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Season1
鉄壁ーPharanxー2
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隙間なく構えられた盾の一つ一つは魔法が付与されており、並の攻撃で突破することは不可能である。それに加えて並べられた盾の紋様が魔法陣を形成し、さらに魔法の壁を形成する。この壁は物理、魔法、呪いなど全ての攻撃に対しての防御力を限界まで向上させていた。
「弓、構え……射てぇ!!」
リック隊長の合図で後方から一斉に矢が放たれる。数十体のアンデットが倒れるがアンデットはもちろん意にも介さず進行してくる。
「接敵するぞ!!踏ん張れ!!」
アンデットとファランクスが押し合う。魔法の壁と魔法陣による強化にによってびくとも動かなかった。
「槍用意!!突け!!」
こちらも魔法で加工された槍は盾を通り抜けアンデットのみを突く。
無敵の鉄壁とそれを崩すことなく行われる攻撃。このファランクスによってラウム王国の戦は未だ無敗を誇っていた。
今まで、もっと多くの敵を凌いできた。しかも今回は攻撃が単調なアンデットである。負けるはずがない。リック隊長も兵士も余裕の表情で戦に臨んだ。
「ポラリス君!!動かないで!!」
「あいたたた!!」
頭の傷をアイリーンに手当てしてもらいながら辺りを見渡した。
避難してきた市民は城内の広間に集められていた。数は百人位だろうか。一般市民の他にも休息のために避難した戦士ギルドや魔術師ギルドの者もちらほらといた。さらに囚人だろうか。兵士と手錠で繋がれた男もいた。
「何故妾が民と同じ場所に居なければならないの!!」
広間の奥で兵士に厳重に守られながら抗議する女性がいた。
「申し訳ありません。人手不足なもので王女様達と民の者たちで護衛の人員を割くことができませんでした。」
金色の鎧を纏った兵士が答える。王の親衛隊長だろう。
「まあまあいいじゃないかアンドロメダ。我々だけ安全な場所に居て民を危険に晒すわけにもいくまい」
「あなた!!そんなに甘いから他国にも舐められるのですわ!!それにシリウスの身に何かあって見なさい!勇者の血が絶たれることになるんですわよ!!」
「うう……」
王女をなだめるこの初老の男がラウム王国14代目国王ルシウス・ラウムである。三英雄の一人、勇者アルタイルの血を引くが妻である王女アンドロメダには頭が上がらないようだ。
二人の隣にいるのは二人の息子、シリウス・ラウムである。彼は勇者アルタイルの再来とも言われるほどの実力者であり、七英傑にも数えられる。よほど疲れているのだろう。項垂れるように座り込んでいる。
「この広間には城の兵士はもちろん戦士ギルドや魔術師ギルドの者も多く集っています。更に先程エストリア・プロキオン様も戻ってこられました。ここより安全な場はないかと」
「ふんっ!!……所であの男は?」
手錠に繋がれた男を睨みつける。
「あれは先程城に盗みに入っていた所を捕らえた者です。牢獄に放り込もうとしたのですがこの混乱により一旦この場で拘束しております」
またもや王女は気に入らなそうな顔をする。
その時国王が慌てたように親衛隊長に問い詰めた。
「待て待て待て。エストリア以外の天界の戦乙女の者が見られないが……」
「……ワルキューレは街の鎮圧に向かっておりましたが……帰ってきたのはエストレア様ただ一人でした」
親衛隊長の言葉に国王は絶句する。天界の戦乙女は女性だけで構成された王国の先鋭部隊であり、清らかな淑女のみに心を許す天馬に乗って戦場を駆けた。
「なんだか色々と大変みたいね」
国王たちのやりとりを遠目に見ながらアイリーンはヒソヒソと話す。
ビルは城の兵隊と警備について話し合っており、エストレアは部屋の隅で壁に寄りかかって眠っていた。ジョシュとアイリーンはというと初めて入る城に大はしゃぎである。
(大丈夫。リック隊長の指揮するファランクスが破られたことなんてない)
そう自分に言い聞かせたが何か嫌な胸騒ぎがした。
「弓、構え……射てぇ!!」
リック隊長の合図で後方から一斉に矢が放たれる。数十体のアンデットが倒れるがアンデットはもちろん意にも介さず進行してくる。
「接敵するぞ!!踏ん張れ!!」
アンデットとファランクスが押し合う。魔法の壁と魔法陣による強化にによってびくとも動かなかった。
「槍用意!!突け!!」
こちらも魔法で加工された槍は盾を通り抜けアンデットのみを突く。
無敵の鉄壁とそれを崩すことなく行われる攻撃。このファランクスによってラウム王国の戦は未だ無敗を誇っていた。
今まで、もっと多くの敵を凌いできた。しかも今回は攻撃が単調なアンデットである。負けるはずがない。リック隊長も兵士も余裕の表情で戦に臨んだ。
「ポラリス君!!動かないで!!」
「あいたたた!!」
頭の傷をアイリーンに手当てしてもらいながら辺りを見渡した。
避難してきた市民は城内の広間に集められていた。数は百人位だろうか。一般市民の他にも休息のために避難した戦士ギルドや魔術師ギルドの者もちらほらといた。さらに囚人だろうか。兵士と手錠で繋がれた男もいた。
「何故妾が民と同じ場所に居なければならないの!!」
広間の奥で兵士に厳重に守られながら抗議する女性がいた。
「申し訳ありません。人手不足なもので王女様達と民の者たちで護衛の人員を割くことができませんでした。」
金色の鎧を纏った兵士が答える。王の親衛隊長だろう。
「まあまあいいじゃないかアンドロメダ。我々だけ安全な場所に居て民を危険に晒すわけにもいくまい」
「あなた!!そんなに甘いから他国にも舐められるのですわ!!それにシリウスの身に何かあって見なさい!勇者の血が絶たれることになるんですわよ!!」
「うう……」
王女をなだめるこの初老の男がラウム王国14代目国王ルシウス・ラウムである。三英雄の一人、勇者アルタイルの血を引くが妻である王女アンドロメダには頭が上がらないようだ。
二人の隣にいるのは二人の息子、シリウス・ラウムである。彼は勇者アルタイルの再来とも言われるほどの実力者であり、七英傑にも数えられる。よほど疲れているのだろう。項垂れるように座り込んでいる。
「この広間には城の兵士はもちろん戦士ギルドや魔術師ギルドの者も多く集っています。更に先程エストリア・プロキオン様も戻ってこられました。ここより安全な場はないかと」
「ふんっ!!……所であの男は?」
手錠に繋がれた男を睨みつける。
「あれは先程城に盗みに入っていた所を捕らえた者です。牢獄に放り込もうとしたのですがこの混乱により一旦この場で拘束しております」
またもや王女は気に入らなそうな顔をする。
その時国王が慌てたように親衛隊長に問い詰めた。
「待て待て待て。エストリア以外の天界の戦乙女の者が見られないが……」
「……ワルキューレは街の鎮圧に向かっておりましたが……帰ってきたのはエストレア様ただ一人でした」
親衛隊長の言葉に国王は絶句する。天界の戦乙女は女性だけで構成された王国の先鋭部隊であり、清らかな淑女のみに心を許す天馬に乗って戦場を駆けた。
「なんだか色々と大変みたいね」
国王たちのやりとりを遠目に見ながらアイリーンはヒソヒソと話す。
ビルは城の兵隊と警備について話し合っており、エストレアは部屋の隅で壁に寄りかかって眠っていた。ジョシュとアイリーンはというと初めて入る城に大はしゃぎである。
(大丈夫。リック隊長の指揮するファランクスが破られたことなんてない)
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