とあるクラスの消失

倉箸🥢

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始まりの一言

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「あれ、6の2なんてあったっけ?」
 
きっかけはそんな一言だった。
久しぶりに会った、小学6年の時の同級生の悠真が、コーヒーのストローを回しながら言った一言だ。そりゃ十年もたって、酒を飲める歳になれば小学校の記憶など忘れるものだけど、そんなのとは明らかに違う、6の2が無かった事にされている。自分のクラスを6の4だと言い張るし、担任の名前も違う。

「いやいや、冗談やめてや、私たち6の2だったじゃない」

「えー違う違う、6の4だって、」

私はそこそこ記憶力が良い方だと思っているから、確かなはずなんだけどなぁ。不安になって、母に「私って6の2だったよね?」なんてメールを送ってみた。すぐ様既読がついて、1つ時間を置くと、返信が返ってきた。

「はぁ?」

つい、反射的に声が出てしまった。

『6の4じゃないの?』

というメッセージと共に添付された画像を開いてみると、卒業アルバムの写真が貼られていた。
6の4と書かれたその写真は、事実だと物語るようにあった。
拡大してみても、6の4と書かれているし、先生の顔写真だって、私の記憶とは違う人だ。

「…えぇ?嘘だぁ…」

「本当だって、なに、花火疲れてんのか?」

「えぇ…」

明るく笑う彼を前に、目の前のコーヒーを飲み干した。苦味が脳まで伝わって、目が覚めたような感じがする。
これは夢なんだろうか、そう思い、頬を引っ張るが、やはり痛かった。

「…疲れてるのかなぁ…あ、もうこんな時間か、原稿進めないと…また連絡するね」

「おう、俺も帰らないと、頑張れ。」

*

少し年季の入ったマンションの、204号室に私は住んでいる。鍵を開けて、
小さく「ただいま」というけれど、誰もいないから返事は帰ってこない。24歳となって、一人暮らしを始め早数年、それを気楽とも思うし、どんどん周りが結婚していって、1人を寂しく思う時もある。

「…ふぅ…独り言が多いとハゲるんだっけか」

昔聞いたことを思い出しながらパソコンに向かう。私はひっそりと月に一度ぐらいのペースで漫画を描いている。
そこそこの人に読まれているし、とても充実しているけれど、何処か二番煎じな様な気がして、どうも描く手が進まないのだ。

「…ってもなぁ…もうそろそろ最終回なるし…次は何を描こうか…」

ぐたりと宙を仰ぐ。いざ考えようとするとあんまり出てこない物だなぁ…

「あ、」

ふと、思いついた。電話帳を必死に遡って、『夏目』と書かれた電話番号をタップし、電話をかけた。数ヶ月ぶりにかけるかもしれない。

「あ、夏目先生?今会えない?」

『えっ、今?』




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