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Season1
強者ーWarriorー
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ファランクスはこれまでの戦と同じ無敵ぶりを見せた。疲労の溜まった兵士は後ろに控える兵士と交代することで前衛は一切崩壊する気配は見せない。これは普段の訓練と実戦経験の賜物である。
アンデットの数は緩やかにではあるが確かに減ってきていた。
「皆、終わりは近い!気を抜くなよ!!」
皆に気を引き締めさせるとリック隊長はある違和感に気付いた。
アンデットたちの攻撃が急に止み、後退し始めたのだ。
(アンデットが後退?知能はほとんどないはずだが……)
兵士たちになお気を張らせ怪訝な目で観察しているとさらにアンデットは何かを通すように一斉に左右に分かれて道を開けた。
アンデット達で作られた道の先には人影が一つ見えた。リック隊長はその人影に目を凝らした。
ハゲ上がった頭に皺皺な顔。体は骨と皮だけのように細く痩せ細った老人が一人立っていた。かなり高齢に見えるが背筋はピンと伸びきっており、自分の身の丈よりもずっと長い刀を軽々と腰に差していた。
光のない白目でこちらに突き刺さるように睨みつける鋭い視線とその立ち姿に見覚えがあった。
「剣聖……ムサシ……」
剣聖ムサシ。七英傑の一人にして刀の達人。齢は100を超えるとも言われており、歳をとって衰えてなお愛刀である背丈よりも長い刀、物干し竿を軽々と振り回す。全盛期は山をも切ったという伝説が残っている。
リック隊長が唖然としているとムサシは身をかがめ居合の構えをとった。
「っ!!総員!!盾にありったけの魔力を込めろ!!守りをより強固にしろ!!」
ムサシの構えに焦ったように叫ぶ。
ムサシは居合の構えから刀を鞘から抜くと同時に全身をバネにするように地面を蹴った。100mは離れていたであろう距離が一瞬で縮まる。
「……我流…横…一文字…」
掠れた声でアンデットのはずのムサシから発せられた言葉をリックが聞き取る頃には数十人の兵士は盾ごと上半身と下半身に両断されていた。ファランクスは崩壊した。
「!!!!後退!!後退だ!!皆城内に戻れ!!城門を閉じろ!!」
開いてしまった“鉄壁”の穴からアンデットが一気に入り込んでいる。隊長の言う通り後退しようとする兵士のほとんどがその波に飲まれてしまった。
城門を閉じようとするも大量のアンデットの波によって押し返されてしまう。リック隊長達は急いで城内に入って扉を塞いだ。
剣聖ムサシは不気味なほど落ち着いた足取りで城門をくぐった。
アンデットの数は緩やかにではあるが確かに減ってきていた。
「皆、終わりは近い!気を抜くなよ!!」
皆に気を引き締めさせるとリック隊長はある違和感に気付いた。
アンデットたちの攻撃が急に止み、後退し始めたのだ。
(アンデットが後退?知能はほとんどないはずだが……)
兵士たちになお気を張らせ怪訝な目で観察しているとさらにアンデットは何かを通すように一斉に左右に分かれて道を開けた。
アンデット達で作られた道の先には人影が一つ見えた。リック隊長はその人影に目を凝らした。
ハゲ上がった頭に皺皺な顔。体は骨と皮だけのように細く痩せ細った老人が一人立っていた。かなり高齢に見えるが背筋はピンと伸びきっており、自分の身の丈よりもずっと長い刀を軽々と腰に差していた。
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「剣聖……ムサシ……」
剣聖ムサシ。七英傑の一人にして刀の達人。齢は100を超えるとも言われており、歳をとって衰えてなお愛刀である背丈よりも長い刀、物干し竿を軽々と振り回す。全盛期は山をも切ったという伝説が残っている。
リック隊長が唖然としているとムサシは身をかがめ居合の構えをとった。
「っ!!総員!!盾にありったけの魔力を込めろ!!守りをより強固にしろ!!」
ムサシの構えに焦ったように叫ぶ。
ムサシは居合の構えから刀を鞘から抜くと同時に全身をバネにするように地面を蹴った。100mは離れていたであろう距離が一瞬で縮まる。
「……我流…横…一文字…」
掠れた声でアンデットのはずのムサシから発せられた言葉をリックが聞き取る頃には数十人の兵士は盾ごと上半身と下半身に両断されていた。ファランクスは崩壊した。
「!!!!後退!!後退だ!!皆城内に戻れ!!城門を閉じろ!!」
開いてしまった“鉄壁”の穴からアンデットが一気に入り込んでいる。隊長の言う通り後退しようとする兵士のほとんどがその波に飲まれてしまった。
城門を閉じようとするも大量のアンデットの波によって押し返されてしまう。リック隊長達は急いで城内に入って扉を塞いだ。
剣聖ムサシは不気味なほど落ち着いた足取りで城門をくぐった。
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