ゾンビ転生〜パンデミック〜

不死隊見習い

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Season3

戦士ーMachina ー1

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 メルセデスの奇襲を何とか槍で防ぐもののあまりの威力に吹き飛ばされてしまった。空中で態勢をとりながら着陸しメルセデスを睨みつける。

「残りは貴方だけです。もう諦めてみんなを解放してください」
「諦める?何故だ、俺がお前をぶち殺せば済む話じゃねぇか」

 メルセデスの口調の変化に彼が焦りを覚えているのだとポラリスは考察した。それを察したのかメルセデスがその考えを否定する。

「勘違いしてんじゃねぇよ。焦ってるんじゃない、イラついてんだ。お前らみたいな虫けらに何故俺らの自由を汚されなきゃなんねーのかってな」

 言葉が終わらぬうちに再びポラリスに飛びかかる。メルセデスは背丈はビルよりも少し低いが、大男であることは変わらず、右手には片手様に特注されたグレートソード、左手には体の殆どを覆う様な盾を持ち堅牢な鎧で体を覆っていた。見た目はまさに重戦士であるがその外見からは想像もつかないほどの速さで接近し剣を振るう。
 ポラリスは後ろに退がり直撃は回避するも剣を振るった風圧で再び吹き飛ばされた。
 ポラリスは腹に違和感を感じ手で確かめてみるとベットリとした血で手が塗れた。幸い内臓には達していないが通常の人間であれば致命傷以外の何物でもない。ポラリスの体は黒尸菌で強化されているためすぐに傷は塞がった。

「お前、やっぱり普通の人間じゃねぇな」

 傷の塞がる様子を見てメルセデスが毒づく。
 ポラリスは両手の槍を構え直すと今度はこちらから攻め立てた。双槍を扱ったことは今まで訓練でも無かったがエストレアの二刀流を見て密かに考えていた。勿論、エストレアの剣技には遠く及ばないのだがそれでも強化された身体能力から繰り出される槍の蓮撃は十分脅威となった。
 しかし、ポラリスの攻撃は全て盾で受け切られてしまう。そのあまりの硬さにまるで大地そのものに攻撃をしているのだと錯覚した。
 攻撃の手が弱まると盾で生じた死角から剣の一撃が飛びかかる。何とか距離を取り致命傷は避けるものの切っ先がポラリスの体を鎧ごと引き裂いた。

「ポラリス!!」

 一連の戦いを観戦していたエストレアが叫ぶ。

「慣れないのなら武器を両手で扱うのをやめた方がいい!!一体誰に習った!!」

 その言葉がポラリスの心に突き刺さる。

「手数が多ければ良いものではない。何に影響されたのかは知らないけど一本に絞って!!」
「お、おいエストレア、もう十分だ。やめてやれ」

 ガックリと項垂れ始めるポラリスを見かねてカーネルが止めた。

「双槍使いにしては未熟だと思ったがなるほど、エストレアの模倣か」

 冷たい鉄仮面に貼り付けた様な笑顔でメルセデスがゆっくりと迫る。

「ビルから聞いた通りポラリス、お前は“英雄”と呼ばれる者に異常なほど羨望を持っている様だな」
「!?ビルさんが!?」
「ポラリスの旦那!!ビルの野郎が裏切り者でそいつらと繋がっていたんだ!!」

 ビルの裏切りに困惑するポラリスにナナシが今までの経緯を説明する。
 
 一通りの説明が終わると再びメルセデスが元の紳士然とした態度で語り始めた。

「……ポラリス君、君がそんな力をどうやって手に入れたかは知らないがどうだろう、非力だった頃の君を考えると絶大な力を手に入れた今の君はこの戦いを楽しんでいるんじゃないかな」

 メルセデスの言葉にポラリスは反論が出来なかった。メルセデスはさらに言葉を続ける。

「君と私は似ている。常人には経験することのない力による愉悦と快楽を経験してしまった。だが悲しいかな、君の攻撃を受けた私ならば分かる。君はどこか自分を縛り付けている」
「ポラリス!!耳を貸すな!!」

 エストレアが叫ぶがメルセデスはお構いなく続ける。

「どうだろう、ポラリス君。私が本当の力の使い方を教えてあげよう。他の誰のためでもない、ただ自分のためだけのね。共に我らだけの覇道を歩もうではないか」
「旦那……まさか……」

 メルセデスの話を黙って聞くポラリスを見てナナシが呟く

「彼らのことはもう忘れろ。君は英雄になりたいのだろう、ならば他者など不要だ。絶大な力を前にしたとき、人々はそれを勝手に英雄と呼び、媚びへつらい、跪く。英雄とは、力とはそういう物だ」

 ポラリスはただ俯くと小さな声で呟いた。

「……確かにあなたの言う通りかもしれない……」
「!!おお、わかってくれるか!!」

 ポラリスの言葉にメルセデスが一瞬、気を緩めた時だった。メルセデスの眼前に金剛製の槍が飛んできた。メルセデスはそれを軽々と盾で受け止めると落胆した様な顔を盾から覗かせた。

「だけど……あなたは勘違いしている。自分が憧れたのは英雄の力じゃない……どんな絶望の暗闇の中にいても星の様に自分を導いてくれる……そんな姿に憧れたんだ」

 ポラリスの脳裏には幼い時の記憶、赤子の自分を助けてくれた名もなき兵士の笑顔が写っていた。

「……お前は一体何を言っているんだ?」

 メルセデスはポラリスの言っている意味が理解できなかった。ポラリスはさらに続ける。

「それに……自分のこの力はみんなを守るために貰ったものだ」
「……一体誰にもらったんだ?」
「……自分の運命からだ!!」

 メルセデスと決別した様に“ディールークルム”を両手で構えた。

 メルセデスは失望した様にため息を吐くと侮蔑の目でポラリスを睨む。

「残念だよ。シリウスやエストレアとは違い、お前は何にも縛られない力を持っているのに。本当に残念だ……」
「!?ポラリス!!何かくるぞ気をつけろ!!」

 エストレアがメルセデスの異変に気づき叫ぶ。彼の体全体の魔力量が減ったと思うとその全ては胸の一点に集まっていた。

「“魔力駆動式内燃機関マナ・エンジン起動ジェネレート

 目の前からメルセデスの姿が消えたかと思うとポラリスは上半身と下半身に両断された。
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