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Season3-Archive
ある研究員の手記②
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最近、教会が人の実験体を用意してくる様になった。向こうが言うには死刑囚や志願者を集めている様だが人道に外れた研究というのは確かだ。しかし、それでも黒尸菌について新たに分かったことがあるのも事実である。
新しく分かった事とは、黒尸菌は宿主の生前の記憶をいくつかは保持しているという事である。例えば兄弟の片方を感染させた場合、感染者はもう片方を識別できているかの様に執拗に狙っていた。
また、感染者の種族によってもその行動や特性が異なっていた。人間の場合、感染を目的としているのか噛みつきによる攻撃が多い。対してオークだと非常に獲物を撲殺してから捕食に移る。また、非常に好戦的で捕食の途中でも新たな獲物を見つけると襲いかかっており、棍棒などの簡単な武器を用いる個体も見られた。残念ながら獣人とエルフの被験者は存在しなかったため、それら二種については不明である。
また、先日興味深いことが起こった。己を魔術師ギルドの副マスターと名乗る男に感染させた所、異常な回復能力と魔力、身体能力の向上が見られた。残念ながら被験者は上の判断で処分されてしまったが、もしかしたら黒尸菌は魔力を操ることが出来、感染者の魔力が高いほどそれに共鳴する様に更に魔力を生み出すのかもしれない。回復能力については第一感染者であるエレナの”回復“の素質を取り込んだものとカーネルは以前考察していた。
自分でこの文を見返して気づいたが、俺自身の倫理観が次第に破綻しているのに気づいた。この様な人の道に背いた実験を続けて良いものだろうか。しかし、もう後戻りはできない。
己の好奇心に取り憑かれた俺を神は許してくれるだろうか。だが、それでも俺は研究を続ける手が止められない。ワクチンの開発のためだと自身に言い聞かせながら。
「医療協会の医師の手記」より
新しく分かった事とは、黒尸菌は宿主の生前の記憶をいくつかは保持しているという事である。例えば兄弟の片方を感染させた場合、感染者はもう片方を識別できているかの様に執拗に狙っていた。
また、感染者の種族によってもその行動や特性が異なっていた。人間の場合、感染を目的としているのか噛みつきによる攻撃が多い。対してオークだと非常に獲物を撲殺してから捕食に移る。また、非常に好戦的で捕食の途中でも新たな獲物を見つけると襲いかかっており、棍棒などの簡単な武器を用いる個体も見られた。残念ながら獣人とエルフの被験者は存在しなかったため、それら二種については不明である。
また、先日興味深いことが起こった。己を魔術師ギルドの副マスターと名乗る男に感染させた所、異常な回復能力と魔力、身体能力の向上が見られた。残念ながら被験者は上の判断で処分されてしまったが、もしかしたら黒尸菌は魔力を操ることが出来、感染者の魔力が高いほどそれに共鳴する様に更に魔力を生み出すのかもしれない。回復能力については第一感染者であるエレナの”回復“の素質を取り込んだものとカーネルは以前考察していた。
自分でこの文を見返して気づいたが、俺自身の倫理観が次第に破綻しているのに気づいた。この様な人の道に背いた実験を続けて良いものだろうか。しかし、もう後戻りはできない。
己の好奇心に取り憑かれた俺を神は許してくれるだろうか。だが、それでも俺は研究を続ける手が止められない。ワクチンの開発のためだと自身に言い聞かせながら。
「医療協会の医師の手記」より
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