ゾンビ転生〜パンデミック〜

不死隊見習い

文字の大きさ
上 下
34 / 106
Season1-Archive

ある研究員の日記

しおりを挟む
8月11日(火) 晴
 まったく最悪だ。なんで俺がこんな田舎の研究所に来なきゃならないんだ。同期の連中はニューヨークやらロスやらで働いているってのに……くそっ!!土地が安いかどうか知らねーがもっと中心部に作りやがれ!!
 と、いうわけで何もなくて暇だろうから日記を書くことにした。いつまで続くかわからないけど。


8月12日(水)晴
 今日はこの町の散策をした。といっても特に何もなかった。派手なクラブがあるわけでもないしかと言って澄んだ森があるわけでもない。周りは見渡す限り畑と牧場に囲まれていて特に見るものはない。おまけに住民たちはよそ者の俺をあまり歓迎していない様だ。
 唯一といってもいい癒しが昼食に入ったバーの店員だ。彼女は他の奴らと違って俺に好意的に接してくれた。あの綺麗な瞳が忘れられない。また明日も行こう。

8月13日(木)雨
 昨日の日記を見て自分でも気持ち悪くなる。10代ティーンエイジャーの女の子か俺は。
 残念ながら今日は土砂降りで外に出る気が起きない。彼女に会うのもお預けだ。

 あまりに暇なので俺の仕事について紹介してみる。と言ってもこれ見るの俺しかいないんだけど……。
 俺は新しく発見された細菌の研究をしている。なんでも高いエネルギー生産性を持っているらしい。わずかな栄養カロリーだけでも生きていけるし他の細菌と比べても活発に動く。論文を読んだだけでは何故そんな能力を身につけることができたのかはわからない。きっと生命の神秘ってやつだろう。それか神様の悪戯か……。
 俺の研究所ではその細菌の遺伝子を変異させたり、様々な条件で培養したりしてよりエネルギー効率を上げたりしている。将来的には新しいエネルギー源としての活用が期待される。
 俺の研究が世界の役に立つ……そう考えるとヤル気が出てきた。月曜からの仕事、頑張ろう。


2月2日(火)曇
 案の定、3日で日記を書くのをやめていた。しょうがねーだろ。特に書くこともなかったんだから。一応書いておくが、バーの彼女、ジョアンヌとは色々あったが交際することができた。付き合ってみて口うるさい女だと気づいた。
 また日記を書いてみることになったのは俺の環境が急激に変化したからだ。何故か軍の連中がこの前から出入りする様になっていた。なんでも大統領命令らしい。
 新しい仲間もできた。実験用のラットたちだ。何故この研究所でラットを使うのかはわからないが……。
 俺の仕事も細菌の世話からラットの世話に変わった。……昇進……と思っていいのだろうか。給料は全然変わってないけど。
 まあ変化があるのは嬉しい。ネズミたちも細菌よりはかわいいしな。俺はネズミの一匹にスチュアートと名付けた。あの映画また見たいな。

2月3日(水)晴
 ジョアンヌが俺の研究所についてしつこく聞いてくる。恐らく町の住人に聞けと言われたのだろう。軍の奴らが出入りして不安なのはごもっともだが俺にも訳がわからない。あまりにしつこいのでつい怒鳴りつけてしまった。彼女は泣きながら飛び出てった。あんな女知るか。
 今日から煩わしい防護服を着ることになった。前までは白衣だけでOKだったのに……。同僚に聞いてみるとなんでも細菌が突然変異で生物への感染力が高まったらしい。だからってここまでするか……感染しても風邪で済みそうなもんだけど……。

2月4日(木)雨
 ジョアンヌとはまだ連絡をとってない。悪いのは俺じゃない向こうだ。絶対に俺からは折れてやらない。
 仕事の話だが、妙なことが起きた。スチュアートに細菌を投与すると暴れて血を吐いて死んだかと思ったらまた動き始めたのだ!!心拍数は下がっていたが光や刺激には反応するし餌も食う。だが趣向が変わったらしくひまわりの種よりも肉を好む様になった。グルメな奴め。
 スチュアートは大人しいやつだったが興味深いことに他のラットを襲う様になった。動物の行動は専門外だが発情期というやつだろうか。スチュアートも隅におけない。
 ……彼女も俺が恋しいはずだ。

2月5日(金)曇
 最悪だ。スチュアートが俺の指を噛みやがった。面倒臭い防護服を着なかったらこれだ……俺は運が悪い。
 ラットたちは前と比べて凶暴になった。餌は十分に与えているのに共食いをし始める奴らまでいる。まったく、肉食系どころではない。
 ああ、くそっ!!噛まれた傷がまだ痛みやがる。
 ……こんな時彼女がいたら……。

2月6日(土)晴
 朝から頭が痛い。熱を測ったら見たことのない数字が出た。今日は仕事を休むことにした。……ジョアンヌが恋しい……。


 夜になると体調が更に悪化して血まで吐いてしまった。もらっていたマニュアル通り軍に連絡する。大丈夫、すぐに良くなるはずだ。

2月7日(日)?
 気がついたらガラスの檻に入れられていた。防護服をきた研究員たちが俺を観察している。ふざけるな。俺は動物園の猿じゃない。
 なんとかこの日記は隠し持つことができた。ここから出たらこれを公表してやる。
 頭が痛い。ジョアンヌ会いたい。

2が、8にち
 からだかゆいはらへったにくくううまいかゆいうまい

 ジョ  アン   ヌあいたい
 
 かゆい  うまい


日記はここで終わっている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

半神の守護者

ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。 超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。 〜概要〜 臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。 実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。 そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。 ■注記 本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。 他サイトにも投稿中

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...