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Season1

白銀ーAngelー2

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 色白の肌に腰まで伸びた美しい銀髪。突如現れた女性をポラリスは自分を迎えにきた天使だと思った。
 しかし白銀の天使は両手に持った剣で次々とオークを切りつけていく。その流れるように美しい剣筋にポラリスは見惚れ、何とか意識を保った。
 あっという間に三体のオークを切り捨てた女性はなおも剣を収めず屋根を睨みつけていた。
 すると今までよりも一回り大きいオークが飛び降りてきた。
 恐らくオークの族長だろう。オークの一団が戦争から帰還する際にこの街で休息をとっているという話を思い出した。

 自分の二倍はあろうという体格を前に女性は少しも物怖じていなかった。こちらに突進してくるオークに片方の剣を向ける。

「……刃の踊りダンザ・フィロ

 無数に現れた魔力で造られた小さな刃がオークを切り裂き、ズタボロになったオークはもう動かなかった。



「…もう危険はない。」

 振り返ったその整った顔を見てポラリスはその天使の名前を思い出した。

「エストレアさん…!!」

 七英傑が一人、白銀の天使エストレア・プロキオン。三英雄、天女ベガの子孫であるとも言われ、ラウム王国の特殊部隊である天界の戦乙女(ワルキューレ)部隊の隊長も務める。
 話したことはないが城で何度かポラリスも見かけており、その凛とした佇まいと美しい剣技に目を奪われた。憧れの存在であった。

「……大丈夫?」

 自分をじっと見つめるポラリスに不思議そうに尋ねる。ポラリスは顔を赤らめ、慌てて目線を逸らす。
 自分の体を改めて確認すると、槍が折れたことで衝撃が和らぎ、幸いにも骨は折れていないようだった。しかし壁に打ち付けた頭からは血が流れ出していた。

「大変!!血が止まらない!!」

 止血してくれていたアイリーンが慌てて叫ぶ。
 それを聞くとエストレアは懐から小瓶を取り出してポラリスに飲ませた。

「……ポーション。濃度は薄いけど血くらいは止まるはず。」

 その言葉通り血は止まり、よろよろとだが立ち上がることもできるようになった。

「あ、ありがとうございます!」
 
 アイリーンに支えられながら何とか立ち、礼を言うとビルもこちらに戻ってきた。

「ポラリス君!!大丈夫かね!」
「…すみませんビルさん…油断してしまいました」
「いや私も迂闊だった。まさかオークが一団で襲ってくるとは。怪我の具合はどうかね」
「……大丈夫です……血は止まりました」
「血は止まったかも知れないが立っているのがやっとじゃないか」
「……早く城に向かわないと……自分は足手まといになりそうなのでいざとなったら置いていってください。それよりもアイリーンさん達のことをお願いします」
「なにを言うの!!」

 アイリーンに叱咤された。しかし足手まといの自分を連れてビルだけの護衛で城に向かうのは危険である。
 そんなやりとりを見てエストレアが口を開く。

「……あなた達、城に向かうの?……私も帰還するところだ。同行しよう。」
「おお!白銀の天使殿が一緒に来てくれるとはこれほど心強いことはない!!」
「えっ!?この人が白銀の天使!?あの七英傑の!?」

 エストレアの正体にようやく気づいたアイリーンが驚く。ジョシュとルーナも目を輝かせながらエストレアに近づいた。

「あの!!握手してください!!」
「……私はただの戦士……任務は敵を排除することだ。それは仕事に含まれない……。」

 差し出された手を冷たく無視する。二人は泣き出しそうになってしまった。

「まあまあ、代わりにこのビルおじさんと握手しようじゃないか」
「おじさんは怖いからや!!」

 差し出した手を冷たくあしらわれたビルはどこか悲しそうだった。
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