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Season1
花ーMemoryー
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一先ず脱出路への道の安全を確保するため先遣隊を送ることになった。
城の構造を良く知っているポラリス、戦闘要員としてシリウス、エストレア、ビルが選ばれた。また、王女が盗人と同じ空間にいることを嫌がったためナナシもついて来ることになった。
「カヲル、国王達を頼んだぞ」
「はい、お任せくださいビルさん」
カヲルは国王達を守るため庭園に待機することになった。
ポラリスが準備をしていると国王が近寄り、話しかけてくる。
「其方、名前は何と言うんじゃ」
「ポ、ポラリスです」
「ポラリス……いい名じゃな。いつも城の掃除や母上の作ったこの庭園の手入れをしてくれておるじゃろう」
驚いた。まさか国王が自分のことを認識してくれていたとは。
ポラリスが話す言葉を選んでいると国王がその手をポラリスの背中に置いた。
するとポラリスの傷は癒え、疲労感も消えていった。
「っ!!王様、これは!?」
「ほっほっほ。儂も若い頃はアルタイルのような勇者を夢見ておったものじゃ。だがシリウスのような剣の才は儂にはなかった。それでも勇者の夢が諦めきれなくてのう。せめて治癒魔法でも覚えたわけじゃ」
国王の治癒魔法は疲労まで消し去るほどの高度なものであり、国王のそれまでの努力を伺わせた。
「ポラリス、其方に頼むようなことではないと思うが……我が息子シリウスとエストレアをよろしく頼む」
「!?しかし、シリウス様とエストレア様は自分などよりもずっと強いはずでは!?」
「シリウスは仲間を失い、絶望の淵に立たされておる。表面は平常を装っていてもその内はどうなっておるのか儂でも想像できん。エストレアも同じじゃ。そんな奴らを救ってやれるのは其方のような者だと儂は思う」
キョトンとするポラリスの顔を見て国王は続ける。
「其方のように才能がなくとも夢を諦めない馬鹿者の力がな」
「……王様、それって……」
国王はポラリスの顔を見てニコッと笑いシリウスの元へ何かを話しに行った。
これからまたあの地獄に戻らなければならない。
ポラリスは気を落ち着けるために外の空気を吸いに出た。
外に出るとエストレアが月光花を見つめていた。白く光る花に囲まれる彼女はポラリスには妖精に見えた。
彼女がこちらに気づいたのでポラリスも彼女の元へ近づき話しかける。
「……この花……お好きなんですか?」
「…………。」
ポラリスの問いに少し間を開けると、彼女は頷く。
「……初めてこの城に来た夜に王の母上に見せてもらった。」
エストレアは幼い時に三英雄ベガの子孫としてこの城にやってきた。数年前に亡くなった先代の王女が彼女の面倒を率先して見ていたらしい。
「……あの方が死んでから……ここには花は植えられてなかったはずだけど…?」
先代の王女が亡くなってから、庭園は雑草が生えないように管理されただけで花などは植えられていなかった。この庭園に再び花を植えたのはポラリスが2年前にこの城にやってきてからである。
「はい。何だか寂しかったんで二年前から植えたんです。庭師の方達にも手伝ってもらって」
雑草の手入れしか仕事をしていなかった庭師も地道に花を植えるポラリスの熱意に打たれて手伝っていた。
「……何故…この花を……?」
「この庭園を作った先代の王女様がこの花をお好きだったと聞いていたので。それに……この庭園と王女様のことを皆んな忘れてしまうなんて……そんなの寂しいじゃないですか……」
「……そう……。」
普段無表情の彼女が少しだけ笑った気がした。
城の構造を良く知っているポラリス、戦闘要員としてシリウス、エストレア、ビルが選ばれた。また、王女が盗人と同じ空間にいることを嫌がったためナナシもついて来ることになった。
「カヲル、国王達を頼んだぞ」
「はい、お任せくださいビルさん」
カヲルは国王達を守るため庭園に待機することになった。
ポラリスが準備をしていると国王が近寄り、話しかけてくる。
「其方、名前は何と言うんじゃ」
「ポ、ポラリスです」
「ポラリス……いい名じゃな。いつも城の掃除や母上の作ったこの庭園の手入れをしてくれておるじゃろう」
驚いた。まさか国王が自分のことを認識してくれていたとは。
ポラリスが話す言葉を選んでいると国王がその手をポラリスの背中に置いた。
するとポラリスの傷は癒え、疲労感も消えていった。
「っ!!王様、これは!?」
「ほっほっほ。儂も若い頃はアルタイルのような勇者を夢見ておったものじゃ。だがシリウスのような剣の才は儂にはなかった。それでも勇者の夢が諦めきれなくてのう。せめて治癒魔法でも覚えたわけじゃ」
国王の治癒魔法は疲労まで消し去るほどの高度なものであり、国王のそれまでの努力を伺わせた。
「ポラリス、其方に頼むようなことではないと思うが……我が息子シリウスとエストレアをよろしく頼む」
「!?しかし、シリウス様とエストレア様は自分などよりもずっと強いはずでは!?」
「シリウスは仲間を失い、絶望の淵に立たされておる。表面は平常を装っていてもその内はどうなっておるのか儂でも想像できん。エストレアも同じじゃ。そんな奴らを救ってやれるのは其方のような者だと儂は思う」
キョトンとするポラリスの顔を見て国王は続ける。
「其方のように才能がなくとも夢を諦めない馬鹿者の力がな」
「……王様、それって……」
国王はポラリスの顔を見てニコッと笑いシリウスの元へ何かを話しに行った。
これからまたあの地獄に戻らなければならない。
ポラリスは気を落ち着けるために外の空気を吸いに出た。
外に出るとエストレアが月光花を見つめていた。白く光る花に囲まれる彼女はポラリスには妖精に見えた。
彼女がこちらに気づいたのでポラリスも彼女の元へ近づき話しかける。
「……この花……お好きなんですか?」
「…………。」
ポラリスの問いに少し間を開けると、彼女は頷く。
「……初めてこの城に来た夜に王の母上に見せてもらった。」
エストレアは幼い時に三英雄ベガの子孫としてこの城にやってきた。数年前に亡くなった先代の王女が彼女の面倒を率先して見ていたらしい。
「……あの方が死んでから……ここには花は植えられてなかったはずだけど…?」
先代の王女が亡くなってから、庭園は雑草が生えないように管理されただけで花などは植えられていなかった。この庭園に再び花を植えたのはポラリスが2年前にこの城にやってきてからである。
「はい。何だか寂しかったんで二年前から植えたんです。庭師の方達にも手伝ってもらって」
雑草の手入れしか仕事をしていなかった庭師も地道に花を植えるポラリスの熱意に打たれて手伝っていた。
「……何故…この花を……?」
「この庭園を作った先代の王女様がこの花をお好きだったと聞いていたので。それに……この庭園と王女様のことを皆んな忘れてしまうなんて……そんなの寂しいじゃないですか……」
「……そう……。」
普段無表情の彼女が少しだけ笑った気がした。
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