ゾンビ転生〜パンデミック〜

不死隊見習い

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Final Season-Archive

月下の蝶の手紙

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親愛なるベテルギウスへ

 十六歳の誕生日おめでとう。
 子を捨てた母親に祝う資格があるのか正直分からない。しかし、お前の父親は神具の次元袋を送ることなので私は真実を伝えようと思い、渡すかも分からないこの手紙を書いている。

 お前の出生を伝える前に、まずは謝らなければならない。赤子のお前を捨てたこと、今まで会いに行けなかったことを。しかし、言い訳をするつもりは無いが全てお前を思っての事であり、今でも私たちはお前を愛していることをこの手紙で少しでも分かってくれたらありがたい。

 さて、まずはお前の両親について書こうと思う。お前の母親は私、暗殺ギルドの長、月下の蝶であり父親は盗賊ギルドの長、月の影だ。私たちの存在は国民には幻として伝わっているがどうか信じて欲しい。

 次に、お前を捨てた理由だが、まずは暗殺ギルド、盗賊ギルドについて語らせてほしい。
 この二つのギルドは世間では噂だけで存在しないなどと伝わっているが、実際に我々は存在し、秘密裏に国のために活動を行なっている。この二つのギルドはラウム王国建国の際に教皇デネブによって設立された諜報・暗殺部隊であり、この真実は王族や兵団の上層部しか知らない。突飛な話だろうがどうか信じて欲しい。
 そして、暗殺ギルドの慣しとして、ギルドの長は代々、私の家系が務め、“月下の蝶”という名を受け継いでいく。私も私の父親からこの名と使命を授かり、それまでは名前はなかった。
 本来ならば私もお前に長の座を継承するはずであった。しかし、私はお前が、自分が腹を痛めて産んだ息子が世間から隔絶され、危険な任に就くのを恐れてしまった。そして私は死産を装い、お前に我々には与えることが許されない名前を授けて大聖堂の前にお前を捨てた。

 その後のお前の成長は影ながら見守っていた。お前の盗人としての才能はお前の父親の血から授かったものだろう。

 貧困に喘ぐお前を見守ることが出来なかった私たちを許して欲しいなどとは言わない。ただ私たちの想いはどうか分かって欲しい。

 この手紙をお前に渡すかは未だに迷っている。真実を知ったお前がこの国の闇に呑まれ、失うのが怖いのだ。弱い母親をどうか許して欲しい。

 最後に、これまでもそしてこれからも愛している。

お前の母親より

『月下の蝶の私室に転がった丸まった紙切れ』より
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