10 / 106
Season1
白銀ーAngelー2
しおりを挟む
色白の肌に腰まで伸びた美しい銀髪。突如現れた女性をポラリスは自分を迎えにきた天使だと思った。
しかし白銀の天使は両手に持った剣で次々とオークを切りつけていく。その流れるように美しい剣筋にポラリスは見惚れ、何とか意識を保った。
あっという間に三体のオークを切り捨てた女性はなおも剣を収めず屋根を睨みつけていた。
すると今までよりも一回り大きいオークが飛び降りてきた。
恐らくオークの族長だろう。オークの一団が戦争から帰還する際にこの街で休息をとっているという話を思い出した。
自分の二倍はあろうという体格を前に女性は少しも物怖じていなかった。こちらに突進してくるオークに片方の剣を向ける。
「……刃の踊り」
無数に現れた魔力で造られた小さな刃がオークを切り裂き、ズタボロになったオークはもう動かなかった。
「…もう危険はない。」
振り返ったその整った顔を見てポラリスはその天使の名前を思い出した。
「エストレアさん…!!」
七英傑が一人、白銀の天使エストレア・プロキオン。三英雄、天女ベガの子孫であるとも言われ、ラウム王国の特殊部隊である天界の戦乙女(ワルキューレ)部隊の隊長も務める。
話したことはないが城で何度かポラリスも見かけており、その凛とした佇まいと美しい剣技に目を奪われた。憧れの存在であった。
「……大丈夫?」
自分をじっと見つめるポラリスに不思議そうに尋ねる。ポラリスは顔を赤らめ、慌てて目線を逸らす。
自分の体を改めて確認すると、槍が折れたことで衝撃が和らぎ、幸いにも骨は折れていないようだった。しかし壁に打ち付けた頭からは血が流れ出していた。
「大変!!血が止まらない!!」
止血してくれていたアイリーンが慌てて叫ぶ。
それを聞くとエストレアは懐から小瓶を取り出してポラリスに飲ませた。
「……ポーション。濃度は薄いけど血くらいは止まるはず。」
その言葉通り血は止まり、よろよろとだが立ち上がることもできるようになった。
「あ、ありがとうございます!」
アイリーンに支えられながら何とか立ち、礼を言うとビルもこちらに戻ってきた。
「ポラリス君!!大丈夫かね!」
「…すみませんビルさん…油断してしまいました」
「いや私も迂闊だった。まさかオークが一団で襲ってくるとは。怪我の具合はどうかね」
「……大丈夫です……血は止まりました」
「血は止まったかも知れないが立っているのがやっとじゃないか」
「……早く城に向かわないと……自分は足手まといになりそうなのでいざとなったら置いていってください。それよりもアイリーンさん達のことをお願いします」
「なにを言うの!!」
アイリーンに叱咤された。しかし足手まといの自分を連れてビルだけの護衛で城に向かうのは危険である。
そんなやりとりを見てエストレアが口を開く。
「……あなた達、城に向かうの?……私も帰還するところだ。同行しよう。」
「おお!白銀の天使殿が一緒に来てくれるとはこれほど心強いことはない!!」
「えっ!?この人が白銀の天使!?あの七英傑の!?」
エストレアの正体にようやく気づいたアイリーンが驚く。ジョシュとルーナも目を輝かせながらエストレアに近づいた。
「あの!!握手してください!!」
「……私はただの戦士……任務は敵を排除することだ。それは仕事に含まれない……。」
差し出された手を冷たく無視する。二人は泣き出しそうになってしまった。
「まあまあ、代わりにこのビルおじさんと握手しようじゃないか」
「おじさんは怖いからや!!」
差し出した手を冷たくあしらわれたビルはどこか悲しそうだった。
しかし白銀の天使は両手に持った剣で次々とオークを切りつけていく。その流れるように美しい剣筋にポラリスは見惚れ、何とか意識を保った。
あっという間に三体のオークを切り捨てた女性はなおも剣を収めず屋根を睨みつけていた。
すると今までよりも一回り大きいオークが飛び降りてきた。
恐らくオークの族長だろう。オークの一団が戦争から帰還する際にこの街で休息をとっているという話を思い出した。
自分の二倍はあろうという体格を前に女性は少しも物怖じていなかった。こちらに突進してくるオークに片方の剣を向ける。
「……刃の踊り」
無数に現れた魔力で造られた小さな刃がオークを切り裂き、ズタボロになったオークはもう動かなかった。
「…もう危険はない。」
振り返ったその整った顔を見てポラリスはその天使の名前を思い出した。
「エストレアさん…!!」
七英傑が一人、白銀の天使エストレア・プロキオン。三英雄、天女ベガの子孫であるとも言われ、ラウム王国の特殊部隊である天界の戦乙女(ワルキューレ)部隊の隊長も務める。
話したことはないが城で何度かポラリスも見かけており、その凛とした佇まいと美しい剣技に目を奪われた。憧れの存在であった。
「……大丈夫?」
自分をじっと見つめるポラリスに不思議そうに尋ねる。ポラリスは顔を赤らめ、慌てて目線を逸らす。
自分の体を改めて確認すると、槍が折れたことで衝撃が和らぎ、幸いにも骨は折れていないようだった。しかし壁に打ち付けた頭からは血が流れ出していた。
「大変!!血が止まらない!!」
止血してくれていたアイリーンが慌てて叫ぶ。
それを聞くとエストレアは懐から小瓶を取り出してポラリスに飲ませた。
「……ポーション。濃度は薄いけど血くらいは止まるはず。」
その言葉通り血は止まり、よろよろとだが立ち上がることもできるようになった。
「あ、ありがとうございます!」
アイリーンに支えられながら何とか立ち、礼を言うとビルもこちらに戻ってきた。
「ポラリス君!!大丈夫かね!」
「…すみませんビルさん…油断してしまいました」
「いや私も迂闊だった。まさかオークが一団で襲ってくるとは。怪我の具合はどうかね」
「……大丈夫です……血は止まりました」
「血は止まったかも知れないが立っているのがやっとじゃないか」
「……早く城に向かわないと……自分は足手まといになりそうなのでいざとなったら置いていってください。それよりもアイリーンさん達のことをお願いします」
「なにを言うの!!」
アイリーンに叱咤された。しかし足手まといの自分を連れてビルだけの護衛で城に向かうのは危険である。
そんなやりとりを見てエストレアが口を開く。
「……あなた達、城に向かうの?……私も帰還するところだ。同行しよう。」
「おお!白銀の天使殿が一緒に来てくれるとはこれほど心強いことはない!!」
「えっ!?この人が白銀の天使!?あの七英傑の!?」
エストレアの正体にようやく気づいたアイリーンが驚く。ジョシュとルーナも目を輝かせながらエストレアに近づいた。
「あの!!握手してください!!」
「……私はただの戦士……任務は敵を排除することだ。それは仕事に含まれない……。」
差し出された手を冷たく無視する。二人は泣き出しそうになってしまった。
「まあまあ、代わりにこのビルおじさんと握手しようじゃないか」
「おじさんは怖いからや!!」
差し出した手を冷たくあしらわれたビルはどこか悲しそうだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
お願いされて王太子と婚約しましたが、公爵令嬢と結婚するから側室になれと言われました
如月ぐるぐる
ファンタジー
シオンは伯爵令嬢として学園を首席で卒業し、華々しく社交界デビューを果たしました。
その時に王太子に一目惚れされ、一方的に言い寄られてしまいましたが、王太子の言う事を伯爵家が断る事も出来ず、あれよあれよと婚約となりました。
「シオン、君は僕に相応しくないから婚約は破棄する。ザビーネ公爵令嬢と結婚する事にしたから、側室としてなら王宮に残る事を許そう」
今まで王宮で王太子妃としての教育を受け、イヤイヤながらも頑張ってこれたのはひとえに家族のためだったのです。
言い寄ってきた相手から破棄をするというのなら、それに付き合う必要などありません。
「婚約破棄……ですか。今まで努力をしてきましたが、心変わりをされたのなら仕方がありません。私は素直に身を引こうと思います」
「「え?」」
「それではフランツ王太子、ザビーネ様、どうぞお幸せに」
晴れ晴れとした気持ちで王宮を出るシオン。
婚約だけだったため身は清いまま、しかも王宮で王太子妃の仕事を勉強したため、どこへ行っても恥ずかしくない振る舞いも出来るようになっていました。
しかし王太子と公爵令嬢は困惑していました。
能力に優れたシオンに全ての仕事を押し付けて、王太子と公爵令嬢は遊び惚けるつもりだったのですから。
その頃、婚約破棄はシオンの知らない所で大騒ぎになっていました。
優れた能力を持つシオンを、王宮ならばと諦めていた人たちがこぞって獲得に動いたのです。
召喚勇者の餌として転生させられました
猫野美羽
ファンタジー
学生時代最後のゴールデンウィークを楽しむため、伊達冬馬(21)は高校生の従弟たち三人とキャンプ場へ向かっていた。
途中の山道で唐突に眩い光に包まれ、運転していた車が制御を失い、そのまま崖の下に転落して、冬馬は死んでしまう。
だが、魂のみの存在となった冬馬は異世界に転生させられることに。
「俺が死んだのはアイツらを勇者召喚した結果の巻き添えだった?」
しかも、冬馬の死を知った従弟や従妹たちが立腹し、勇者として働くことを拒否しているらしい。
「勇者を働かせるための餌として、俺を異世界に転生させるだと? ふざけんな!」
異世界の事情を聞き出して、あまりの不穏さと不便な生活状況を知り、ごねる冬馬に異世界の創造神は様々なスキルや特典を与えてくれた。
日本と同程度は難しいが、努力すれば快適に暮らせるだけのスキルを貰う。
「召喚魔法? いや、これネット通販だろ」
発動条件の等価交換は、大森林の素材をポイントに換えて異世界から物を召喚するーーいや、だからコレはネット通販!
日本製の便利な品物を通販で購入するため、冬馬はせっせと採取や狩猟に励む。
便利な魔法やスキルを駆使して、大森林と呼ばれる魔境暮らしを送ることになった冬馬がゆるいサバイバルありのスローライフを楽しむ、異世界転生ファンタジー。
※カクヨムにも掲載中です
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】
しおじろう
SF
時は世紀末、地球は宇宙人襲来を受け
壊滅状態となった。
地球外からもたされたのは破壊のみならず、
ゾンビウイルスが蔓延した。
1人のおとぼけハク青年は、それでも
のんびり性格は変わらない、疲れようが
疲れまいがのほほん生活
いつか貴方の生きるバイブルになるかも
知れない貴重なサバイバル術!
召喚されたけど不要だと殺され、神様が転生さしてくれたのに女神様に呪われました
桜月雪兎
ファンタジー
召喚に巻き込まれてしまった沢口香織は不要な存在として殺されてしまった。
召喚された先で殺された為、元の世界にも戻れなく、さ迷う魂になってしまったのを不憫に思った神様によって召喚された世界に転生することになった。
転生するために必要な手続きをしていたら、偶然やって来て神様と楽しそうに話している香織を見て嫉妬した女神様に呪いをかけられてしまった。
それでも前向きに頑張り、楽しむ香織のお話。
せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー
ジミー凌我
ファンタジー
日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。
仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。
そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。
そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。
忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。
生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。
ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。
この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。
冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。
なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。
ダンジョンが義務教育になった世界で《クラス替え》スキルで最強パーティ作って救世主になる
真心糸
ファンタジー
【あらすじ】
2256年近未来、突如として《ダンジョン災害》と呼ばれる事件が発生した。重力を無視する鉄道〈東京スカイライン〉の全30駅にダンジョンが生成されたのだ。このダンジョン災害により、鉄道の円内にいた200万人もの人々が時空の狭間に囚われてしまう。
主人公の咲守陸人(さきもりりくと)は、ダンジョンに囚われた家族を助けるために立ち上がる。ダンジョン災害から5年後、ダンジョン攻略がすっかり義務教育となった世界で、彼は史上最年少のスキルホルダーとなった。
ダンジョンに忍び込んでいた陸人は、ユニークモンスターを撃破し、《クラス替え》というチートスキルを取得したのだ。このクラス替えスキルというのは、仲間を増やしクラスに加入させると、その好感度の数値によって自分のステータスを強化できる、というものだった。まず、幼馴染にクラスに加入してもらうと、腕力がとんでもなく上昇し、サンドバックに穴を開けるほどであった。
凄まじいスキルではあるが問題もある。好感度を見られた仲間たちは、頬を染めモジモジしてしまうのだ。しかし、恋に疎い陸人は何故恥ずかしそうにしているのか理解できないのであった。
訓練を続け、高校1年生となった陸人と仲間たちは、ついに本格的なダンジョン攻略に乗り出す。2261年、東京スカイライン全30駅のうち、踏破されたダンジョンは、たったの1駅だけであった。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
みうちゃんは今日も元気に配信中!〜ダンジョンで配信者ごっこをしてたら伝説になってた〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
過保護すぎる最強お兄ちゃんが、余命いくばくかの妹の夢を全力で応援!
妹に配信が『やらせ』だとバレないようにお兄ちゃんの暗躍が始まる!
【大丈夫、ただの幼女だよ!(APP20)】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる