つぶしなのだから俺はつまらなかったんだ。ならば迷惑をかける前にここを出ていかないと…。
少年はうつむき口を閉じた。おそらく今すぐ出ていくべきとでも思っているのだろう。いくら暇つぶしで拾ったとしてもすぐ追い出すことはあまりにも外道すぎる。
「あ、あの!俺……」
「今すぐ出ていくとでも言うのか?」
「え、なんで…わかったんですか!?」
本をパタンと閉じて椅子から立つ。
予想通りの答えに思わずため息が出る。私はそんなに最低な外道に見えるだろうか。いや湖に思いっきり投げたな。あとは、まぁ…見た目が悪いのもあるか。だが。
「暇つぶしだとしてもすぐ追い出すような最低野郎ではない」
「でも…迷惑なんじゃ…」
追い出しはしないというのにまだ出ていくべきだと思っているのか。なんというか…。
「お前は迷惑というより面倒くさい」
「え!?」
「私はここにいていいと言っている、迷惑や面倒ごとは承知の上だ」
「…!」
俺はここにいていいのか、何もできない俺がここに。…少しだけ、少しだけならいいかな?すぐ追い出さないってことはいつかは追い出すってことだからそれまでは…ここにいたい。
「ここに…いてもいいんですか?」
「さっきからいいと言っているじゃないか」
「何もできませんよ俺」
「別にいい、なにかして欲しいわけではない」
「きっと迷惑もかけます」
「しつこいな」
呆れ返るような表情でため息をつく姿に思わず笑いが出てしまった。しかしすぐ椅子から立ちこの人と向かい合ってお辞儀をする。
「今日からよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく」
カミラが差し出した手を少年はグッと握り返した。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?
京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。
顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。
貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。
「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」
毒を盛られ、体中に走る激痛。
痛みが引いた後起きてみると…。
「あれ?私綺麗になってない?」
※前編、中編、後編の3話完結
作成済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる