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Season1
拠点ーCastleー
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城に残った人々は皆広間に集まっていたため廊下には人の気配がしなかった。
「急ぎましょう!!」
リック隊長達が押さえ込んで入るがそれでも何体かのアンデットが追ってくる。
恐らく彼らが全滅した時、この城はアンデット達で溢れるだろう。
庭園は城の南側に位置していた。ルシウス国王の母親にあたる先代王女により城壁と城の間の空き地に作られていた。ポラリスの城での基本的な業務はこの庭園の管理でもあった。
庭園への入り口は厚い門で塞がれていた。
ポラリスは門の向かい側にある執事室から鍵束も取ってきた。これで城のほとんどの部屋が開くはずである。
門を開けると、庭園を初めて目にする者は息を飲んだ。
「……きれい……」
アイリーンが呟く。一面には真白い花が月に向かって咲き誇っていた。
この季節は花壇には月光花と呼ばれる白い花を植えていた。この花は月に向かって花弁を開く習性があり、月の光を浴びて妖しく光る。先代女王が特に愛した花でもあった。
空には大きな満月、地面は白い花びらの海。まるでこの状況が夢であるかのような幻想的な風景がそこには広がっていた。
「皆さん!!こちらに!」
庭園の隅にあるレンガ造りの小屋の扉を開ける。花に見惚れていた人達はハッと我に帰り小屋に入っていった。ただ一人、エストレアは最後までぼーっと花を見ていた。
「なんて汚い場所なの!!」
「まあまあアンドロメダ。仕方ないじゃないか」
喚く女王を国王がなだめる。
管理人小屋を普段利用する庭職人達は掃除とは無縁の男達であった。
「ポラリス君、食糧や水はどれほど保ちそうなんだ?」
ビルが尋ねる。ポラリスは戸棚を漁り庭職人が隠し持っていた酒やつまみを含めた食料を集めた。元々居住を目的で建てられたわけではないのでその量はとても少なかった。
「11人でこれだと……明日まで保つかどうか……」
一同に沈黙が流れる。
「……いつまでもここに篭るわけにもいかぬか」
国王が頭を抱える。
ガラクシアは他の街や国とも離れているためすぐに救助は期待できないだろう。
「……仕方ないのう。脱出路を使おう」
「なっ!!あなた!あれを使うのはこの国の破滅の時だけのはずよ!」
「……父上、なんですかそれは」
シリウスが尋ねる。
「この城の地下室、さらにその地下にある坑道だ。この街の外まで繋がっていてこの地がドワーフの国だった頃に作られたと言われている」
「……なぜそれを早く言わないのです」
「……勇者アルタイルの血を引く我々がご先祖の創ったこの国を捨てるのは決して許されん。故に無闇には使えんのだ。存在も儂とアンドロメダ、親衛隊長とリック隊長しか知らん。
勇者アルタイルは数々の武勇を残している。その名前に泥を塗らぬためにも無闇に逃げるわけにはいかなかったのだ」
「……」
シリウスは黙り込む。
「……だがもうそんな事は言ってられん。勇者の名は汚れても血まで途絶える事は許されん。それに民をおちおち死なせては先祖に顔向けできんしの」
国王がアイリーンやジョシュ、ルーナに目をやりながる話す。
「……!!平民達の前で脱出路のことを話すなんて!!貴方こそご先祖の恥よ!!」
王女が罵ると国王はしょんぼりとした。
「……とにかく希望は見えたようですね。そこに向かいましょう」
突如できた脱出路に一同の暗い雰囲気がわずかに吹き飛んだ。
「急ぎましょう!!」
リック隊長達が押さえ込んで入るがそれでも何体かのアンデットが追ってくる。
恐らく彼らが全滅した時、この城はアンデット達で溢れるだろう。
庭園は城の南側に位置していた。ルシウス国王の母親にあたる先代王女により城壁と城の間の空き地に作られていた。ポラリスの城での基本的な業務はこの庭園の管理でもあった。
庭園への入り口は厚い門で塞がれていた。
ポラリスは門の向かい側にある執事室から鍵束も取ってきた。これで城のほとんどの部屋が開くはずである。
門を開けると、庭園を初めて目にする者は息を飲んだ。
「……きれい……」
アイリーンが呟く。一面には真白い花が月に向かって咲き誇っていた。
この季節は花壇には月光花と呼ばれる白い花を植えていた。この花は月に向かって花弁を開く習性があり、月の光を浴びて妖しく光る。先代女王が特に愛した花でもあった。
空には大きな満月、地面は白い花びらの海。まるでこの状況が夢であるかのような幻想的な風景がそこには広がっていた。
「皆さん!!こちらに!」
庭園の隅にあるレンガ造りの小屋の扉を開ける。花に見惚れていた人達はハッと我に帰り小屋に入っていった。ただ一人、エストレアは最後までぼーっと花を見ていた。
「なんて汚い場所なの!!」
「まあまあアンドロメダ。仕方ないじゃないか」
喚く女王を国王がなだめる。
管理人小屋を普段利用する庭職人達は掃除とは無縁の男達であった。
「ポラリス君、食糧や水はどれほど保ちそうなんだ?」
ビルが尋ねる。ポラリスは戸棚を漁り庭職人が隠し持っていた酒やつまみを含めた食料を集めた。元々居住を目的で建てられたわけではないのでその量はとても少なかった。
「11人でこれだと……明日まで保つかどうか……」
一同に沈黙が流れる。
「……いつまでもここに篭るわけにもいかぬか」
国王が頭を抱える。
ガラクシアは他の街や国とも離れているためすぐに救助は期待できないだろう。
「……仕方ないのう。脱出路を使おう」
「なっ!!あなた!あれを使うのはこの国の破滅の時だけのはずよ!」
「……父上、なんですかそれは」
シリウスが尋ねる。
「この城の地下室、さらにその地下にある坑道だ。この街の外まで繋がっていてこの地がドワーフの国だった頃に作られたと言われている」
「……なぜそれを早く言わないのです」
「……勇者アルタイルの血を引く我々がご先祖の創ったこの国を捨てるのは決して許されん。故に無闇には使えんのだ。存在も儂とアンドロメダ、親衛隊長とリック隊長しか知らん。
勇者アルタイルは数々の武勇を残している。その名前に泥を塗らぬためにも無闇に逃げるわけにはいかなかったのだ」
「……」
シリウスは黙り込む。
「……だがもうそんな事は言ってられん。勇者の名は汚れても血まで途絶える事は許されん。それに民をおちおち死なせては先祖に顔向けできんしの」
国王がアイリーンやジョシュ、ルーナに目をやりながる話す。
「……!!平民達の前で脱出路のことを話すなんて!!貴方こそご先祖の恥よ!!」
王女が罵ると国王はしょんぼりとした。
「……とにかく希望は見えたようですね。そこに向かいましょう」
突如できた脱出路に一同の暗い雰囲気がわずかに吹き飛んだ。
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