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Season1
介錯ーConfusionー
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「それではよろしく頼む……」
「ポラリス君、無理しちゃダメよ……」
国王やアイリーン達に見送られながら庭園の門を少しだけ開けて外に出た。
城は驚くほどの静寂に包まれていた。おそらくリック隊長達は壊滅したのだろう。
「……地下室はこっちが近いです」
兵士たちの死を無駄にせぬようポラリスは気を引き締めた。
正門から離れているからだろうか。思ったよりもアンデットの数は少なかったがそれでも戦闘は避けて通る事は出来なかった。
シリウスとエストレアが次々とアンデットを切り捨てていく。三英雄の血を引く二人の戦いぶりを見てポラリスは少しだけ興奮していた。
「ポラリス、あとどれくらいだ?」
シリウスが尋ねる。
「あとはそこの角の階段を降りるだけです」
階段までの道にアンデットが15体ほどいたがシリウスとエストレアが軽々と倒していく。
(すごい……これが七英傑の……三英雄の子孫の力……)
ポラリスは二人の戦いぶりに見惚れていた。
シリウスは細身でありながらも彼の最初の旅で手に入れたと言う魔剣、ダーインスレイヴで軽々とアンデットを両断していく。
エストレアは両手に持ったレイピアに似た二本の細い剣で舞うように戦っていた。彼女の素質だろうか、時折魔力でできた剣を出現させ背後から襲おうとする敵を撃退していた。
「ふう。どうやら私は必要なさそうだったな」
ビルが拗ねるように言った。
二人のお陰で地下室へ続く階段まで特に危なげもなく到着できた。
「うう、暗い……本当にこんなとこに入んなきゃならねーのか?」
ここまで怯えていたナナシが更に怯えたように話す。
「“光よ”……来たくなければ来るな」
魔法で光の球を生み出し、辺りを照らしながらシリウスが入っていった。
ポラリス達も壁にかかっていた松明に火をつけ、手に持って進んだ。その様子にナナシも慌ててついて来る。
階段を折り返す踊り場に差し掛かる時であった。
「ゔゔゔゔああああああ!!」
何かの唸り声が暗闇から聞こえてきた。
シリウスは剣を構えながら光球をもう一つ作り、声の方向に飛ばした。
光球に照らされ、人影が現れる。
「………!?リック隊長……」
その正体にポラリスが驚きの声を上げる。
リック隊長だったものはは唸りながらこちらに手を伸ばしていた。
しかし、その手がこちらに届く事はない。
自身でやったのだろうか。その腹には剣が突き刺され、その体を壁に固定していた。
「リック殿……恐らくこの脱出路を守っていたのだろう。その途中で力尽き、せめて迷惑をかけぬようにと自らを拘束した……」
ビルが彼の最後を想像する。リック隊長らしい。ポラリスは何故か納得していた。
「……自分が介錯します……」
槍を首元に向けると手に力を込め、喉を貫いた。
リック隊長はすぐに動かなくなった。
ポラリスはその場で立ち尽くしていた。
「……先に行ってるぞ……」
何かを察したのだろう。シリウス達は地下室を目指して進んで行った。
「……兵隊さん……これを……」
ナナシがどこから取り出したのか大きな布を渡した。
「誰か知らねーが大切な人なんだろ……そのまま野晒しにしとくのも忍びねーしな」
「ナナシさん……ありがとうございます」
「なーに。あんたは命の恩人だからな!」
照れ臭そうに笑いながらナナシも去っていく。
「リック隊長……ありがとうございました……」
ポラリスは泣きながら彼を弔った。
「ポラリス君、無理しちゃダメよ……」
国王やアイリーン達に見送られながら庭園の門を少しだけ開けて外に出た。
城は驚くほどの静寂に包まれていた。おそらくリック隊長達は壊滅したのだろう。
「……地下室はこっちが近いです」
兵士たちの死を無駄にせぬようポラリスは気を引き締めた。
正門から離れているからだろうか。思ったよりもアンデットの数は少なかったがそれでも戦闘は避けて通る事は出来なかった。
シリウスとエストレアが次々とアンデットを切り捨てていく。三英雄の血を引く二人の戦いぶりを見てポラリスは少しだけ興奮していた。
「ポラリス、あとどれくらいだ?」
シリウスが尋ねる。
「あとはそこの角の階段を降りるだけです」
階段までの道にアンデットが15体ほどいたがシリウスとエストレアが軽々と倒していく。
(すごい……これが七英傑の……三英雄の子孫の力……)
ポラリスは二人の戦いぶりに見惚れていた。
シリウスは細身でありながらも彼の最初の旅で手に入れたと言う魔剣、ダーインスレイヴで軽々とアンデットを両断していく。
エストレアは両手に持ったレイピアに似た二本の細い剣で舞うように戦っていた。彼女の素質だろうか、時折魔力でできた剣を出現させ背後から襲おうとする敵を撃退していた。
「ふう。どうやら私は必要なさそうだったな」
ビルが拗ねるように言った。
二人のお陰で地下室へ続く階段まで特に危なげもなく到着できた。
「うう、暗い……本当にこんなとこに入んなきゃならねーのか?」
ここまで怯えていたナナシが更に怯えたように話す。
「“光よ”……来たくなければ来るな」
魔法で光の球を生み出し、辺りを照らしながらシリウスが入っていった。
ポラリス達も壁にかかっていた松明に火をつけ、手に持って進んだ。その様子にナナシも慌ててついて来る。
階段を折り返す踊り場に差し掛かる時であった。
「ゔゔゔゔああああああ!!」
何かの唸り声が暗闇から聞こえてきた。
シリウスは剣を構えながら光球をもう一つ作り、声の方向に飛ばした。
光球に照らされ、人影が現れる。
「………!?リック隊長……」
その正体にポラリスが驚きの声を上げる。
リック隊長だったものはは唸りながらこちらに手を伸ばしていた。
しかし、その手がこちらに届く事はない。
自身でやったのだろうか。その腹には剣が突き刺され、その体を壁に固定していた。
「リック殿……恐らくこの脱出路を守っていたのだろう。その途中で力尽き、せめて迷惑をかけぬようにと自らを拘束した……」
ビルが彼の最後を想像する。リック隊長らしい。ポラリスは何故か納得していた。
「……自分が介錯します……」
槍を首元に向けると手に力を込め、喉を貫いた。
リック隊長はすぐに動かなくなった。
ポラリスはその場で立ち尽くしていた。
「……先に行ってるぞ……」
何かを察したのだろう。シリウス達は地下室を目指して進んで行った。
「……兵隊さん……これを……」
ナナシがどこから取り出したのか大きな布を渡した。
「誰か知らねーが大切な人なんだろ……そのまま野晒しにしとくのも忍びねーしな」
「ナナシさん……ありがとうございます」
「なーに。あんたは命の恩人だからな!」
照れ臭そうに笑いながらナナシも去っていく。
「リック隊長……ありがとうございました……」
ポラリスは泣きながら彼を弔った。
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